15.神と熊に噛まれる女
化け物の口の中に入れられた瞬間、私を縛り付けていた柱はまるで砂糖菓子のように簡単に噛み砕かれてしまった。
そして、私もこれは流石に防げないかと身構えたが、別にそんなことはなかった。
普通に防げたので念の為全身を硬化させておいた。
⬛︎はこの時考えていた。
(なんやこの生贄硬すぎやろ死ねや。は〜。アホくさ。帰ろ。)
黒い奴は私を吐き出すと消えた。
「消えた?」二人は意外そうに言う。
「消えたね。」私も呟く。
ゴブリンたちも唖然とする。そりゃそうだ。
だが、逆上したゴブリンたちは一斉に私たちに襲いかかってきた。彼らが召喚にどれだけの時間をかけたのかわからないが、よくわからない生贄に全て台無しにされたのだ。無理も無い。
ともかく私はすぐに立ち上がってゴブリンを迎え撃とうとしたが、私では一体止めるのが精一杯だ。
とりあえず私はゴブリンを一体組み伏せると後頭部に一撃を入れ沈める。
だが、そのほかのゴブリンたちが無防備な二人に向かっていく。このままではまずい。ゴブリンの武器を奪ってもう一体に斬りかかるが、相手の方が強く投げ飛ばされた。
その瞬間、後ろの方がなにやら騒がしくなった。一体のゴブリンが血相を変えて何やら叫ぶ。
怒り狂うゴブリンたちも血相を変えて出て行ってしまった。ついにマグネスたちが来たかとホッとする。
だが、様子がおかしい。味方が来ていたらもっと光ったり騒がしいはずだ。それなのに、ただひたすらにゴブリンたちの悲鳴だけがこだまする。万が一のことを考えて少女二人を縛るロープを切る。
「大丈夫なんですか?」二人は謎の黒い何かに咀嚼されゴブリンに刺され投げられた私がピンピンしているのを見て不思議そうに言う。
「うん。 二人は大丈夫?怪我してない?」私は少女に尋ねる。
「だから反応が薄いっ!」少女が叫ぶ。
「ともかく、私の仲間が来たからもう大丈夫。逃げる準備して。」私は二人の頭を撫でる。
「えっと…あれが仲間ですか?」少女が恐る恐る私の後ろを指差す。
「うん。棺桶持ってる変な人でしょ…って」私は後ろを振り向き固まる。
「く…熊?」私は唖然とする。
そこには返り血を浴びて不気味な赤色に染まった熊がこちらを睨んでいた。
「あれ、仲間ですか?」少女が不思議そうに尋ねる。
「あれは違う!」私は突っ込む。
小さい方の少女は悲鳴をあげながらもう一人に抱きつく。
私は一度深呼吸をする。
「熊は私が食い止める。一体ならいけるわ。二人は逃げて。」私は武器を構える。
「え?でも…見捨てるなんて。」少女は辛そうに言う。
積極的に私を囮にした人たちとは大違いだ。感動してしまった。だからこそ守りたいと思った。
「大丈夫。私熊殺しの名人だから。」てきとうなことを言う。
しばらく少女二人は困っていたが、ついに決心したのか年上の方の少女が小さい方の手を引いてクマをすり抜けて外へ逃げていった。
おそらくこの熊、ゴブリンに獲物を盗まれたことで怒りカチコミしてきたのだろう。
二人の少女は熊がゴブリンを殲滅していたおかげで安全に逃げることができた。
「さあ来い。」私は熊の注意を引くため大声で怒鳴る。熊は挑発するまでもなく私にその巨体でもって覆い被さってきた。
・・・・・・・・・
「なんか…私今日ずっと噛まれてんな。」私は熊に頭を齧られながら考えた。
「村でお風呂借りれるかな…」私は不安になってきた。




