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15.ゲーミングタンクと古代の神

「うん。出れないね。」私は脱獄を諦めた。

私をテコにして牢を破壊するということを考えたが、肝心の力点担当の女の子二人が非力すぎてどうにもならなかった。

そうやって諦めて駄弁っているとゴブリンたちが牢に入ってきて私たちを縛った。

そしてそのまま私たちは洞窟の奥へ引きずっていかれた。


そのまま私たち3人は抵抗虚しく柱に縛り付けられる。

「おーい、どうするの?火炙り?」私はゴブリンたちに問いかけるが、彼らは無視して粛々と作業を続ける。

「怖いよーおねえちゃん!」少女が後ろで泣き喚いている。

「大丈夫だから。大丈夫だから…」年上の少女は必死になだめている。彼女も相当怖いはずなのに。


そうこうしている間にゴブリンたちは何かの準備を終えたのか私たちの前にゾロゾロと集まってくる。

私たちの周りには血で何か呪文や魔法陣のようなものが描かれていた。


神官のようなゴブリンが何や叫ぶと、集まったゴブリンたちはひれ伏す。

「何?」私はゴブリンたちに問いかける。

しかし、ゴブリンたちは私たちを無視して神官に続いて一斉に呪文を唱え始める。

「やばい雰囲気ね。大丈夫?」私は二人に語りかけようとした時、強烈な寒気に襲われる。

明らかに異様な雰囲気だ。縛られていた後ろを見ることはできないが、明らかに異様な何かを感じる。

ゴブリンたちは平伏する者、感涙に咽ぶ者に別れこちらを眺めている。後ろに何かが現れたことは間違いない。だが、それを確認する術はない。 いや、ある。

一緒に縛られている二人もその異様な何かを感じているのか泣くのも忘れ震えている。

神官は私たちの後ろの何かに向けて何やら語りかけている。


私はある程度自由に動かせる脚を少し動かして硬化させる。そしてタンクスキルを発動させる。

スキルにより硬化された部分は鏡面仕上げになる。鏡面仕上げになったからなんだと言うのだと思うかもしれないが、鏡として使えるので何かと便利だ。

鏡には、何やら人型の靄がかかった何かが立っていた。靄は洞窟の暗闇よりもずっと黒く、顔や細部も全くみえない。その上、それは全く動こうとしない。

流石の私も冷や汗をかく。こんなこと経験したこともない。そう思った瞬間、私はそれと目が合った気がした。妙な感覚だ。目なんて靄に覆われていて見えないはずなのに目が合ったような気がした。それもかなり明確に。

震えている二人に何か声をかけようとするが、なんというか口を開くことを拒まれる。そのような感覚だ。


神官は嬉しそうにそれに語りかける。


これは失われた古代の言語である。訳すと「我々の前にお見えになられるとはありがたき幸せです。⬛︎様。さあ、復活の時が来ました。伝承の通り3人の弱らせた人間の娘を用意いたしました。これで傷を癒してください。」

そう。このゴブリンたちは古代の神である⬛︎の復活を成し遂げた。


・・・・・・・・・・・


ジュリーマン教授はその頃王立大学で講義をしていた。


⬛︎はかつて光の神との戦いに敗れ三つの命を失い封印された。⬛︎は地域の伝承にもよるが戦の神、災害の神、疫病の神、飢餓の神など様々な姿がある。我々は⬛︎を災害、疫病、飢餓を司る神として畏れているが、逆にゴブリンやオークといった種族には戦の神として崇拝している。

⬛︎が再び復活すれば地上は再び戦争、災害、疫病、飢餓に見舞われるとされている。


これはあくまで古代の石碑に書かれていたことであり信憑性は怪しいと言われている。しかし、最近の私の調査では、石碑の周りには家屋の基礎や焼けた木片や陶器、溶けた金属などが見つかっている。

それに、石碑から数十キロ離れた地域では火山灰の地層があり、その下からは城壁に囲まれた巨大な街の遺構が発掘されている。実際にそれが⬛︎と関係しているのかはわからないが、ともかく、同年代に起きた大災害との関係があるのかもしれない。

とまあ、それは置いておいて、次は同時期の陶器の様式についてだ。この時期から光の神の信仰が大陸中で広まり文化面でもその傾向が…


・・・・・・・・・・


後ろの何かは神官の声を聞くとぴくりと動いた。

途端に洞窟内に風が吹き荒れる。ものすごく冷たい風だ。まるで雪山のようだ。雪山行ったことないけど。

そして、私の鏡面仕上げの足に写っているそれはいきなり大きくなる。

目測で5mくらいの大きさになると、小さい方の女の子に手を伸ばし始めた。

まずい。このままでは女の子が食べられる。なんとかしなければ。牢の中で合図を送ったのでマグネスたちが向かっているはずだ。それまで時間を稼がなければいけない。

竜太郎やマグネスならこいつをどうにかできるはずだ。とにかく黒いやつの関心を私に向けさせるしかない。そのためには…


ゲーミングイリーナ発動!


突然七色に発光し始めた生贄に⬛︎もゴブリンも少女二人も困惑する。


⬛︎は興味を持ったのか私に手を伸ばし柱ごと引き抜く。


「い、イリーナさんっ!」少女二人が泣き出しそうな顔で私の名を呼ぶ。

この得体の知れない何かに掴まれればいくら私でもどうなるかわからない。だが、あの二人よりは頑丈なのでなんとかなるかもしれない。


「私ができるだけ時間を稼ぐ。生きるのよ。」私は二人にそう言い残すと口の中に放り込まれた。


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