15.やっぱゴブリンってクソだわ。
というわけで、私は一人で山に登ったわけだが…
「あ〜。山にお花を取りにきたのにお花がなくて困ったわ〜。あと道に迷って参ったわ〜。だれか助けてくれないかな〜。」わざとらしくそう言いながら山を登る。
「っていうか、出てくるならさっさと出てきて欲しいわ。山登りキッツいのよ。実際もう迷ってるしさ。」私はか弱い女性のフリも忘れてブツクサと呟く。
そんな中、近くの草むらから物音がする。ようやくお出ましかと私は内心喜びながら物音のした方を見る。
「え…熊?」私は予想外のものをみて唖然とした。
・・・・・・・・・
「遅いですねイリーナさん。」レオンが不安そうに言う。
「そろそろ合図が送られてきてもおかしくないんですけどね。」ソフィーも不思議そうに呟く。
計画では、ゴブリンと遭遇しようがしまいがソフィーの魔導具で合図を送ることになっていた。
「どうしたんだろうか。道に迷ったのか?」マグネスが腕を組んで呟く。
「変なところに落ちて出れないとか?」レオンも言う。
「だとしても合図くらいは送れますよね?」ソフィーが不満そうに言う。
「なかなか見つからなくて合わせる顔が無いから合図を送りづらいとか?」マグネスが発言する。
「お前らもう殺されてるかもとかの心配はしないんだな!まあ俺もしてないけど!」竜太郎が呆れたように言う。
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そのころ私は熊のおもちゃになっていた。熊との遭遇時、私は一目散に逃げたのだがそれがいけなかった。調子に乗った熊は余裕で私に追いつきその丸太のような足で私をぶん殴った。だが、クマは私にダメージを与えられない。そして防御力以外は平均的な一般女性ほどでしかない私も熊にダメージを与えられないし逃げられない。
この世の終わりのような泥試合になった。
熊は困惑しながらも私を攻撃し、私も熊が飽きるまでひたすら硬化して待つ。最悪だ。
しばらく熊は私を食おうと試みたものの諦めたのか私を埋めてどこかへ行ってしまった。
許されたかとホッとする。
ともかく私は土饅頭から這い出る。酷い目にあった。演技用の血糊も破れてもう血だらけみたいになって。だいぶ時間が経ってしまったので今回は一旦帰って仕切り直そう。もう全身ドロドロだ。そんなことを考えていると、複数の視線を感じた。
辺りを見て苦笑いする。すでにゴブリンたちに囲まれていたのだ。
ゴブリンたちはしばらく私を遠巻きに眺めながらヒソヒソと話し合っている。
(あれ?襲ってこない?助けてくれる?案外いいやつ?)私は考えてみる。
そうだ。ゴブリンとて知性のある生物だ。こんな熊に襲われ死にかけ(に見える)可哀想な人を攻撃するわけがないのだ。彼らもまた誇りある…そこまで考えたところでゴブリンたちは遠巻きに矢で攻撃してから複数人で近づいてきて滅多刺しにされた。
前言撤回。こいつらやっぱクソだわ。
ゴブリンたちはそのまま死んだフリをした私を引きずって行った。
程よく硬化して死後硬直の演技も完璧だ。
新コーナー・教えてイリーナ先生。
このコーナーでは見習い冒険者のイリーナ先生が冒険者やそれ以外の人からの質問や悩みに答えてくれるよ。
Q.勉強の成績が上がりません。どうすればいいですか?
A.防御力を上げましょう。 君が勉強に集中できないのはなぜか。それはズバリ勉強中に攻撃されるのを恐れているから。防御力を上げれば攻撃されても関係なく勉強を続けられます。
Q.防御力はどうすれば上がりますか?
A.今日の授業はここまで。気をつけて帰ってね。読んでくれてありがとう!




