14.免許の更新はお早めに
「受かった!受かりましたよイリーナさん!」レオンがいきなり抱きついてきたのでそのまま体勢を崩して後ろに倒れて頭を打つ。私の頭が直撃し昼寝をしていたマグネスがなぜか動かなくなったがまあ、大丈夫だろう。
「ありがとうございます!これで冒険者業を続けることができます!全部イリーナさんのおかげです本当にありがとうございます今度何か奢ります!」レオンは必死に礼をする。
「いやいや、レオン、そこまで言わなくても…どうせ私もちょっと勉強しないといけなかったからあくまでついで。別にお礼なんていらないわ。まあ、どうしてもって言うならあれだけど?」私はレオンをチラッとみる。
「僕になにかできることがあるならやりますよ?イリーナさんの更新も近いでしょ?なにかできることがあれば手伝いますよ。」レオンは嬉しそうに言う。
「そうね、上級冒険者の更新時期はそろそろだったはずだからね。まあ、また日程が分かり次第頼もうかしら。」
「日程はいつわかるんですか?」レオンが尋ねる。
「上級冒険者には通知が来るのよ。それがまだ来てないからわからないな。ギルド倒壊もあったし遅れてるのかな。」
「じゃあ、その時に何かできることがあればなんでも言ってくださいね!」レオンは自信満々に言う。だが、私は特に助けがなくても大丈夫だ。だって現役上級冒険者なのだから筆記も楽々である。まあ、簡単なことでも頼むかと考えた。
「そういえば、この過去問くれた人ってすごく強そうでしたけど、上級冒険者なんですかね?」レオンが尋ねてくる。
「アレンたちでしょ?彼らは上級も上級よ。」
「知ってるんですか?」レオンの純粋な目が心に刺さる。
「まあ、知ってるっていうか知り合いっていうか会ったことがあるというか…」私は言葉を濁す。
「そうなんですね。そういえば、そのアレンさんとその仲間の方が『更新ギリギリ間に合った〜』とか言ってたんですけど。言ってたんですけど…」レオンは私をチラッと見る。
「?」私は一瞬理解できなかった。
元仲間であるアレンたちは私と同じ上級冒険者である。そのアレンたちが更新がギリギリ?つまり…
「そういえばイリーナ。これもう捨てていいか?」マグネスが棺桶の中から紙切れを取り出す。
『冒険者免許(上級) 更新のお知らせ。 〇〇日までにお越し下さい。』
「ま、マグネス?それいつから棺桶に入ってたの?なんでそこにあるの?」私はガクガクしながらマグネスに這い寄る。
「この前エレノア嬢の誕生会に行った時酔って帰ってきてその紙を棺桶に入れていたぞ?」マグネスは冷静に答える。
「えっ…嘘…?嘘だよね?」私は声を絞り出す。
「あちゃー、もう期日過ぎてますね。」レオンは悲しそうに言う。
「…」
「イリーナさん、更新の期日超えたらどうなるんですか?」レオンが恐る恐る尋ねる。
「称号剥奪…ふりだしに戻る…」私は受け入れたくない現実を言葉にして絞り出す。
「「あぁ…」」レオンとマグネスは哀れみの声を漏らす。
次回・見習い冒険者イリーナ編開始。




