13.このギルドは私が支えています(物理)
まさか丸一日放置されるとは思わなかった。レオンすらも怪我人の手当てのため連れて行かれ私はただの柱になってしまった。
それにしても暇だ。今なら教授の長話でも喜んで聴く。マグネスの王の話でもいい。というかレオンはやく帰ってきて。
「おやおや緊急事態だと呼ばれて来てみたら人柱がいるな。」聞き覚えのある声だ。
「りゅ…留年太郎?!」
「違うわ!てか留年してねえよ!」
「何しに来たの留多浪?」
「あ〜、助けてやろうと思ったけどやーめた。」竜太郎はそっぽを向く。
「こっからどうやって助けるのよ?私の代わりにこれやってくれる?」私は竜太郎を睨む。
「その仕事は唯一無二だから無理。」
「唯一無二って言葉がここまで不愉快なのは初めて。」
「っていうか、どうやって助けるの?」私は尋ねる。
「俺の新技で更地にする。」
「ダメだからね?中にいっぱい人いるから。」
「まあ、そろそろ人が来るからそれまで惨めにつっかえ棒やってるんだな。」竜太郎は鼻で笑う。
「おぉ?お前はギルドと人命を一身に背負ったことあんのか?」
「あるよ!」
「あるのかよ!」
十数分後、ついに応援がやってきた。
「いやー、崩れてますね。」
「まあ、古いからね。」迷宮都市の偉い人たちが見物に来た。
「でも、まだ倒れてないならこのまま修繕できるんじゃないか?」
「いいや、無理でしょもうこれ直らないよ。」ごちゃごちゃと言い合っている。早く助けて!
「もう避難は済んだのかな?」偉い人が尋ねる。
「私以外は多分ね。」
「早く君も逃げないと。」偉い人が不思議そうに言う。
「いえ、私で保ってるのでこの建物。」そう言うと、偉い人は不思議そうな顔をしたがいきなり笑い出した。
「ははっ!誰かと思ったらイリーナちゃんじゃん!適役だね!」偉い人は愉快そうに私を指差す。殺すぞ。
「イリーナさん有名人なんですね。」いつの間にか戻ってきたレオンが面白そうに言う。
「そりゃあ、こんなタンク芸人が無名なわけないだろ。」竜太郎がゲス笑いで煽ってくる。
「たしかに、タンクの面目躍如だな。」ギルド崩壊の物音を聞いてみにきたマグネスも笑いを堪える。
「わ、笑ってあげないでっ!イリーナさんは過酷な支柱してるのよ?」ソフィーも笑いを堪えながら言う。
「いいの?動くわよ?」私が低い声で脅すと皆黙った。




