表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/137

11.実際トイレには暗殺者がいる可能性が高いらしい。

だが、暗殺者はもう一人いた。男の名はS。

彼は既に給仕としてホプキンス邸に潜入していた。しばらくそこで働き彼女の好みや行動パターンなどを完全に把握していた。

今日が決行の日だ。あらかじめ隠しておいた毒を自室から取り出しポケットに入れる。既に相棒が潜入しているはずだが、相棒がしくじった場合彼が毒殺するのだ。

会場は三階だ。階段で一階から登る。2階に来てさらに上に上がろうとする。だが…



「ああ、給仕殿。すまない。棺桶が引っかかってしまって。」狭い裏方用の階段では、なぜか棺桶を持った大男が困り果てていた。

(邪魔だな。無視して客用のでかい階段使いたいが目立つのも嫌だな。っていうか、こいつ来客だろ?なんでこっちの階段使ってんだ。来客用の広いの使えよ!てかなんで棺桶持ってんだよ!)

Sは苛立つ。だが、怪しまれてはいけない。

「どうされましたか?お困りですか?」Sは丁寧な口調で声をかける。

「申し訳ない。棺桶が引っかかってしまって抜けないのです。」大男が悲しそうに言う。

「でしたらあちらの階段をお使いください。」Sは来客用の大きな階段を指差す。

「おお!あれを使っていいのですか?私自身昔の癖が抜けずどうしても裏方になってしまうのです。」大男はえへへと笑う。

(知るかよ!ってか邪魔だよ!早くどけろよ。パーティー終わったらどうしてくれんだ!)Sは心の中で悪態を吐く。

「へえ、ではお手伝いいたしましょう。」Sは精一杯の笑顔でそういった。



・・・・・・・・・・・・・



数十分も棺桶と格闘した。それにあの大男、やたら棺桶を傾けるなとかうるさいせいでめちゃくちゃ作業に時間がかかった。

華やかなパーティーなのに汗だくだ。

(まったく。最悪だな。だが、毒入りドリンクは用意した。それにお嬢様の大好きなドリンクだ。よし、かなり遅れたがいけるぞ。)Sはほくそ笑む。


(っていうか、相棒はどこに?)辺りを見回す。

いた!っていうか…


・・・・・・・・・・・・・


「ナイフジャグリングすごいですね!」エレノアは感心する。

周りの人間も拍手している。


(なぁにやってんだ相棒!なにジャグリング披露してるんだよ!)Sは大声を出したいのを必死に我慢する。

(何があったかは知らないが、ここは俺がやるしかない。)

Sはドリンクを乗せた盆を持ってエレノアに近づく。ちょうどドリンクを飲み終えた瞬間を狙う。

「お下げいたしますね。」Sは丁寧にそう言って有無を言わさずドリンクを交換する。

食器は下げるもの勝ちだ。

「どうも。」エレノアはにこやかにドリンクを手に取る。


リーチだ。Sはにやりとする。あとはそのドリンクに口をつければ暗殺は完了だ。あとはずらかる準備をしつつエレノアがドリンクに口をつけるのを見届けるだけでいい。





だが、彼女は全くドリンクに口をつけない。10分は経過した。一口くらい飲んでもいいと思うが。Sは苛立っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・



時は30分前に遡る。



「いいですか?エレノアさん。僕の言うことを守ってくださいね?」レオンがエレノアの目を見て言う。

エレノアは無言で大きくうんうんと頷く。

「まず、人の目の多いところにいてください。人目につけば暗殺もされにくいです。それに、僕は腐っても中級冒険者なので、暗殺者を足止めするくらいはできます。」レオンが真面目に説明する。

エレノアはうんうんと頷く。

「あと、飲み物は飲み過ぎないでくださいね。トイレとかに行きたくなったらそこまでは護衛の人は入れません。トイレに暗殺者が潜んでることは多いですからね?」レオンの説明にエレノアは頷く。

「確かに、そんな話をお父様からも聞きました。」エレノアは納得する。

「だから、その二点を気をつけてください。」レオンは笑顔で頷いた。



エレノアはレオンのことが気になっている。優しくて強くて頼りになる。おまけに顔もかっこいい。彼が私のことをどう思っているのかは知らないが、エレノアはレオンの目をまともに直視することができないのだ。なんとなく照れ臭い。そんなレオンの前でお手洗いに行くなんて思春期真っ盛りのエレノアには土台無理な話であった。

そこでエレノアは決めた。

今日は何も飲まない。と。




知らない芸人さんのナイフジャグリングが終わる。

「すごいです!」エレノアは彼に惜しみなく賞賛の言葉を送る。

「喜んでいただけたのであれば嬉しいです。依頼主にも喜ばれることでしょう。」芸人は嬉しそうに言う。

「あら、今日のためにあなたを派遣してくれた方がいるの?嬉しいです。」エレノアはニコリとする。

話していると、芸人の額から血が垂れてきた。

「大丈夫ですか?血が。」エレノアは心配そうに芸人に声をかける。

「ええ、大丈夫…です…」芸人はフラフラしながら答える。ジャグリングはプロ意識とナイフを持った時の仕事モードへの切り替えで乗り切ったが、ナイフをしまった彼はただの酔っ払いであった。

「大丈夫ですか?なんかフラフラして顔色も悪いですし!」エレノアは焦る。

「は、はぁ…大丈夫…で…す…」芸人は辛そうにテーブルに身体を預ける。


「ちょっと、すごく体調が悪そうですよ?あっ、これまだ飲んでないので飲んでいいですよ?私は医者を呼んできます!」エレノアは持っていたドリンクを芸人に渡す。



ノンアルコールの水分が欲しかったNはすぐにドリンクを飲み干した。

少し落ち着く。アルコールも少し分解されたのか思考がクリアになってくる。なにか思い出しそうに…

なんだか胃がムカムカする。喉も痛い。頭も痛くなって意識も…意識…が…



「いやあああ!芸人さんが泡を吹いて!誰か!」エレノアは半狂乱になりながら叫ぶ。

参加者は狼狽える。レオンは遠くから毒針などを撃ち込まれた可能性を考え周囲を警戒する。



「おいおい、何やってんだよ相棒!」Sは泡を吹く相棒に駆け寄り解毒剤を注射した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ