11.殺害予告はマジで捕まるのでやめよう。
「本日は私の誕生会にお越しいただきありがとうございました。」エレノアは大人びた挨拶をする。
父親と思わしき男も挨拶して演奏が始まる。上流階級の参加者たちは互いに談笑している。
イリーナは当然料理を盛って食べている。イリーナだから仕方ない。
レオンはその姿を見て考え込んでいた。
さっきからイリーナさんが酒を飲んでいない。未成年談義をした後突然飲まなくなった。やっぱり未成年だからなのか。それとも料理に集中しているのか。レオンは首を考え込むしかなかった。
「ちょっと風になってくるわ。」イリーナはそう言って料理を持って外に出る。
「風になる?風に当たるじゃなくてですか?っていうかなんで料理持ってるんですか?風に当たりながら料理持って来て食べるのはどうかと思いますよ!」
レオンの声を背中に受けながらイリーナは外に出た。
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「マグネス。食べる?」私は外で寂しそうにしているマグネスに彼の好きそうな料理を盛ったお盆をわたす。
「どうして料理を?」マグネスは不思議そうに言う。
「いや、マグネスを外に放り出したこと忘れてたからお詫びに。」
「ええ…」マグネスは困惑する。
「本当ごめん。後で呼びに行こうと思ってたんだけどお酒飲んだらすっかり忘れちゃって。」
「お、おう。」マグネスは頷く。やはりお酒は怖いと思ったマグネスであった。
「だが、こうして私は外で食べるのが好きだ。戦士だったからな。こっちの方が慣れている。」マグネスは料理を食べながら懐かしそうに語る。
「かつてこうやって戦友たちと外で飯を食ったものだ。戦場の飯は不味かったがな。」マグネスは遠い目で語る。
「ええ、そう…ちょっと待って。なんか気持ちわ…」吐いた。飲みすぎた。
「飯食ってる横で吐かないでくれないか。」マグネスは困っていた。
「うっ、ごめん。」
「戦場でもこう言う奴がいた。」マグネスはまた懐かしそうな顔をする。
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「あら、レオンさん、楽しんでます?」エレノアが一人でいるレオンに声をかける。
二人は一通り雑談する。
「そういえば、イリーナさんはどこいったんですか?話しながら待ってたんですが。」エレノアは尋ねる。
「風になりましたよ。」
「風に!うそっ!誕生会で死人とか洒落にならないですよ!」エレノアは焦る。
「大丈夫ですよ。多分飲みすぎたから風に当たってるだけだと思いますよ。」
「なんだ。よかった。」エレノアはホッとする。
「…」
「…」
「エレノアさん、大丈夫ですか?」レオンは何かを感じ取る。
「え?大丈夫ですよ。どうしたんですか?」エレノアは無理に笑おうとする。
「何もないならいいですが、なんか様子が変だなと思って。」レオンは心配そうに言う。
「いいえ。大丈夫。大丈夫ですから。」エレノアは首を振る。
「もし何かあるなら。僕じゃなくてもイリーナさんにでも相談してください。今、イリーナさんは頼りになるかわからないですけど。」
「でも…」エレノアは俯く。
「今日はエレノアさんの誕生日ですからね。ちょっとくらいの我儘は許されるはずですよ。」レオンは笑顔で言う。
エレノアはハッとする。
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「えっ?殺害予告?」レオンが驚く。
「声が大きいです!はい、殺害予告が来てるんです。」エレノアは俯きながら言う。
「誰から?どんな内容ですか?」レオンは詰め寄る。
「誰からかは分かりません。ただ、誕生会を中止しなければ殺すという手紙が机の上に置いてありました。」エレノアは言う。
「警備は厳重なの?」レオンは尋ねる。
「いいえ、いろいろな方が来るのでその人たちの気分を害してはいけないと思い。」エレノアは首を横に振る。
「ダメだよ!何かあったら気分を害すどころの話じゃない。」レオンは言い聞かせる。
「そうだけど…」エレノアは今にも泣き出しそうな顔をする。
「ともかく、なんとかなるまでこの部屋を出ないで。あ〜もう、こんな時に二人は何してるんだ。」レオンは少々苛立ちながら辺りを見回した。




