11.大丈夫。肝臓も硬化できるわ。
そのまま私たちは会場に通される。
赤い絨毯の敷かれた広い部屋にいくつもの丸テーブルが並んでいる。立食パーティー形式だ。
すでに身なりの良い人々が楽しそうにおしゃべりしていた。
「うわぁ。みんなすごい気品が良いですね。見た目だけ取り繕った僕たち浮いてないですかね?」レオンは不安そうに言う。
「浮いてるも何も、本日の主役に招待されたんだから問題ないでしょ。」私はどこからともなく持ってきたワインを飲みながら素っ気なく答える。甘酸っぱさのなかにほろ苦さが顔をだす。おいしい。
「メンタル強くてうらやましいですよ。」レオンはため息をつく。
「頑丈なメンタルは頑丈な肉体に宿るのよ。」私は二杯目のワインを飲みながら答える。
「そうなんですかね。でも場違いですよね。」レオンはジャケットの襟やシワを確認しながら言う。
「なーにが場違いよ!私たちは友人として来てるのよ。あの老人なんか絶対エレノアの友人じゃないでしょ。権力とお家の都合よ。あっちの方が場違いだわ。」三杯目は蜂蜜酒だ。甘くて美味しい。
「ちょっと!まだ始まってないのに飲み過ぎですよ!」レオンが四杯目のグラスを私から奪い取る。
「だーいじょうぶよ。私は肝臓も動脈も硬化できるからさ。」
「それダメなんですよ!」
そんな話をしているとエレノアがこちらに来る。
「二人とも楽しんでますか?」エレノアは尋ねる。
「はい。ご飯も美味しいですし最高です。僕は17歳なのでお酒はコンプラ的にダメなんですけど、十分楽しんでますよ。」
「そういえば、イリーナさんはお酒飲んで大丈夫なんですか?」レオンは不思議そうに尋ねる。
「…」
「二十歳超えてますよね?」レオンは不安そうに尋ねる。
「……」
「えっと、イリーナさんってレオンさんより年上でしょ?」エレノアはレオンを見る。
「いや、冒険者としては先輩ですけど年齢は知らないです。ほら、女性に年齢を聞くのはアレですし。」レオンは気まずそうだ。
「そうなんですか?イリーナさんはいくつなんですか?私は今日で16ですよ。」エレノアは笑顔で尋ねる。
「…忘れた。」
「「え?」」レオンとエレノアは私を凝視する。
「ははっ、お酒飲んだら年齢忘れちゃった…」
「イリーナさん。本当コンプラ違反だけはやめてくださいね?」レオンは不安そうに言った。
「まあ、二人とも楽しんでね。二十歳超えてるならじゃんじゃん飲んでね!」エレノアは苦笑いしながら言う。
「じゃあ、私は用があるからこれで。」エレノアがどこかへ行こうとする。
その時私は彼女の異変に気づいた。
「待って!」私は彼女を呼び止める。
「?」エレノアは振り返る。
「エレノア、あなた様子が変。」私はそう言って彼女に顔を近づける。
「エレノア、あなた酒臭いよ?」
「酒臭いのはあんただ!」レオンに突っ込まれる。
「あ、そうか。」私は納得する。
「もう、しっかりしてくださいよ。」レオンは呆れる。
「うふふ。すっかり出来上がってますね。じゃあ楽しんでね。」エレノアはくすくすと笑いながら去っていった。
「イリーナさん、問題だけは起こさないでくださいよほんと。」レオンが諭すように言い聞かせてくる。
レオンもマグネスもアレだから僕がしっかりしないと!レオンは意気込んでいた。




