10.転生ギフト持ち勇者も殴れば死ぬ。
ボコッ!ドゴッ!と音がする。
「ずびばぜん…ずびばぜん…」竜太郎はぐったりしながらうわごとのように謝罪する。
「降参?」私は硬化させた拳を振り上げながら尋ねる。
「降参です…」竜太郎は言い終わると力が抜けたようにだらりとする。
あれから彼も頑張ったのだが、何しろあちらの攻撃は全く通じない上に、私の攻撃はちゃんとダメージが通る。
彼が聖剣と呼ぶものも刃こぼれして剣を握る力も使い果たす。私は攻撃を受け続けながらも休憩できるが、私は性格が悪いので休憩中も容赦無く殴りに行った。
彼の取り巻きの行動もマグネスが牽制して抑えていた結果、竜太郎は一方的に殴られる痛さと怖さを教えられるハメになった。
「流石イリーナさんだ!なんともないですね!」攻撃を弾きつつダンジョンの角に追い詰めて急所を殴っている最中レオンが感心しながら言っていた。
「まあいいわ。わかったならさっさと顔を冷やしながら帰りなさい。私はそう言って後ろを向く。
「お前ら!何やってる!なんとかし…」私が隙を見せたので彼は取り巻きに私を攻撃させようとした。しかし、その光景を見て愕然とする。
6人いた仲間は1人しか残っていなかった。
「なん…で?」竜太郎はボコボコに腫れた顔で愕然とする。
「あなたのお友達ならみんなどっか行ったわよ。」私が説明してあげる。
それを聞いた彼は呆然とする。
「そんな…」竜太郎は俯く。
「言ったでしょ?ハーレムパーティーは崩壊しやすいって。あなた一人の力に縋っているパーティーなら尚更よ。」
それを聞いた竜太郎は自嘲気味に笑い出す。
「?」私は首を傾げる。
「そうだよな。みんな俺が強いからついて来てたんだもんな。俺が負けたら誰も俺のことなんか…いらないよな。結局こうなんだ。俺はどこでもこうなんだ。どれだけ強い力を授けられても結局最後はこうなんだ。笑えるよな。」彼は笑いながら寝そべる。
俺はどこでもこうなんだ。どれだけ強い力を授けられても結局最後はこうなる。彼の言葉の意味は正直わからない。ここに来るまでに何かがあったのか。辛い別れや自分が必要とされない辛い経験をしたのか。それは私にもわからない。
美女を引き連れてハーレムを築いたのも、私たちに死体をどかすよう上から目線の生意気な態度を取ったのも全ては過去の心の傷や孔を埋めるための演技だったのか。
私はさっきまでボコボコにしていた男のことが途端にわからなくなった。でも…
「それはないわ。」私は優しく語りかける。
「ないって?」竜太郎は潤んだ目からなんとか涙が溢れないようにしながら尋ねる。
「だって…私は彼の後ろを指差す。」
「さあ、リュウ。行きましょう。」一人残った彼の仲間。おそらく魔術師だろう。彼女が竜太郎に手を差し伸べる。
「ソフィー?」竜太郎は意外そうに呟く。
「そうですよ。殴られすぎて記憶が飛んでないか心配でしたが大丈夫そうですね。」ソフィーと呼ばれた魔術師はニコリとする。
「なんで…残ってるんだ?」竜太郎は不思議そうに尋ねる。
「なんでって、そりゃ仲間だからでしょ。」ソフィーは言わせんなと言いたげな顔で言う。
「仲…間…」竜太郎はその言葉を反芻する。
「確かに、他の仲間はみんな行っちゃいました。でも、最近強くなって調子に乗ってたリュウも悪いんですからね。だからこっぴどくやられるんですよ!」
「確かに…俺は天狗になってたかもしれない。」竜太郎は乾いた笑い声を出す。
「それに、私は昔の謙虚なリュウが好きですよ?」ソフィーは花のような笑顔で笑う。
「そうか…そうか。ありがとう。」竜太郎は初めて愉快そうに笑う。それはソフィーにとっても久しぶりに見た心からの笑いだった。
「浪多浪。あなたは何も失ってなんかないわ。こうしていい仲間がいるじゃない。どんな醜態を見せてもどれだけ変わっても変わらず側にいてくれて、悪いところは悪いと言ってくれる最高の仲間が。」
「そうだな。仲間はかなり減ったが。それでも俺は大事なものは何も失っちゃいないな。」竜太郎は吹っ切れたように笑う。
「それに、言ったでしょ。バランスのいいパーティーは長続きするって。」
私の言葉を聞いた二人は恥ずかしそうに微笑んだ。
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「今日はご迷惑かけてすいません。」ソフィーが私たちに謝罪しに来る。
「いいのよ。私無傷だから。」私は上品に笑う。竜太郎がイラッとした顔を見せたが気のせいだろう。
ソフィーは私の耳元に寄って小声で言う。
「あと、最近リュウはマジで調子乗って結構目に余るところがあったので矯正していただいてありがとうございましたいい薬になったと思います。私も最近のリュウの態度の悪さはちょっとな〜と思ってたのでああやって元に戻してくれて本当にありがとうございました。あとこれお礼です。美味しいものでも食べてください。」ソフィーは早口で囁くと私のポケットに金貨5枚を押し込んでフラフラの竜太郎に肩を貸してダンジョンの上に続く階段を登って行った。
しばらくするとソフィーが早足で戻ってくる。
「あの…上に強そうなモンスターいっぱいいたんで、その…一緒に上まで…いいですか?」ソフィーはモジモジしながら言う。
「仕方ないなぁ。」私はフフッと笑った。




