10.俺には47個の必殺技がある。
「そうか。戦いか。」マグネスは前に出ようとする。
「待って。」私は彼を止める。
「?」
「私がやる。」
「あっ、そう。じゃあ任せる。」マグネスは軽い返事で引き下がる。
「レオン、剣貸して。」私はレオンから剣を受け取る。
「おいおい、女に戦いを任せて恥ずかしくないのか?」竜太郎はマグネスを指差す。
「ダッサ。」後ろの女たちもくすくすと笑う。
「いや、俺の役目は墓守だから。」 タバコ?吸わないですよ。くらいの言い方でマグネスは私の後ろに隠れる。
「そっちの弱そうな男!お前も情けなくないのか?」竜太郎はレオンを指差す。
「情けないです。僕も早く竜太郎さんみたいに強くなりたいです!」レオンは曇りなきまなこで言う。
「調子狂うからやめろ〜。」竜太郎は目をそらす。
「弱そうだからって侮られてる?言っとくけど、私負けたことないから。」私は目を細めて言う。
「まあいい。」竜太郎はそう言うと消える。
「消えた?」私は目を丸くする。
次の瞬間、剣が私の首筋に当てられていた。
全く動きが見えなかった。
「速さはすごいけど、速さだけ重視して剣撃が届かないのは良くないよ。一ミリ届いてないね。もうちょっと…」
「うるせぇ!手加減してやったんだろうが!」竜太郎は唾を飛ばしながら言う。
「あっ、そっか。」
「そっかじゃね…うおっ!」竜太郎が私の不意打ちの剣撃をかわす。
「チッ。」私は不意打ち失敗に思わず舌打ちする。
「こっすいなお前!」竜太郎は激怒する。
「いいさ。もう手加減はしない。ぶっ殺してやる。」竜太郎は剣を構え魔力を放出する。
「急いでるんでしょ?さっさとやりなさいよ。」私も剣を構える。
竜太郎がまた消える。消えたと認識した瞬間に腹に剣が突き立てられる。
防御力が高いだけで衝撃を吸収できるわけではないので後ろに吹っ飛ばされる。
また消える。私の勘では後ろに回り込むはずだ。身を捩って後ろに剣を振り下ろす。
ビンゴ!剣を振り下ろした先に相手が現れるが、簡単に剣を弾かれる。
剣は私のクソ雑魚握力を振り切ってどこかへ飛んでいく。
「いや!丸腰!」私が言うのと同時に再び腹に剣を突き立てられる。
「良い防具を着てるみたいだな。」竜太郎は愉快そうに笑う。
「いいでしょ。あげないわよ。」私も対抗して笑う。
「いらねえよ。それにしても弱いな。話にならん。」竜太郎は哀れそうに言う。
「でもその弱い私に傷一つつけれてないよね?」煽ると相手はこちらを睨む。
「うるせえ!」竜太郎は一気に距離を詰める。
一息で3回叩き込まれる。私でなければ即死だろう。まあ、痛くも痒くもないが。
とはいえ、防御力以外は一般女性水準の私にとって彼の猛攻から抜け出すことは不可能に近かった。ひたすら全身をぶん殴られながら次の手を考える。
(なんて言おう。敗因はお前のスタミナだ!とか?違うな。もっとこう…煽れないかな。)
「ふふふ、さすがだ。30層のボスを倒すだけあってなかなかやるな。」竜太郎は攻撃しつつ話しかけてくる。
何か言い返してやろうと思った瞬間いいかんじに剣が口の中に飛び込んできたので豚のような声を出してしまい恥ずかしさのあまり赤面しながら辺りを見回す。
これ喋らない方がいいわね。と思う。
「ずいぶん頑丈みたいだな。」竜太郎は感心する。
「ずいぶん?」
「ずいぶんで済むかな?」レオンとマグネスが後ろで首を傾げる。
「お前は今まで戦ってきた敵の中でもトップクラスに強いな。だが…」竜太郎は剣を構える。
「いいさ。本気を出そう。お前は今から繰り出す47の技に耐えられるかな?」彼は続ける。
「47の…技?」私は少し緊張する。
「来たわ。」
「あの女も終わりね。」彼の仲間たちも勝ち誇ったような顔をする。
「くらえ!第一の技!」竜太郎は剣を振り上げると高く跳躍する。
何がくる?私は息を呑む。




