10.ハーレムパーティーは崩壊しやすい。
ダンジョン30層
「ダンジョンボス出現!」私はレオンに伝達する。
「了解!」
「私が引きつける!その間にレオンとマグネスが背後から…」言いかけたところでダンジョンボスは真っ二つにされ倒れる。
「背後から…やってくれたみたいね。」後ろで突っ立っているマグネスを見ながら言う。
「先走ってすまない。」マグネスは謝罪する。
「いいのよ。」
「倒せましたね。今日はこの素材とって帰りますか?」レオンがボスの高価な部位をナイフで切り始める。
「あらら〜もう倒しちゃったか。」後ろから男の声が聞こえる。
後ろを振り向くが誰もいない。
「そこじゃないよ。」前から嘲笑うような声が聞こえる。
いつの間にか前に誰かがいる。全く動きを捉えられなかった。
「いつの間に?」私は尋ねる。
「別に普通に移動しただけなんだけどな。そうだ。自己紹介がまだだったね。俺は京極竜太郎。よろしくね。」男はにこやかに自己紹介した。
「早速で悪いが、早くこの邪魔な雑魚の死体を退けてくれないかな?」竜太郎は嫌味ったらしくダンジョンボスの死体を指差す。
「なんて?高卒中退浪?」イリーナが聞き返す。
「なんだその聞き間違い!悪意ありすぎだろ!」
「なんか聞き慣れない名前だったから。」
「それにしても悪意がありすぎる!」
「違いますよイリーナさん。高卒留多浪さんですよ。」レオンが訂正できていないが訂正する。
「そうか、間違えてごめんなさい幼卒二留浪さん。」
「京極ってこっちの世界の人は言いづらいのかな???それに俺は高校生だからまだ中卒だし留年も浪人もしてない!それに俺はホイ卒だ!」
「何言ってんのこの人?」
「うーん、わからないです。」レオンと私はヒソヒソ話す。
「殺すぞ!!!」
「おい、そこのちょっとだけリスニング力の高い男。」竜太郎はレオンに声をかける。
「なんですか?」
「この死体、早くどけてくれないか?」竜太郎はレオンを睨みながら言う。
「いや、避けて通れよ龍谷三浪。」
「ますます酷くなってるじゃねえか!」竜太郎は叫ぶ。
「こっちを通れば先に進めるぞ。三流。」マグネスが空いている道を指差す。
「もうシンプルに悪口になってるじゃねえか!」竜太郎は一呼吸おく。
「さっさとその死体をどけろ。俺たちは今日70層まで行くんだ。こんなところで足止めを喰らっている場合ではない。」竜太郎は嫌味ったらしく言う。
「今日は70層って、もしかして、あなたは二日で60層到達の?」レオンが驚いたように指をさす。
「ああ。よくわかったな。高いのはリスニング力だけじゃないみたいだな。」竜太郎はニヤリと笑う。
「何言ってるかよくわからないですけど、会えて嬉しいです!サインしてください!」レオンが手帳にサインを求める。
「なんなんだお前ら…っていうか、サイン貰いたいなら名前間違えんなよ。」竜太郎はぶつぶつ言いながらもまんざらでもなさそうだ。
「サイン書いてやったんだからその死体どけろよ。」竜太郎は顎で指図する。
「いや、避けて通れよ。急いでるんでしょ?」私もダンジョンボスの死体のわきを指差す。
「はぁ。聞き分けがないな。お前ら。来い。」竜太郎は後ろに声をかける。
すると、後ろから女性6人がゾロゾロと出てきた。竜太郎一人に女性メンバー6人。典型的なハーレムパーティーだ。
「これが俺のパーティーだ。こんな大所帯でそんな狭い道通れないだろ?さっさと道をあ・け・ろ。」ドヤ顔で指図する。
「ワイドショーかな?」
「朝のワイドショーですね。終わり側に出演ドラマの宣伝してそう。」
「歌番組の司会席。」
竜太郎一行そっちのけでヒソヒソやっている3人に竜太郎はキレる。
「人のパーティーにケチつけてんじゃねえ!さっさと道を開けろ!それとも、やっちまうか?」竜太郎は一番弱そうな小柄な女を睨む。
「ハーレムパーティーってほんとすぐに崩壊するから気をつけてね。」私は真顔で注意喚起する。
「今そんな話してないだろ!」
「本当だよ?特に実力のある男に大勢くっついてるパターンは本当に崩壊が多いよ。男の目につかないところで女同士の軋轢が強まってて、ある日突然崩壊するの。それもボスの前とかで。
逆に強い女に男が大勢くっついてるオタサーパーティーも本当すぐ崩壊するよ。もちろんボス戦中にね。」私は哀れみの目で解説する。
「だから今そんな…」
「これ本当だよ。本当に本当。やっぱり男女比が極端に悪いとパーティー運営の難易度って一気に上がるの。あなたがリーダーならちゃんと一人一人メンタルケアに気を遣って、定期的に一人一人と向き合う時間を作った方がいいよ?」
「別に関係ね…」
「そうですよね。全員男、全員女のパーティーはギスギスしながらでもなんだかんだ仲良いですし、バランスの良い男女混合はメンバーの入れ替わりはあれど崩壊なんだかんだ長持ちしますよね。ハーレム、逆ハーレムパーティーがあんまりいないのはやっぱりそういうことなんですかね。」
「そうそう。バランスは大事なのよ。同性の仲間ってやっぱり必要なのよ。」
「じゃ、じゃあ僕が女装しましょうか?」レオンが心配そうに言う。
「三段跳び論法やめて。」
「なら私が。」マグネスが長い髪をおさげのように掴んで言う。
「いきなりキャラ変はこわいっ!」
「聞け!!!!」竜太郎が叫ぶ。同時に威嚇のためか魔力も放たれる。
「人のこと無視しやがって。許さねえぞ。」竜太郎はピクピクと怒りを露わにする。
そして、漏出する魔力も凄まじい。圧倒される。
「す、すごいわね。」膨大な魔力の奔流に髪がなびく。
「これが二日で60層まで到達した男の実力?」レオンは思わずたじろぐ。
「この鱗って全部持って帰るのか?」ダンジョンボスから剥いだ鱗をみてマグネスも動揺する。
「おい!そこのでかいの!何粛々と素材回収してるんだ!」竜太郎はマグネスを指差す。
「早くどかせと言ったのはお前ではなかったのか?」マグネスはポカーンとする。
「リュウタロウ、そのうざい奴らやちゃってよ。」彼の仲間の女が不機嫌そうに言う。
「わかった。殺しはしない。ちょっと痛い目に遭ってもらおうか。」竜太郎はニヤリと笑った。




