10.転生勇者なんているはずないでしょ。非科学的だわ。
「イリーナさん、これすごいですよ。」レオンはそう言って迷宮都市通信を見せる。
「なになに?ふむふむ。『冒険者になって二日で50層のボスを討伐』ね。」私は感心しながら記事を持つ。
「すごいですよね。俗に言う天才ってやつですよね。羨ましいです。」レオンはため息をつく。
「それに対して僕は…」レオンは悲しそうに俯く。
「まあまあ、レオンだって私を武器にできれば強いじゃない。」レオンを慰めるが私は悲しくなる。
「でも、冒険者になるからには僕もこれくらい強くなってみたいですよね。」レオンは無念そうだ。
「そうかもしれないけど、流石に50層まで準備期間二日で行くのは自殺行為にも程があると思うけどな。」私は考える。
「準備が必要ないほど強かったってことじゃないですか?」レオンは少し卑屈になっている。
「そうかもしれないけど…」
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目が醒めると俺は何もない空間にいた。困っていると、目の前に美しい女性が現れた。
「ここはどこだ!お前は誰だ!」俺は尋ねる。
「ここは死後の世界です。あと、私は女神です。」
「死後の世界って、俺は死んだのか?なんで女神がここに?」俺は焦る。
「申し訳ありません。こちらの手違いであなたを死なせてしまいました。」女性は頭を下げる。
思い出してきた。
俺の名前は京極竜太郎。高校生だ。
ある日俺は買い物からの帰りに突然トラックに轢かれて死んだ。
軽トラだった。
「どう責任とってくれるんだ!」俺は女神に詰め寄る。
「はい。今からあなたを生き返らせます。」女神は言う。
「なんだ。生き返れるのか。」俺はホッとする。
「ただし、元々の肉体の方は損傷が激しく復活は無理です。ですので、異世界に転生させます。」
「え?異世界?元には戻れないの?」俺は絶望する。
「申し訳ありません。ですので何か一つ特殊能力を持たせて転生させます。」女神は俺の目を覗き見る。
「特殊能力?」俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
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「天才冒険者か。確かに私も興味がある。」マグネスは食いつく。
「ですよね!会ってみたいと思いませんか?」レオンは嬉しそうに言う。
「ああ。できれば手合わせしてみたいものだ。」マグネスも嬉しそうに言う。
「ですよねですよね!」レオンも飛び跳ねる。
これだから男どもは。
私はそんなものに興味はない。だいたい天才と会ったからといって何になるのか。天才が移るわけでもないし、マウントを取られて嫌な思いをするのが関の山だ。
他人の才能に嫉妬することより無駄なことなど…
「じゃあ、久々にダンジョンに潜りましょうか!」
そう。他人の才能に嫉妬するなど極めて非生産的で全くもって無駄な行為であり…
「イリーナさんも潜りますよね。」
「あ〜、うん。」適当に返事をする。今私が読者に対し他人の才能に嫉妬することは時間の無駄であると言っているのにいきなり話しかけられるのは…って、ダンジョン?
「やった!今から行きましょう!」マグネスとレオンはノリノリで私の手を引いていった。
「そ、そうだね。」一度行くと言ってしまった都合上いまさらどうしようもない。
人の才能に嫉妬とかどうでもいい。人の話はちゃんと聞こう。お姉さんとのお約束だよ!




