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8.身の潔白と三人目の犠牲者

「ちょっと!いい加減にしてください!黙って聞いていれば!」レオンが大声を出す。

そうだレオン、助けて。

「イリーナさんは優しい人です。決して人を殺したり…(笑いながら盗賊の拠点を破壊する場面を回想)しない、はずです。」

最後なんでちょっと逃げたの?言い切ってよ!


「マグネス?」私は涙目でマグネスを見つめる。

「いや、悪いが仲間になって日が浅い故その辺の人となりはよくわからぬ。力になれずすまぬ。」

うーん、相変わらずの真面目さ、剛直さ。


「大丈夫です。時間をかけてでも疑いを晴らすので!」レオンがガッツポーズをする。時間をかけないで。


あっ、そうだ。私は思い出す。

「そうだ、キャロル?私事件が起こった時間温泉にいたよね?」私は温泉で一緒になった女性に詰め寄る。

キャロルは少し困惑したが、縦に首を振ってくれた。

「はい。確かに温泉にいました。黙っていてすいません。」キャロルは申し訳なさそうに言う。

「ほら、やっぱり私無実だから。」私は一方的に勝利宣言をする。


「ああ、そういえば、温泉で寝てたのこの人ですね。友達と寝てる人がいるって笑ってたんですが、そういえばこの人でした。」若い女性二人組が思い出したように言う。

「ああ、ドヤ顔をみて一致しました。そういえば、ずっと浸かってましたよね。」男性が私を見ながら言う。

「なんで、知ってるんですか?」その場にいる女性全員がその男を睨む。

「あっ、いや…」墓穴を掘ったバカは焦る。


「ミスター・ノゾーク、あとで事務所までお越しください。」支配人は裏がありそうな笑顔で言った。

ミスター・ノゾーク。アリバイを証明してくれてありがとう。それはそれとして早く事務所まで行け。


「ということで私の疑いは晴れたってことでいい?」私は周囲を見渡す。

皆特に何も言わないので疑いは晴れたと考えていいだろう。


「じゃあ、身の潔白を証明したのでお手洗い行ってきていいですか?いや、別にすごく行きたいわけじゃないんだけどこの話長くなりそうだから…




なんとか間に合った。久々に辛勝という感覚を味わった。

もう私は無敵になったので皆が集まる部屋に戻ろうとする。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


殺人鬼は手斧を握って次のターゲットに狙いを定める。トイレから出てきた無防備な女だ。全く警戒していない。

殺人鬼は斧を振りかぶって彼女の頭をかち割る。

斧が深くまで食い込んだ感覚がある。だが、よく見ると握っていたはずの手斧がない。折れた木の柄だけしかない。

「え?」殺人鬼は困惑する。

ターゲットは頭を気にしながら振り向く。目が合ってしまった。


「キャロル?」私は後ろから頭を叩いてきた人間を見て驚く。

キャロルは動揺している。

「こんなところで一人いたら危ないよ?」私は心配する。

「あ、大丈夫、私もお手洗い行きたいなと思って。」キャロルは右手に持った何かを自分の後ろに隠して言う。

「そうなんだ。じゃあ、ここで待っとくね。」私は善意100%で言う。

「え?」彼女は困惑する。

「そりゃあこんなところ危ないからね。誰か来ないか見張っててあげる。」

「でも危ないよ?早く戻らなきゃ。」キャロルは不安そうに言う。

「大丈夫大丈夫。こう見えて私迷宮都市で上級冒険者やってるから腕っぷしにはそこそこ自信あるんだ。」私はシャドーボクシングをする。

「でも…」

「それに、私の(社会的)命の恩人を危険に晒すわけにはいかない。あなたが助け舟を出してくれなければ今頃私は…死のうにも死ねないから…」

「そ、そうなんですね。」じゃあ、待っててください。キャロルは震え声で言うとトイレに入った。


「まずいまずい。」殺人鬼は頭を抱える。なんか見張られている。それも斧で頭をかち割ろうとしたら斧の方が折れる女に。

どうすればいいのか考える。このまま自分が殺人鬼であることがバレてしまう。しかもバレたとして彼女を消すことはできない。

かくなる上は逃げるしか…

ドンドンとドアが叩かれる。

「大丈夫?生きてる?」まずい。いないフリをしてみる。助けを呼びに行った隙に逃げるのだ。

「え?いる?大丈夫?」心配そうな声が聞こえる。

「まさか!」ドンドンと扉が叩かれる。

早く助けを呼びに行け。その間に。

「こじ開けるね!」力強い声が聞こえる。

「え?」思わず声を出した瞬間、拳がドアを突き破って出てきた。

「きゃあ!」殺人鬼は思わず声を出す。

「なんだ。いたのか。返事してよね。」イリーナは安心する。

「ああ、ごめんね。」殺人鬼は苦笑いする。

「じゃあ、終わったなら戻ろうか。」イリーナは笑顔で言う。

「ああ、うん。」殺人鬼は観念した。


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