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7.私がいると周りに不幸が…あなたは大丈夫みたいですね。

 集合場所に行くと明らかに高そうな馬車が停まっている。

「いい馬車ね。やっぱりお金持ちは違うわ。」私はそう言って馬車を撫でる。

「お前は誰だ?」用心棒のような男が睨んでくる。

「ごめんなさい。案内の依頼を受けて来たんだけど?」私は依頼用紙を見せる。

「そうですか。失礼しました。」用心棒は頭を下げると馬車の扉を叩く。

「お嬢様。お時間です。」用心棒が扉を開けると中から可憐な少女が出てくる。


「おお!」私は思わず声を漏らす。

「お人形さんみたい。」レオンも驚く。

「レオンはお人形振り回してるからね。」

「?」レオンは心が綺麗なので皮肉がわからない。


少女は私たちを見回すとペコリと頭を下げて自己紹介をした。

「エレノア・ホプキンスです。よろしくお願いします。」少女は丁寧に言う。

「丁寧ね。育ちの良さが滲み出てる。」私はレオンに囁く。

「イリーナさんとは大違いですね。」

「あぁ?」


・・・・・・・・・・・


私たちも自己紹介をした後お嬢様を連れて街を回ることにした。

「どこから来たの?」

「西の王国からです。」

「名家なの?」

「一応男爵家です。私が勝ち取った地位じゃないですけどね。」

「いくつ?」

「16です。」

「かわいいね。」

「あ、ありがとうございます。」


「今日はなんでここに来たんですか?」レオンも尋ねる。

「お兄様から話を聞いて私も来てみたいなと思ったんです。」エレノアは答える。

「お兄様がここの統治に関わってたらしくて、面白いところだって言ってたのです。」エレノアはニコリとする。

「あの、ここで言うことじゃないけど多分お兄さん嘘ついてるよ。」私はそっと耳打ちする。

「え?どうしてですか?」

「西の王国はここの統治に関わってないのよ。」

「ええ…」エレノアは困惑する。

「お、お兄様も妹の前で格好つけたい年頃なんですよ!ね?」レオンが私に同意を求めるが、ね?と言われても困る。

「お兄様…」エレノアは俯く。

「でも、迷宮都市は良いところですよ!そこはお兄さんは嘘は言ってない。ね、イリーナさん!」レオンは余計なこと言うんじゃねえと言いたげに私の肩を掴む。

「ええ、そうよ。お兄様もここに来たんでしょうね。ここは良いところよ。」私もフォローする。

「そ、そうなんですね。」エレノアは動揺している。

「と、とにかく見て周りましょう!いいですね?」レオンは私の手を引く。


「あと、お二人に言っておきたいことがあるんです。」エレノアは申し訳なさそうに言う。

「何?」レオンが彼女の顔を覗き込む。

「私、不幸体質なんです。だからみなさんに迷惑をかけるかも。」エレノアは俯く。

「16まで生きれてるならそんなことないでしょ。」

私の素っ気ない反応にエレノアは少し驚いた顔をする。

「私がじゃなくて、周りの人を不幸な目に合わせてしまうんです。」

「もしそうなら男爵家にはなれないわよ。」

「お母様も早くに亡くなったんです。」

「それは気の毒だけどあなたに限ったことじゃない。不幸体質なんてことはないわ。」

「そう言っていただけると嬉しいです。でも本当なんです。気をつけてください。」エレノアは悲しそうに言う。

もしかして本当なの?と思った。


「あ、しまった!手が滑って槍が!」突如上の建物から冒険者の男の声が聞こえた。

上を振り向くと上から槍が降ってきていた。

「え?」私が間抜けな声を出すと同時に槍に私の眼球が突き刺さった。

「あーびっくりした。」私は穂先が欠けた槍を持ち上げて呟く。

「だ、大丈夫ですか?」レオンは心配そうに声をかける。

私にではなくエレノアにだが。

まあ、何かあっても私のことを心配しないのはそれだけ強い信頼の証とも言えるのだが。

前のパーティーもこんなかんじだったのでむしろ心配されるとむず痒くなるだけだし。と強がってみる。


「ほら、言ったじゃないですか!私は不幸体質だって。」エレノアは涙目になる。

「え?」

「だってイリーナさん!目が!」

「大丈夫だけど?」私は無事な眼球を見せる。

「なんで!」エレノアは露骨にドン引く。


「なんで?」エレノアはレオンに尋ねる。

「僕もわかんないです。なんででしょうね。」レオンはにこにこしながら答える。

「え?なんで目に槍が刺さって無事なの?そもそも槍に眼球が突き刺さったって何?教育を受けた人間の文章じゃない!」エレノアはうろたえる。

「言ったでしょ?私は大丈夫。あなたは不幸体質なんかじゃない。胸張って生きなさい。」私はエレノアの目を見る。

「で、でもあの冒険者さんは槍を壊しちゃったので不幸体質かもしれないです。」後に退けないエレノアはとんでもない詭弁を繰り出す。

「ご、強引ね。」私は土下座する冒険者に槍を返しながら苦笑いした。

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