34.タンク役がいないとやっぱりきついね。
竜太郎とレオンがソフィーの魔術で支援されながら一気に距離を詰める。魔王の動きを制限したところでマグネスが魔王殺しの剣で魔王の心臓を狙う。当然マグネスを警戒していた魔王はマグネスの腕を掴み刺突をすんでのところで止める。そしてマグネスを掴む手を攻撃しようと振り上げた竜太郎の腹をもう片方の手で貫く。
「りゅ…」一瞬ソフィーからの支援が途切れる。
「かまうな!」竜太郎は苦しそうに吐血しながら叫ぶ。
マグネスは動きを封じられ竜太郎は重症だ。
「だが、これでいい。」竜太郎はニヤリと笑う。
魔王はハッとする。
「お前は、俺とマグネスさえ倒せば俺たちに勝てると思ってる。だから見てなかったよな?一番弱い奴を!」
竜太郎の言葉に魔王は自身の過ちに気付いたがそれはもう後の祭りであった。
魔王の背中に何かが食い込む。
「やっと見てくれましたね。」魔王の背中に何かを突き立てたレオンは不敵に笑う。
「虫が!」魔王はそう吐き捨てると魔力の塊をぶつけレオンを吹き飛ばす。
流石に遊んでいる余裕は無くなってきた。この身体では本来の能力を活かす事はできない。一度逃げて体勢を立て直すべきだ。そう考えた時魔王は背後に光の柱が立ち上る。
魔王は振り返り顔を顰めた。
すぐに空間から姿を消す魔術を使おうとするが術式が発動できない。この背中に刺さったものが術式を乱している。背中に刺されたものが何かはわからないがそんな事は今どうでもいい。これでは攻撃をかわせない。
「これで決める!一極集中蟻地獄天空楼オーバーロード・ヘルスカイツリー!!!!」
竜太郎は天まで届く光の柱と化した剣を大きく振りかぶる。
一極集中蟻地獄天空楼は竜太郎の最大火力の必殺技。日本中の資源や人材を一方的に吸い取り消費し拡大し続ける東京の如く。自身や周囲の魔力、重力、位置エネルギー、生体エネルギー。あらゆるエネルギーを一極に集中し放つ奥義。
「地下で…寝とけぇ!」そう言うと同時に光の柱を振り下ろす。
膨大な熱量が地面を抉り取る。
魔王恐ろしい光の柱が迫り来る中立ち尽くした。
これが直撃すれば自身は容易く蒸発する。それはわかっている。だが、この身体の運動能力ではこれを避けることができない。
「くそっ。」
魔王は光に飲まれた。
やったか?
「だからそれやめろ!」突然竜太郎に怒られたマグネスはキョトンとする。
「いや、あれに当たったら流石に死ぬだろう?当たるところ確かに見たし。」マグネスは不服そうに反論する。
「やめろ!やったか?とか言うとこの煙の奥から立ったままの人影がだな…」
「みんな、なんか解決したような顔してるけど、イリーナさんはもういいの?」ソフィーの言葉に一同は凍りつく。
「だああああ!忘れてた!手加減してなかった!やべえ!」竜太郎は頭を抱える。
「あっ…」レオンは握っていた剣をポロリと落とした。
「いや、その心配は…なさそうだ。」マグネスは徐々に晴れてくる煙の先を眺める。
「まじかよ。腹に穴空いてるからもう撃てないぞ。」竜太郎は肩を落とす。
レオンは徐々に晴れる煙の中にポツンと人影が現れるのが見えた。
あの色は、あの姿は。あぁ… レオンは大きく息を吐いた。
竜太郎は震える声で呟く。
「硬化で今のを凌ぎやがった!」