32.ボロクソ言ってるけど本当に仲間か?
「どういうことだ?」マグネスが魔王に乗っ取られたイリーナを睨んだ。
「そんなのアリかよ!」竜太郎が顔を引き攣らせる。
「まあ、そのへんは魔王だし。」
「納得するな!」竜太郎はマグネスに怒鳴る。
「でも、一番まずいのが乗っ取られたね。レオンさんくらいならまだよかったのに。」
「それどう言う意味ですか?!」レオンは失言をしたソフィーを威嚇する。
「どうした?お友達を乗っ取られたのがそんなにショックか?」魔王が嘲笑うように言う。
「いいや。」マグネスが笑いながら魔王を見た。
魔王は不思議そうな顔をする。
「掘り起こす手間が省けたよ。感謝する。」マグネスがそう言って剣を抜く。
「ああ、合法的にイリーナを殴る口実ができたよ。ありがとうなロン毛!」竜太郎もそう言って剣を抜いた。
「ふん、強がりを。」魔王は愉快そうに肩を振るわせる。
魔王が次の言葉を発そうとした瞬間、視界の外から飛ぶ斬撃が魔王の髪を掠めた。
レオンからの先制攻撃である。
すぐにマグネスと竜太郎に視界を戻した魔王だったが、すでに二人はいなかった。すぐに探そうと周囲を見渡すが、その必要はなかった。二人はすでに目の前にいた。
二人の重い剣撃が魔王を襲う。鈍い音が出て魔王は地面に落ちる。
同時に魔王の落下予測地点にソフィーの魔術の範囲攻撃が行われる。
「これで倒せるとは思ってないけどね。ほら…」土煙の奥から魔王が出てきたのを見てソフィーが苦笑いする。
すぐに両端からマグネスと竜太郎が斬りかかる。刃が通ることはないが、魔王は確実に体勢を崩しつつある。
「でも妙ね。避けないなんて。」ソフィーがレオンに話しかける。
レオンは首を横に振った。
「避けないんじゃないですよ。避けられないんです。あれはイリーナさんの身体ですからね。」
「それって身体がついていけてないってこと?」ソフィーが怪訝な顔で呟くとレオンは穏やかに頷いた。
「イリーナさんは運動神経皆無ですよ。」レオンはニッコリとした。
マグネスと竜太郎の猛攻を受けた魔王はついに体勢を崩し転倒した。
すぐに息の合ったコンビネーションで追撃が行われる。だが、その追撃が魔王に届く前に二人は何かを喰らい吹き飛ばされた。
「なんだ?」竜太郎は攻撃された脇腹を抑えた。
魔王は両手から魔力を放出し始めた。
「やっぱ魔王だし使うよな、魔術。」竜太郎はため息をつく。
「やっぱりそうだ。前よりも出力が低い。」ソフィーはそんな魔王を見てキュッと杖を握る。
「乗っ取ったはいいけど身体能力も魔術も全体的に低スペだから魔王もそれに引きづられてるんだ!今の魔王なら私でも戦える!」ソフィーは覚悟を決め立ち上がる。
「みんな、私ちゃんとサポートするから!もう、怖くないから!」ソフィーはそう言って杖を振りかざした。
「イリーナさん後で知ったら拗ねそう。」レオンはそう思ったのだった。