29.囲んで叩け
「ならば死ね!」魔王は邪悪な魔力を纏う。
「豹変した。」私は驚く。
「かつて人類を恐怖のどん底に陥れた私の力、思い知るがい…うわっ!」魔王は咄嗟に死角から飛んできたレオンの斬撃をかわす。
「人が話している時に…」言いかけた魔王の脚に、マグネスが棺桶から取り出した鎖が絡みつく。
「よし、崩した!囲んで叩くわよ!」サポートのソフィー以外の四人が一斉に襲いかかる。
「おい待て!お前ら!」魔王が叫ぶと同時にソフィーの魔術による雷撃で魔王の動きが止まる。同時に四方向から一斉攻撃が行われた。
だが、彼らの攻撃は空を切るのみであった。
「避けられたのか?」竜太郎は面食らった。
「そんな遅い攻撃が当たるわけないだろう。例えば君はカタツムリの…」
「必殺技No.4、斬丹歩スラッシュ!」竜太郎が畳み掛ける。
「バカめ、そっちには味方がいるぞ。」魔王はバカを見る目で竜太郎を見る。
だが、彼は攻撃を止めるそぶりを見せない。
「おや、普通に巻き込むのか。」魔王は予想していなかったのか回避が遅れ肩に攻撃がかする。
魔王は肩の傷を抑える。
「私に傷を負わすとは貴様ら、遊んでいられる相手ではなさそうだ。」魔王はそう言って次の行動に移ろうとする。だが、うまく動けないことに気付く。
「これは?!」魔王は自分の脚が掴まれていることに気づいたのだ。
「みんな!今よ!」私は魔王の脚を掴んで硬化する。
レオンたちは大きく頷くと各自が自身の最高火力技を繰り出す。
「いくぞ必殺!一極集中蟻地獄天空楼オーバーロード・ヘルスカイツリー!!!!」竜太郎が剣を大きく振りかぶる。
「これは我が王の時代、攻城戦兵器として門を破壊するための武器なんだが…」マグネスが大きな筒を構える。
「マグネスさん!説明ならあとでゆっくり聞きますから!」レオンがマグネスの肩を揺する。
「強化は任せて!」ソフィーが巨大な魔法陣を展開する。
「あっ、これ死ぬ。」そう溢した魔王に強化された二人の最高火力技と申し訳程度のレオンの飛ぶ斬撃が直撃した。
「やったか?」マグネスは魔王の方を見ながら言う。
「やったかって言うな!」竜太郎は怒鳴る。
「全く、殺意が高いな人間。」魔王が煙の奥から歩いてくる。
「やれていない?」マグネスは息を飲む。
「お前のせいだからな!」竜太郎は嫌味を言う。
「イリーナさんの拘束を解くなんて。」レオンは驚く。
「消えた…」私は全身の硬化を解きながら呆然とする。
拘束だけは自信があったのだが、逃げられた上に仲間からの集中砲火を受けたのだ。完全に私が損をしただけである。
「拘束からの集中砲火は使えない。他の手を考えないとね。」私はすぐにレオンたちの元へ戻る。
「どうすればいい。」竜太郎が悔しそうに言う。
しばらく皆で沈黙する。しかし突然レオンが手を叩く。
「僕に考えがあります!」レオンは自身ありげにそう言った。