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4.この人質(防御力9999)がどうなってもいいのか?

 「いいね。釣れた。」

「下級冒険者はすぐこういうのに引っかかるからな。カモだカモ。」

「まずはあっちの女の方だ。男の方は手強そうなのがいる。」

「なんで棺桶なんか持ってんだ?」

「知らねえよ。荷物とか入れてんじゃね?」

「荷物って棺桶に入れるか?」

「知らねえって言ってるだろ!」

「お前ら喧嘩すんな。」

「いいか?そっと忍び寄るぞ?」

「了解。」

7人の盗賊が地面に掘って草を被せてカモフラージュした穴からカモを見る。

「よし、行くぞ!」盗賊たちは音を立てずに女に近寄る。


この後、悪質な嘘依頼詐欺による新たな犠牲者が生まれてしまったのだった。





 私が薬草をとっているといきなり後ろから引っ張られる。味方に知らせようとしたがその前に口を塞がれた。複数人の男に取り押さえられた。私は防御力は高いがそれ以外は並の水準しかないので複数人の男に取り押さえられると何もできない。

あの時と同じだ。だが、今回は少し違う。


「この薬草か?」

「そう。それです。やっとわかってくれた…」

「これは何に効くんだ?」

「これを潰して乾燥させれば止血に使えるんですよ。僕も何度もこれに命を救われたんです。」

「ほう。そうなのか。」

「あ〜、だから食べないで!害はないですけど苦いですよ!」

二人が薬草をとっているとマグネスがぴくりとする。

「誰か来るぞ。7人、いや、8人だ。」

レオンはキョロキョロする。


「よぉ!そこの二人。探してるのはこいつかい?」声が聞こえて二人は振り向く。

7人の盗賊がイリーナを人質にとってニヤニヤとこっちを見ている。

「イリーナさん!」レオンが動こうとするのをマグネスが制止する。

「だめだレオン。下手に動けば喉笛を裂かれるぞ。」何も知らないマグネスはレオンを諭した。

「それはないと思います。」

「?」マグネスは不思議そうな顔をする。



「何喋ってやがる?この女の命が惜しければ持ってる金全部出しやがれ!」盗賊は怒鳴る。

イリーナは遠い目をしている。多分他のことを考えている。

「わかった。金を払えば解放してくれるのだな?」マグネスは盗賊に問いかける。

「ああ。そうだ。さっさと金を出せ。盗賊が頷く。

「よし。これならどうだ?高価な宝石がついた指輪だ。命がかかっているなら我が王も許してくれよう。」マグネスはそう言って棺桶から大粒の宝石がついた指輪を取り出す。よく分からないがそうとう豪華なものだろう。

「これでなんとか。」マグネスは指輪を差し出す。精一杯の譲歩を示したマグネスの手を盗賊は蹴り飛ばす。指輪は地面に落ちる。

「それだけで足りると思ってんのか?本当にこの女殺すぞ?」盗賊は凄む。マグネスは表情を変えず黙っていた。

「全部出せって言ったろ?その棺桶ごと渡せ。」盗賊の言葉にマグネスは眉を少し動かす。

「早くしろ!」盗賊が怒鳴る。


「それは…できない。」マグネスは呟く。

「は?」盗賊が睨む。

「この柩を貴様らに渡すことはできない。申し訳ない。」マグネスは俯く。

「はぁ?何言ってんだ?」盗賊は露骨に機嫌が悪そうな顔をする。

「おい、お前金持ってんのか?」盗賊は露骨に焦っているレオンに質問する。

「今はこれしか…」レオンはポケットから銅貨3枚を取り出す。


「ナメてんのかお前ら!!!!」盗賊は銅貨3枚に対し顔を歪めて激昂する。

「はい決定!この女を殺す!」盗賊はイリーナの首にナイフを軽く当てる。

「こいつの頸動脈を切ってやる!血が吹き出してこいつは死ぬ!」盗賊はナイフを当てたまま俺たちを恫喝する。

「盗賊のくせに頸動脈知ってるんだ…」レオンは盗賊に聞こえないようにぼそっと呟く。

「てめえ!俺らのこと馬鹿にしてんの聞こえてるからな?殺してやる!殺してやるぞ!」そう言って盗賊は彼女の首をナイフで掻っ切る。

「あれ?切れてない。」もう一度切る。

「くそ!こんな時に!お前ナイフ貸せ!」盗賊は切れないナイフを地面に叩きつけると仲間のナイフでもう一度首を切る。

「クソ!切れねえ!なんでだ?」盗賊は焦り始める。


「ねえ、いつ首を切ってくれるの?待ってるんだけど?」私も少し煽ってみる。

「くそ!刃こぼれしてやがる!」盗賊は絶望する。

「なんか分からんが逃げるぞ!」盗賊たちはそのまま人質を投げ捨てると逃げ出した。

「あ!こら待て!」私は盗賊たちの背中に向けて怒鳴る。


「伏せろイリーナ。」マグネスはいつの間にか金ピカの剣を取り出して横に振りかぶる。

「殺さないでくださいね!」レオンが注意するとマグネスは力強く頷く。

「わかった。命までは奪わん。」そう言うと剣が光だす。

そのまま剣を横凪に振ると、斬撃が伏せたイリーナの頭上を飛び越え盗賊たちを吹き飛ばした。

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