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番外編1-4.vs過去

そしてついに私は魔物に囲まれる。鎧を破壊するには十分な数だ。私が袋叩きにあい鎧が壊れたところでアレンが私ごと敵を一掃する。そう言う作戦だ。

私は四方八方から迫り来る魔物の中心で硬化する。

「さあ、早く私を解放して!」私は魔物に身を委ねる。全身が触手に包まれ鎧から嫌な音が響く。

この調子だ。このまま胴の辺りを破断させてくれれば全てが丸く収まるのだ。

そしてついに鎧がベコッという音を立てて割れた。

私の勝ちだと安堵したのも束の間、私はあることに気づく。

そう。そこそこ分厚かった鎧がかなり薄くなっているのだ。それに、なぜか服の袖や裾がボロボロになっている。私は高い防御力に慢心してあまり使っていない頭をフル回転させる。そして私は一つの結論に辿り着いた。

そう。この魔物たちは鎧や服を溶かしているのだ。

厳密には人の体も溶かすのかもしれないが、私は溶けないので大した問題ではない。だが、溶解液を出しているとすれば厄介だ。そう。早く抜け出さないと脱げてはいけないものまで脱げてしまうのだ。

私は急いでアレンに合図を送ることにする。そして声を出そうと口を開けた瞬間、口に触手が捩じ込まれた。声を出せなくなり身動きもできない。

「終わった。」私は心の中で静かに呟いた。


「合図まだかな。」何も知らないアレンはイリーナの防御力を信頼しているためのんびり座って待っていた。




鎧は脱げた。脱げたが、服も溶かされている。このまま魔物を一掃されてしまえば服を溶かされた変質者だけが残ってしまう。なんとかこの状況を切り抜けるためにアイデアが必要だ。幸い時間はある。大量の魔物に纏わり付かれる感覚がインスピレーションを産んだりするかもしれない。



「合図遅いな。まあ、あいつなら大丈夫だろうけど。いや待てよ。三日会わざれば刮目して見よと言う。もしかしたらあの防御力を失っている可能性が…それに、あの魔物が防御無視の攻撃をしていたら?こうしてはいられない!」アレンは最悪のシナリオを思い浮かべる。

「魔物はまた出てくる。今は安全のためだ。救出を前倒しで行う!」そう言って彼は剣を構え魔力を込める。

魔力を込めた剣がカタカタと震えだす。この剣はダンジョン60層のボスの血中の鉄分から作った剣だ。普通の鉄と比べて魔力との親和性が非常に高い。

そして、魔力を一定以上込めた時、その刃は魔力と同化する。


つまり、魔力に満ちたダンジョンの空間そのものが彼の刃になる。

「今助ける!」彼は力強く呟くと剣を横に薙ぐ同時に彼が剣を振った延長線上にいた魔物が一斉に消し飛ぶ。


「大丈夫か!」アレンは叫ぶ。

土煙の中からイリーナのシルエットが現れる。鎧のシルエットではなくなったので鎧は脱げたのだろう。だが妙だ。なんだかシルエットが細すぎるように思える。

「イリ…」言いかけたところで土煙が晴れて現れた彼女の姿を見て目を丸くする。

「おまえ…タコになったのか?!」アレンは全身にタコ脚を纏った彼女の姿を見て驚く。


「あっ…いやあ、私タコになっちゃった!」イリーナはビターオクトパスの死体で身体を隠しながらそっと出口まで移動する。

「どういうことだ?鎧は大丈夫か?」アレンは困惑する。

「ありがとう!今度お礼するから!うっひょ〜今夜はたこ焼きだ!うわ、苦い!」私はタコ脚を齧りながら早口で言い捨てるとタコを被って自分でも信じられない速さでその場を後にした。何も齧る必要はなかったかもしれない。


「おい!イリーナ!待て!」アレンは呼び止めるがすでに彼女は出口へ走っていってしまった。


「はぁ…なんだったんだ全く。素っ気ないな。でもまあ、あんな別れ方したから仕方ないかな。」アレンは自嘲気味言う。

「さあ、俺も帰って…」彼はそう言って歩き出したが、ビターオクトパスの肉片で滑って転んでしまった。

「おっと、カッコつかないな。」アレンはそう言って起きあがろうとするが、腕にタコの吸盤がひっついて離れない。

「ああくそ…なんて匂いだ。」アレンはそう言うと落ち着いてタコの足を剥がす。

そうしているうちに周りに気配を感じた。ハッとして辺りを見回すと、彼はビターオクトパスに包囲されていた。

「まずいな。」アレンは静かに呟いた。





「おっ、いたいた。」マグネスが路地裏でタコの足を被って震えていた私を発見した。

彼は私の情けない姿を一瞥すると、黙って棺桶を漁る。

「別に詮索はしないさ。ともかくこれを着るんだ。」マグネスはそう言ってマントを私に渡す。

私は涙が出そうになりながらマントを被る。

やはりマントが臭かった。本当に涙が出た。

臭いが目に染みただけだ。


数日後


「イリーナさん、聞いてくださいよ。僕の友達がね。」レオンが話し始める。

「友達が聞いた話なんですけど、この前ダンジョンから裸の男女が出てきたらしいんですよね。」レオンが面白そうに言う。

「へっ、へえ。そうなんだ。」私は目を逸らす。

「個人の趣味に口は出したくないですけど、ダンジョンなんて危険なところでそういうことするのはやめてほしいですよね全く。」レオンは呆れたように言う。

「全くその通りだね!」私も激しく同意する。本当にあれで最後にしたい。


「さて、そろそろ時間ね。」私は立ち上がる。

「どこ行くんですか?」レオンが尋ねる。

「ちょっと友達と会ってくるだけ。今度は普通に会いに行くから。」私は笑いながら言う。

「前は普通じゃない会い方したんですか?」レオンが不思議そうに言う。

「レオンも友達には普通に会いに行くのよ。」私はそう言って外へ出た。

レオンは不思議そうに首を傾げていた。



呪いの鎧編・完


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