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番外編1-3.vs上級冒険者

「なに?四層にそんな化け物が?」

「ああ。我々では手も足も出なかった。上級冒険者の助力がいる。」ねっとりした喋り方の魔術師がなにやら人を集めて説明している。

「なるほど。四層にそれほどの魔物がいるとは。今日はオフのつもりだったが我々が出るしかなさそうだ。」

「そいつの大きさは?攻撃力や攻撃パターン、あと魔力はどんなものだった?」メガネの冒険者が詰め寄る。

「魔力の方は普通だ。それほど脅威ではない。攻撃パターンもわからない。だが、こちらの攻撃が効いている感じがなかった。特殊な障壁を張っていると考えるのが自然だろう。」魔術師が答える。

「ふん、すぐに諦めて戻ってきたのか。腰抜けめ。」大柄な男が魔術師を煽る。

「私は貴様のようなバトルジャンキーではないんだ。戦略的撤退と言ってもらおう。」魔術師は冷淡に言う。

「だがまあ、この上級混成パーティーの敵じゃないだろ。ゴブリンナイトとやらもおいたが過ぎたようだな。」生意気そうな若者が笑いながら言う。

「油断をするな。お前みたいな奴から隙をつかれて死んでいくんだ。」ベテラン冒険者が諭す。

「四層の雑魚にやられるかよ!」若者はバツが悪そうに言い返す。

「だが、これほどの事態となると、お前のところのタンクも連れて行くべきだろう?アレン。」魔術師が後ろで腕を組んでいる剣士に言う。

アレンと呼ばれた剣士はしばらく沈黙する。

「イリーナならもういない。あいつはたしかに硬いが、あんまり役に立たない。」アレンは冷たく言い放つ。

「そうなの?」向かいに座る女性冒険者が意外そうに言う。

「そうだ。」アレンは頷く。

「ともかくブリーフィングはこれで終わりだ。志願者は手をあげてくれ。」魔術師はそう言って参加者を見据えた。




「暇だなぁ…」私はいいかんじの大きさの瓦礫に座っていた。

そんな中、私はダンジョンの入り口からわずかな魔力のゆらぎを感じた。

来た。上級パーティーが。私は息を呑んだ。それにこの気配は…


「あれがゴブリンナイト。たしかに異様だな。」聞き覚えのある声だ。上級冒険者5人と、その後ろにいるのはそう。元パーティーメンバーだ。

「さあ、手始めに…」元パーティーメンバーのアレンが動き出したのを知らない上級冒険者が制止する。

「待て。あの程度俺で十分だ。」生意気そうな若い冒険者がそう言った。


「ほう?まあいい。行けばいいさ。」魔術師は素っ気なく答える。


「なあ、ゴブリンナイト。お前らもだ。この世で最強の職業は何か知ってるか?」男は不敵に笑う。


「剣士?魔術師?違うね。拳法家さ!」男は渾身のキメ顔をする。

「剣士は剣がなきゃただの役立たず。魔術師も魔力と杖がなきゃただの役立たずだ。だがな、拳法家はその身一つで戦える。どこでもどんな状況でもだ。」男は腰を落とし半身になり構えの姿勢をとる。

「天崩流師範代。上級冒険者ニール、参る!」男はそう言って飛びかかってきた。


・・・・・・・・・


「よくもニールを…」魔術師が顔をしかめる。


「…」私はゴブリンナイトなので喋らない。だが、よくもと言われてもこいつが勝手に私の鎧の無い部分を殴って手の骨が飛び出しただけである。原因は私にあるが私の責任とは言えないのではないか。そう釈然としない気持ちを抑えつつ私はなんとも無いぜという振る舞いをする。


「流石の防御力だ。やはりお前はここにいていい存在ではない。ここで殺そう。」元リーダーのアレンは冷たくそう言うと剣を抜いた。

これには流石の私にも緊張が走る。なにしろ、私が彼と戦うのは初めてのことだ。彼の実力は神からのインチキギフトを得た竜太郎にも匹敵するものだ。

実際のところどの程度の力があるのかは私にもわからない。いや、そういえば前に巻き添え喰らったな。そう考えたと同時に一気にアレンは距離を詰めた。

反応する間もなく私の首筋に冷たい刃が触れるのがわかった。


「流石。硬いな。」アレンは少し感心したように言う。

「…」私はゴブリンナイトなので喋らない。


「待てよ…」アレンは少し考える。

「…」私はゴブリンナイトだ。


「お前…イリーナだろ?何してんの?」

「っ…」ゴブリンナイトも声くらいは出すだろう。


「絶対そうだ。斬った感覚で分かったって。」

「チガウ…ワタシ…ゴブリンナイト。」

「裏声下手か。絶対イリーナだよ。ニールの指を賭けてもいい。」アレンはそう言う。

もし私が硬いだけの別人だったらニールの拳法家としてのキャリアは断たれてしまうのである。おいたわしやニール。


「いや、何してんの?」

「いや、ゴブリンなんですけどこの鎧脱げなくなっちゃって。」

「ゴブリンなんだろ?いきなり流暢に喋るなよ。」

「ヌゲナイ…ヨロイ…オモイ…」

「もう遅いわ!」



「おーい、アレンどうした?」他の仲間が後ろから声をかける。


「あ〜。倒した。討伐完了。あっはっは!バンザーイ!」アレンは震える声でそう言って仲間を帰らせた。


「と、とにかく鎧はなんとかしてやる。待ってろ。」アレンは困惑しながらも手を貸してくれることになった。



・・・・・・


「なんか拍子抜けだったな。」

「大したことなかったな。」

「なんであいつだけ残るんだ?」

「さあ、野暮用らしいけど。」緊急招集された面々は駄弁りながら帰って行った。



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