番外編1-2.vs中級冒険者
「あぁん?四層に強いのがいる?」彼は中級冒険者でも上位の剣士だ。
「四層だろ?しれてるよ。」中級上位の盗賊が言う。
「肩慣らしにちょうどいいかもね。」中級上位の拳法家が拳をポキポキと鳴らす。
「サポートくらいはしてやる。分け前はもらうぞ。」ねっとりした喋り方の魔術師が少し離れたところから話に乗る。
こうして四層に現れた謎の魔物討伐のための中級混成パーティーが結成されたのだった。
「ほお、あれが例の魔物か。」剣士が呟く。
「小さいな。片手で捻り潰せる。」拳法家が鼻を鳴らす。
「俺が撹乱する。その間に二人が攻撃しろ。」盗賊が黒いマフラーで口元を隠しながら言う。
「盗賊のくせに指揮を取るな。私がサポート兼司令塔になる。」ねっとりした喋り方の魔術師が言う。
「なんだと?」盗賊が魔術師に突っかかる。
「喧嘩はよせ!指揮をするなら魔術師、お前が火蓋を切れ。」剣士がゴブリンナイトを見据えながら言う。
「言われなくてもな。」魔術師が杖で地面を2回叩く。
・・・・・・・
いきなり私の周りに煙幕が展開される。
真正面の煙幕の中から一人の冒険者が現れる。軽装で身軽な動き。おそらく盗賊あたりだろう。
「ボルトダガー!」盗賊は素早く私の真上を取ると私を囲むように6本のダガーを投げる。
私には当たらなかったが、次の瞬間ダガーを起点に高圧の電流が私に流れる。
私はいきなり光ったのでびっくりして動きを止める。
そして矢継ぎ早に左側から大男が現れる。おそらく拳法家だろう。
「良い陽動だ。奥義!晴嵐時雨乱れ打ち!」1秒の間に30発の打撃が叩き込まれる。
なんだその技名。どこの奥義だと思ったのだが、今の私はゴブリンナイトなので突っ込まない。
5秒ほど打撃を受ける。流石に鎧の方も凹んでいる。それに、それだけ打撃をくらえば流石の私もよろけて動きが止まる。
だが、鎧は凹んだだけであまり損傷はしていない。おそらくあの攻撃は軟目標には効果を発揮するが、硬目標への効果はいまいちなのだろう。だが、これでは鎧を壊せない。
そう思った矢先、後ろからとんでもない圧を感じる。
「いいぞ拳法家。このチャンスは逃さん。くらえ!迅雷一閃!!!」稲妻の如き速さの刺突が打ち込まれる。なかなかの威力だ。瞬間火力だけならば竜太郎の必殺技のどれかに匹敵するレベルだ。※イリーナさんは動体視力が終わっているので一定以上の速さの違いはわかりません。
だが残念だ。急所を捉えた良い攻撃ではあったが、いかんせん攻撃が入ったところは鎧に空いている大きな穴だった。これでは鎧は壊れない。
「どうだ剣士?」魔術師が尋ねる。
「ダメだ。全く刃が通らねえ。」剣士が息を切らせながら言う。
「ああ。俺の奥義も体勢を崩しただけで効いていなかった。」拳法家も悔しそうに言う。
「撤退すべきだ。反撃される前にな。」盗賊が冷静に言う。
「だから、盗賊が仕切るな。だが私も撤退すべきだと考える。こちらでバフをかけても結果は変わらんだろう。」魔術師も同意する
「ああ。一度撤退しよう。だが、四層にこんな化け物を放っておくわけにはいかない。上級冒険者を頼ろう。」剣士が頷く。
「私は上級なのだが?」魔術師が不服そうに呟く。
「え?」
「まじ?」
「うそ?」三人は意外な発言に固まる。
「上級が無理って言うなら無理だな!」拳法家はそう言って一目散に逃げ出す。そのまま残りの三人も後に続いて去って行ってしまった。
「あの、鎧壊して…」私は弱々しく四人を呼び止めようとしたがもう遅かった。
私はため息をつくとその場にへたり込んだ。また上級パーティーが来るまでここで待機である。