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番外編1-1.呪いの鎧

ところ変わって数週間前の迷宮都市


「眠い。」私はつぶやく。とはいえ特に反応してくれる人もいなかったのでため息をつく。

レオンは同期の冒険者に会いに行っているし、マグネスもいつものようにどこかを徘徊している。

というわけで私は一人で茶を啜っているわけだ。

一人でダンジョンに潜っても大した成果は得られないし、竜太郎とソフィーに泣きつくのも癪だ。

そうだ。前のパーティーがどうしているか後でもつけてやろうと私は思った。

タンク要員が抜けたことにより困っていたりしたらこの粗茶も美味くなるというものだ。私は茶を飲み干すと早速行動を起こすことにした。


すぐに近くのジャンク装備店で変装用の防具を買うことにする。幸い小柄な人用の全身を隠せる鎧があった。しかもお値段銀貨50枚!

これならば身体のラインも隠せるしどこからどう見ても小柄な鎧を着た誰かである。おそらく鎧の形状的にタンク専用のものだろう。素早い移動などは考慮されておらず防御力に重点を置いている。また、丸みを帯びた設計になっており、相手の攻撃を滑らせて防ぐための工夫がなされている。だが、気がかりなことにその鎧の胴の部分には腹から背中にかけて貫通したような大穴が空いている。

おそらく前の持ち主は…いや、運が良ければ重症だ。

安い理由もこの穴だろう。それとこの小ささだ。こんな小さいタンク用の鎧の需要なんてあるわけない。ともかく腹に大穴が空いていようが素の防御力が高い私にとっては関係のない、むしろ軽量な分メリットでもある。私は鎧と安いボロボロのマントを購入するとすぐにその場で装備した。

「よしよし。これで誰も私だとはわかるまい。」私は鏡を見て鎧の下でニヤリと笑った。


意気揚々と出ていくイリーナを見てジャンク屋の店主は思った。

「ああ、あれ呪いの装備らしいんだけどな。鎧もマントの方も。でもまあ売れたしいいか。」


・・・・・・・・・・・


「さて、張り込みますか。」私はギルド近くのベンチに腰掛ける。基本的に冒険者は鍛錬を欠かさないタイプ以外は暇人なのである。


しばらく張り込みを続ける。そして私は思った。

「この兜、ずっと被ってなくてもよくない?邪魔じゃん。」私はそう思い兜を脱ごうとするが…

「脱げない?」私は焦って兜を脱ごうとするが全く脱げない。

「え?やば!どうしよ…なんで?なんで脱げないの?」私が一人で悪戦苦闘していると、突然後ろから声をかけられる。

「お嬢さん、お困りですか?ここは生まれながらに鑑定スキルSSS+の私がなんとかいたしましょうか?」謎の青年が詰め寄ってくる。

私は無言で頷く。

「どれどれ。ああ、これは死ぬまで脱げない呪いの防具ですね。頑張ってください。」青年はそう言って去って行った。

「いや!誰だよ!っていうか詳細求む!」私は自称鑑定士の背中に向けて叫ぶが彼は去って行ってしまった。

追いかけようとしたが、鎧が重いし兜で視界が悪いので普通に見失った。


しばらく私は考える。どうすればいいのか。レオンもマグネスもどこにいるかわからないし、竜太郎はなんとかしてくれそうだが、あいつに頼るのは癪だ。

まずは自分の力でなんとかするしかない。それに、私には勝算がある。それは鎧に空いたこの穴だ。どう言う経緯でできたものかはわからない。敵の攻撃で空いた穴かもしれないし、私より前にこの鎧を着た間抜けを助けるために開けた穴かもしれない。おそらくこの穴から蟹みたいに中身を引っ張り出したのだろう。とにかく、脱ぐことはできないが壊すことはできるのだろう。であればぶっ壊すしかない。

「さあ、仕方ないから壊そう。」そう言って私は鎧をガンと殴る。

そう。鎧とは攻撃を防ぐためのものである。どんな安い鎧でも私の打撃程度ではびくともしないのだ。

「さあ、誰かに壊させるか。」私は素早く切り替えた。



・・・・・・・・・・


「あと四体。」初級冒険者のジャックは剣についた血をはらう。

彼のパーティーは八層まで潜ったが無事ボコボコにされてしまい、一番実力が上の彼が殿として時間を稼いでいたのだった。

なんとか彼はゴブリンの包囲を突破し引き上げようとしたその時。


「我が名はゴブリンナイト。よくも我が同胞をここまでやってくれたな?」いきなり後ろから声をかけられる。

急いで振り向くとそこには全身を鎧で覆った小柄なゴブリン?が立っていた。

彼は戦慄する。彼は若く経験も浅いが才能ある冒険者だった。彼は低ランクだが鑑定スキルを持っていた。彼はぼんやりとだが呪いや異常なステータスを感じ取った。これはこんな階層にいていい魔物ではない。

この消耗した状態で勝てる相手ではない。彼はそう考えると素早くゴブリンナイトの横を走り抜け逃走した。

バケモノがいる。犠牲者が出ないうちに上級パーティーに報告しなければ。そう考えながら。


・・・・・・・・・・


「うーん、やっぱりボスのフリは怖がられるな。ごく自然にゴブリンに混ざって攻撃受けないとダメかな。」ゴブリンナイトは不満そうにつぶやく。そう、このゴブリンナイトこそ我らが主人公様である。

結局彼女は自身の力ではどうしようもないので敵のフリをして鎧を他の冒険者に破壊させることにしたのだった。


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