28.敗走四天王
「おお!もう来やがった。足が速いな。」ガレットが竜太郎の気配を感じ肩をすくめる。
「それだけ魔力を放出していれば位置がわかりやすい。先手を取らせてもらいましょう。」教団の魔術師が杖を振る。
「潰れろ!」魔術師の呪文と共に長い廊下の天井が下がってくる。
「まずい、このままだと潰される!」竜太郎は急いで走り出す。天井を破壊することはできるが、無駄な消耗は避けたい。
「だが残念。この廊下には特殊な結界を張っています。急げば急ぐほど廊下の距離は長くなるのです。つまり、全力で走るほど廊下から抜け出せなくなるのです。」魔術師は得意げに言う。
「流石魔術師さんだ!」ガレットは嬉しそうに魔術師を突く。
「くそ!走っても走っても辿りつかない!なんだこれは!」竜太郎は怒鳴る。しかし、天井がどんどん低くなってきて彼も中腰にならないと通れない高さになった。
このままでは潰されてしまうと焦る。
「特に罠とかなかったね。拍子抜け…」そう言って隠し扉を抜けた私の首に突如とんでもない重量がのしかかる。
「うわ!何!」私は危険を感じ咄嗟に硬化する。
「何ここ!天井低っ!」私は驚きついでに仲間に警告する。
レオンとソフィーは驚きつつ屈んで入室する。マグネスも屈むがそれでもでかいので無事頭を打って悶絶した。
「あれ?天井が下がらないんだけど?」魔術師が困惑する。
「施工不良か?」ガレットが唸る。
「誰か治せる奴出せないの?」魔術師はガレットに尋ねる。
「出せねえよ。俺の力じゃ敵をぶん殴るだけのお猿さんしか出せねえんだよ。」
「なるほど。自分の知能以上のは出せないと。」
「なんか言ったか?」
「いえ何も。」
そんな話をしていると、天井が低くなった廊下から竜太郎が這い出してくる。
「なんか這って行ったら早くついたぜ。ガレット、さっきはよくも嘘教えてくれたな?」竜太郎は二人を睨む。
「敵の情報をまんまと信じたお前にも非があるぞ?」ガレットにど正論をぶつけられた竜太郎はしばらく固まる。
「うるせえ!お前らぶっ殺してやる!」竜太郎、思考を放棄し叫ぶ。
「私も?」魔術師は困惑する。
「うわああ!逃げるぞ!」自分の能力では止められないことをわかっているガレットは魔術師を掴んでその場から飛び退く。その瞬間さっきまで二人がいた場所が大きく抉れる。
「危ない!こういうの苦手なんですよ!」魔術師は冷や汗をかいている。
「じゃあ、ガレット殿頑張って!」魔術師はそう言って呪文を唱えると透明になる。
「ああ!こら汚ねえぞ!」ガレットは怒鳴る。
「援護はしますよ。」虚空から声が聞こえる。透明化して安心したからか少し落ち着いた声になっている。
「そこだな!」音を頼りに先ほど抉り取った地面から飛び出してきた石を蹴り込む。
石は虚空で跳ね返ると地面に転がる。どさっと人間が倒れる音がしたと思うと魔術が解けて頭に大きなコブができた魔術師が白目を剥いて倒れていた。
「嘘だろ…」ガレットは短く呟いた。
「さあガレット、もう逃がさないぞ!」竜太郎は剣を構える。
もう逃げたい。ガレットは思ったのだった。