28.騙したな
私たちはお互いの仲間が起きないことを確認すると、目を合わせる。
「言ったわよね?」
「そう、私たちは敵同士よ!」私と四天王は向き合う。
「さあ、どっちが残るかしら?」私が構えたその刹那、突然上から斬撃が飛んできて四天王に命中。四天王は吹っ飛ばされて気絶してしまった。
「?」私は状況が飲み込めず戸惑う。
「イリーナさん!大丈夫ですか!」上から誰かが降りてくる。
「レオン!」私はその人影を見て思わず大きな声を出す。
「遅れてすいません!」レオンは私の目の前に歩いてくる。
「久しぶりね。最近出てこなかったから多分死んだと思ってた人もいるかもしれない。」私の言葉にレオンは苦笑いする。
「久しぶりです。ちゃんと生きてました〜。」レオンは親指を立てる。
「怪我してたんで遅れちゃいました。すいません。」レオンは申し訳なさそうに言う。
「やめてよ。私が怪我人に嫌味言ってるみたいじゃない。それにしても、いつからここにいたの?」私は尋ねる。
「いや、遅れてここに入ったらマグネスさんが倒れてて、起こそうと思っても全然起きなかったのでどうしようと思ってたら、そこの扉を叩く音が聞こえて、マグネスさんが倒れるほどの敵だったら僕無駄死にだなと思って隠れて様子見てたんですよ。」レオンは目を逸らしながら言う。
「扉開けて欲しかったな。もう倒した四天王食べて生き延びること考えてたんだよ?」
「すいません…」
「でも、これで四天王三人撃破ね。マグネスも寝てるだけだからこっちが勝ってる。」私はレオンと状況を整理する。
「あとは竜太郎さんとソフィーさんがどうなってるかですね。」レオンが考え込む。
「まあ、大丈夫でしょ。」私は適当に言う。
「まあ、そうですね。」レオンも頷いた。
・・・・・・・・・・
「残った四天王が俺だけってマジ?」ガレットは素っ頓狂な声を上げる。
「いや、無理無理。流石に重荷すぎない?俺の能力は強いやつに勝てねえの!そんくらい考えたらわかるだろ?なあ、おい!聞いてんのか?…だから、そこをお前の魔術でどうにかするんだよ!いくらで雇ってると思ってんだ!…ああ、クソ!」ガレットは通信魔術を切る。
「仲間割れか?」
「そうだよ。魔術師の野郎配分ミスりましただってよ。それでどうにかしろって言ったらもうどうにもできないって。全くふざけて…って、うわあああ!」ガレットはいきなり竜太郎に声をかけられ腰を抜かす。
「面倒な能力だが、本体の戦闘力は大したことないみたいだな。」竜太郎は剣を構える。
「やめてくれ。そう言われるの結構傷つくんだよ?それに、能力が強いなら俺も強いってことにしてくれないか?」ガレットは後退りしながら反論する。
竜太郎が少し動きを見せると、途端にガレットは兵士を十数人出して一目散に逃げる。
「俺は確かに弱いが、お前は俺を捕まえられない!物量は正義だ!質なんて二の次さ! って言ってたよな?」竜太郎はガレットの襟首を掴みながら言う。
「お前強すぎるだろ。まさか、噂に聞く転生者か?転生者は強力な能力を持ってこの世界に来るらしい。お前もその一人なんだろう?」ガレットは諦めたように項垂れる。
「どうだかな。少なくとも、情報は力だからな。お前には教えねえよ。」竜太郎はガレットを強引に跪かせる。
「さあ、ベルがどこにいるか教えろ。ベルさえ取り戻せば生かしといてやる。魔王教だかあまおう教だか知らんが好きに信仰しとけ。」竜太郎は剣をガレットの首筋に当てる。
「……。わかったよ。四天王が全滅したんだ、俺たちももう終わりだ。」ガレットは大きなため息をつく。
「それでなんだ。ガキの場所だろ?まず、この先の扉から出て突き当たり右。そこから下へ続く階段があるからそれをグアーっと降りてバーって行ってグァン!って曲がってその先をシューって行けば大きい扉が…」
「真面目に説明しろ。」
「おいおい、いたって真面目だが?」
「嘘つけ。ふざけてるだろ。」
「ふざけてない!地図書いてやるからもう勘弁してくれ。もう二度と会いに来るなよ!」ガレットは地図を書いた紙を手渡す。その地図にはベルがいるという部屋への道が書かれていた。
竜太郎はベルが監禁されている場所がわかった。そしてもう一つわかったことがある。ガレットは絵が上手いということだった。
竜太郎がガレットを拘束すると先へ進んでいった。
「あいつはもう行ったな。馬鹿みたいに強かったが、頭は弱いみたいだな。情報は力って言葉そのまま返してやるぜ。せいぜい無駄足を楽しみな。こっちは時間稼がせてもらうからよ。」ガレットは一人兵士を出すと彼に拘束を解かせて愉快そうに笑った。