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27.非力×2=非力

「もう!ほんと開かないじゃん!」私は頭を抱えて座り込む。

さっきから扉が開かないので外に出られないのだ。私は敵の攻撃では死なないが、普通に餓死はするのでそろそろ冷や汗が止まらなくなって来た。

「どうすれば…」私は考え込む。すると、向こうから人の気配がする。味方かと思ったが、ここは敵地なので敵である可能性の方が高い。私はもしものことを考え隠れる。


「なんてこと…四天王である私がこんな…」顔がひしゃげた女性がよろよろと扉に近づいていく。

四天王と言っているので彼女は四天王なのだろう。しめしめと私は思う。彼女も四天王であれば強いだろう。それならばあのドアも開けられるかもしれない。


「早くガレットと合流して手当をしなければ。この扉を開け…開け……開かない!」四天王は金切り声を上げる。

「お前も開けられんのかい!」私は思わず飛び出す。


「誰?」四天王はこちらを睨む。

「あっ、私はその…柱の精霊です。」いつかついた嘘をつく。

「そうか。柱の精霊か。確かにこの部屋柱いっぱいあるものね。」彼女は納得する。

納得したと私は怪訝な顔をする。


「柱の精霊なんですけど、ここから出たくてそのドアが開かなくて。」私は少し精霊っぽい喋り方で言う。

それをきいた女が眉をピクリと動かす。

「なぜ柱の精霊がここから出たがる?さては貴様侵入者だな?」女は私に向き直る。

「いいえ。私は柱の精霊です。本当です。」私は食い下がる。

「思い出したぞ!お前で間違いない。侵入者め!この四天王の一人…頭打ったから忘れた!」四天王はそう言って私に突進してくる。

「え?それ結構深刻なんじゃ?休んだ方がいいんじゃない?」私はそう言いながら相手の攻撃避ける。


「私の能力は神への過大請求ザ・ゴッドモーターこの神のボールを入れた神の靴下を振り回し、敵に当てダメージを与えた分自らを回復する。誰も私に勝つことはできない!」

「神神うるさいなぁ。」

次の瞬間、ボールが私の顔面に数回打ち付けられる。恐ろしい速さだ。

「これは厄介!」私は顔を守りながら後退する。

「ふふふ。これで私の顔も回復して…回復しない?」

「どうして?」私は尋ねる。

「なんでお前がきく?なんで回復しないんだ?」四天王は焦っている。

「あっ!わかった。私にダメージがないから回復しないんじゃない?」私は手をぽんと叩く。

「ダメージがない?全くないなんてありえない。」四天王は睨む。

「ごめん。全くなかった。」私は申し訳なさそうに言う。

「マジ?」

「マジ。」

「…」

「…」


「ねえ、それより先にこの扉開けない?二人なら開くかも。」私は気まずくなり扉を指差す。

「これどっちが勝ってもここで餓死じゃない?協力しよう?ね?」

「確かに。わかったわ、協力する。その代わり。」四天王は私を指差す。

「外に出たら敵同士。でしょ?」私はわかってるよという顔をする。

私と四天王は頷きあう。

たとえ敵であっても共通の目標があれば協力し合えることもあるのだ。これが呉越同舟というものか。私はそう思った。


結局ドアは開かなかったが。



「開かない。」

「そうね。

「どうする?」

「あんたの仲間が分断したせいなんだけど?」

「侵入して来たあんたが悪いんでしょ?」

「子供攫う奴らがよく言うわね!」

「こっちには大義があるの!」

「何が大義だ人攫い!」

「はぁ?」


パニック映画でよくある生存者同士のいがみ合いである。


「やめましょう。口喧嘩で体力消耗はダメよ。」私はため息をつく。

「そうね。くそっ、万全ならこれくらいギリ開けられたかもしれないのに。」

「なんで万全じゃないのよ。」

「せめてあんたに攻撃が通れば回復できるのに。」

「でも回復したら私置いて逃げるでしょ?」

「当たり前でしょ!」

「ほれ見たことか人間の屑人攫い!」

「喧嘩はやめようって言ったのあんたでしょ!この記憶喪失!」

「記憶喪失はあんたでしょ!名前言ってみなさいよ!」

「えっと、私の名前は…星読みの…シェリング。」四天王はぼんやりとしながら言う。

「はい違う!それ違う人!やっぱり記憶喪失じゃない!」

「かもしれないわね。」

「ええ…」


「はぁ、硬い棒とかどこかにないかしら。」四天王はため息をつく。

「硬い棒…ならある。あるっていうかいる?」私はハッとする。

「いる?どういうこと?」四天王は不思議そうに言う。

「いるのよ。ここに。」私はニヤリと笑う。

四天王は首を傾げた。



・・・・・・・・


「よし!出れた!」四天王は伸びをする。

「よかったわね。あれ?なんでマグネスが寝てるの?」私は寝ているマグネスの頬をペチペチと叩く。

「オルテスも寝てる。なんで?っていうか白髪増えてない?何があったの?」四天王もオルテスを揺する。


この二人はいったいどれほどの熱い勝負をしたのだろうと二人は思ったのだった。


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