25.四天王・粉砕のオルテス
マグネスは辺りを警戒しながら進んでいた。
「早く仲間と合流しなければ。」は呟く。
「図体がでかい割に寂しがりみたいだな。」
「図体と寂しがりは関係ないだろ?って誰だ?」マグネスは急いで周囲を見渡す。
「侵入してくるとはいい度胸だな。」上から何者かが飛び降りてくる。
「誰だお前は?」マグネスは目の前にいる太った男を見る。
「忘れたか?俺の顔を。」謎の男は少し明るいところに進み出る。
「お前は…オルテス?」マグネスは驚愕する。彼はいつかのカードゲーム大会での決勝の相手である。
「そうだ。我こそが魔王教団四天王の一角、粉砕のオルテスだ!」オルテスは自己紹介する。
「ふん、大会の後見ないと思ったらこんなところにいたのか。」マグネスは剣を抜く。
「相変わらず攻撃的だ。そういえば使っているデッキも攻撃重視だったな。」オルテスはニヤリとする。
マグネスはおそろしい速さで斬りかかるが、受け止められてしまう。
「やるようになったなオルテス!」マグネスはそう言いながら距離を取る。
「お前と同じだ。長く生きて鍛錬を積めばいやでもステータスは上がる。お前もそうだろ?」オルテスはマグネスと剣で打ち合いながら言う。
「一緒にするな!お前とは価値観が違う!」マグネスは激昂する。
「見習い冒険者になったお前こそ俺には理解できんな!墓守はどうした?」オルテスも反論する。
「ちゃんと棺は守っている!それより、なぜお前はこんなマイナーカルトに入信したんだ?」マグネスは尋ねる。
「なぜって、そりゃあ推しに会いたいからだよ。」オルテスは答える。
「推し?」マグネスは固まる。
「ああ、推しだ。俺がいつもデッキに入れていたカードあっただろ?」
「ああ、No.26の魔王か。闇属性で結構強かったな。」マグネスは昔を思い出す。
「そう。俺はあのカードの絵に魅入られた。だから復活させて仕えたいのさ!」オルテスは宣言する。
「オルテス!確かにあのカードの絵では魔王は美少女だったが、おそらく実際は爺さんだぞ!」マグネスは言い聞かせようとする。
「そんなわけねえ!魔王ちゃんは可愛いに決まってるんだ!」オルテスはそう叫んで攻撃を繰り出す。
「それなら少女を器にしろ!男児を攫ったところでお前の好きな姿にはならん!っていうか、今を生きる人間を器にするな!」マグネスは彼の攻撃を間一髪で避けながら言う。
「男の娘だからいいのだ!」
「あっ、そっち。」マグネスは一瞬固まった隙を突かれ攻撃を喰らってしまう。
「っ…不覚…」マグネスは素早く止血しながら唇を噛む。
「どうした?無敵のマグネスはもういないのか?」オルテスはニヤリとする。
「くそ…これだけは使いたくなかったのだが。」マグネスは棺桶の中に手を入れる。
「?」オルテスは首を傾げる。
「傷を負ったのは久方ぶりだ。オルテス、悪いのはお前だ。私を本気にさせたことを後悔するがいい。」マグネスはゆっくりと言う。マグネスの目には数千年ぶりに炎が灯っていた。
忘れかけていた拮抗した戦いの愉悦。
墓守として落ち着いた振る舞いを心がけていたが、久方ぶりの死闘によりマグネスは覚醒した。
「オルテス、遊びはやめだ。」マグネスは剣を構える。
オルテスは唾をゴクリと飲み込む。圧倒的な殺気だ。四天王の一角の彼の背筋がひやりとする。
「遊興王にて白黒つける!」マグネスは棺桶から数千年温めたデッキを取り出す。
「そうでなくてはな!」オルテスも数千年温めたデッキを懐から取り出す。
「殺し合いなどという遊びは終わりだ。ここからは真剣勝負といこう。」マグネスはゆっくりとカードを並べる。
「いいだろう。俺もこの時を待っていた。数千年に渡り策を練った。お前を打ち負かすためにな!」オルテスもそう叫ぶ。
「いざ尋常に。」
「勝負!」
「「さあ!始め!!!」」