25.分断
私たちは降伏した片腕の男を取り囲んでいた。
「魔王教団って?」私は尋ねる。
「あくまで噂だが、魔王の復活を目指す教団だ。俺たちの故郷では邪神⬛︎と同一視されることもある。」エトが説明する。
「つまり、あの時のゴブリンたちもこいつらの仲間だってこと?」私は尋ねる。
「そうかもしれんな。確かに、魔王教団は我が王の時代にも存在した。当時は無視できる規模の集まりに過ぎなかったが、よもやこれほどまで。」マグネスは難しい顔をする。
「何千年も活動し遂に器を見つけて一気に目的を達成するということ?」ソフィーが尋ねた。
「細々と活動してきたんだろう。」エトは呟く。
「で、彼らは魔王を復活させて何をするつもりなの?」私が尋ねる。
「魔王の力で全てを破壊し新世界を創る。理想郷をな。」片腕の男が弱々しい声で言う。
「全てを破壊して創る理想郷なんて理想なんかじゃないでしょ。」私はため息をつく。
「その通りだ。そのような独りよがりを理想とするとは、真の理想郷を目指した我が王への冒涜だ。許すわけにはいかん。」マグネスは片腕の男を睨む。
「べ、別にそんなつもりじゃ…」男は取り乱す。
「我が王が未来に繋いだ世界をここで終わらせることはない。」マグネスは立ち上がる。
「ああ、俺も魔王を倒すためにこの世界に来たんだ。全部救ってやる。勇者だからな!」竜太郎も頷く。ソフィーもそれを見て力強く頷く。
「え?なんか俺たちも行く流れになってる?嫌なんだけど!」エトが首を拘束で横に振る。
「え?だって四天王でしょ?私、マグネス、留年とソフィー、はい。」私はエトたちを指差す。
「はいじゃねえだろ!なんだよ!」エトが怒鳴る。ニーハも横で不機嫌そうにしている。
「枚数不利で私たちが負けたら襲撃に加担したあなたたちも命狙われるけど?」私はぬるっとエトに詰め寄る。
「ああもう!なんだよ!行けばいいんだろ行けば!」
「はぁ…最悪。」二人は諦めたように言う。
「変な組織とつるんだお前らが悪いから。」マグネスが冷たく言った。
「レオンの復讐は済んだけど、私はタンクだからね。仲間を守るのが私の仕事だから。」私もゆっくりっと立ち上がる。
「さあ、魔王教団を倒してベルを助け出すぞ!」竜太郎が剣を突き上げた。
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「とはいえ、これどこまで潜ればいいの?」竜太郎が不満そうに言う。
「ダンジョンに潜るのもこんな感じだから。なんだかんだダンジョンに回帰するのね。」私は感慨深く言う。
「帰りたい…」エトが呟く。
「なんか、これループしてません?」ソフィーが不安そうに言う。
「え?そう?そんなことは…」私はそう言いながら振り向くと誰もいない。
「あれ?みんな?」私は辺りを見渡す。
「イリーナ?竜太郎?」マグネスは自分以外の誰もいないところで仲間を呼ぶ。
「おい!待てなんか変なところに!出してくれ!俺らはそういうのじゃないんだって!」
「最悪!とばっちりじゃない!」巻き込まれたエトとニーハがキレる。全くその通りである。
「なんだと?分断されたのか?ソフィー、離れるなよ?」
「うん。」竜太郎とソフィーも背中合わせになり周囲を警戒する。
四天王決戦編