24.まあいい、奴は四天王ですらないからな。
「ふん、馬鹿な奴らだ。俺を殺したところでもう止まらんしガキも帰ってこないと言うのに。今報酬払ったらあの二人だけでも帰ってくれないだろうか。」片腕の男は眼下でゴミのように吹き飛ばされる部下を見ながら呟く。
「さあ、残りはあんた一人だけどどうする?今ベルを返して…」
「報酬もな?」
「あ〜わかってるわかってる。報酬も払えばここで見逃してあげるけど?」私は男に尋ねる。
「もう遅い。ガキは返せない。」男は真顔で言う。
「なんだと?」竜太郎は鬼の形相で男を睨む。
「あのガキは器だ。身体は残してあるが心の方はもうない。諦めろ。あと報酬なら払うから…」男が言いかけたところで恐ろしい速さで距離を詰めた竜太郎が男の胴体を両断する。
「なに!?」男は床に転がる。腕の負傷で傷を他人に押し付ける魔術を使う力もなかった。
「死んで償え!」竜太郎は男の頭に剣を突き立てようとする。
「待って…」私は足を出して剣を受け止める。剣に押された私の足が男の顔を踏みつける。
潰されて深海魚のような顔になった男の顔を見て竜太郎は少し冷静になる。
「そうだな。情報を聞き出してからだ。」竜太郎は荒い呼吸を抑えながら自分に言い聞かせるように言った。
「ベルは器と言っていたけどそれは本当?」私はエトの治療でかろうじて一命を取り留めた男に尋ねる。
「ああ。ゴブリンどもは失敗した。所詮はゴブリンだ。話にならん。だが我々は失敗しない。」男は苛立ちながら呟く。
「こいつなんか会話噛み合わないんだよな。」竜太郎は頭を掻く。
「報酬も払わないしな。話のできない奴だ。」エトが笑いながら言う。
「IQがいくつか違うと話が合わないんだ仕方ない。」竜太郎が言う。
「まあいいわ。話を変える。ベルはどこにいる?」私は短剣を男の首に向ける。
「ここのさらに地下だ。そこにいる。急げば間に合うかもしれんぞ。」男は苦しそうに言う。
「下ね?」私は確認する。
「まあ、我が四天王を倒せればの話だがな。」男はニヤリとする。
「四天王?」竜太郎のテンションが少し上がる。
「言っておくが四天王は私なんかよりよほど強い。貴様らに勝ち目はない。」男は勝ち誇ったように言う。
「いや、別にあんたの能力が性格悪いだけであんた自体は別に強くないからね?」私が冷徹に言う。
「そうだぞ?まるで自分が強かったみたいな言い方だけど別にそんなことないからな?」竜太郎も無慈悲に言う。
「そうよ。私みたいなノロマに腕掴まれてる時点で大したことないわよ。」私が畳み掛けると男は目を逸らす。
「それで、あのほんと謝るし報酬も払うんで殺さないでいただけますか?ほんと私はやれって言われてただけで。四天王に逆らえなくてその…」
「めちゃくちゃ饒舌に言い訳始めるじゃん。」
「あの、入り口開けるんでほんと勘弁してください。応援してるんで。」男はそう言うと私に鍵を手渡す。血まみれで汚い。
「まあいいわ。無傷で突破できたしこのまま進む?」私が尋ねるとマグネスと竜太郎が頷く。
「じゃあ、次は報酬について…」エトが空気を読んで話し始めたタイミングで竜太郎は男を完全に無力化するため顔面にローキックを入れる。
男は白目を剥いて沈黙した。
「ちょっと…」
「最悪…」エトとニーハは竜太郎に罵詈雑言を浴びせる。
「え…いや、すまん…ごめん。」竜太郎は悪気がなかっただけに焦って素直に誤り始める。
「はいはい。喧嘩しないで。私たち仲間でしょ?」私は両者を仲裁する。
「おい!俺たちを無断で引き込むな!」
「四天王にビビってんの?最悪。臆病者!」私も集中砲火を浴びる。
「こうやってる間にもベルが危険な目に遭ってる!行くぞ!」竜太郎が怒鳴る。
「元はと言えばあんたが!」ニーハが竜太郎に掴みかかる。
「なんだこのガキ!って、すごい力だ!ちょっと!」四人は掴み合う。
おろおろするマグネスにソフィーが追いつく。
「はい、音を遮断する結界貼りますね。」ソフィーは冷静に慣れた手つきで喧嘩を仲裁した。
そして私たち六人(うち巻き込まれ二名)はベルが囚われている深部へと降り始めた。
「ふふふ。あいつがやられたか。」
「まあいい、奴は四天王の中でも…おっと奴は四天王ですらなかったな。」
「まだ早いぞ。言いたい気持ちはわかるが。」
「…」
暗い部屋の中で四人の話し声が聞こえる。
「侵入者がA地点を突破しました!」戦闘員が報告にくる。
「そうか。ならば仕方がない。我々魔王教団の力を見せようじゃないか。大義のために…な。」リーダーの男の声に皆口々に同意した。
最終章 開幕