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24.最悪

当然彼らが追ってくるところまで予想している私はすぐにレオンと竜太郎、ソフィーにベルを連れてギルドに逃げるよう指示する。

ギルドは我々冒険者にとってホームだ。あの中に屯する冒険者たちは私たちに味方するのでよそ者の彼らは手出しできなくなる。


「的確な采配だな。」足止めのため私と残ったマグネスが四人の背中を眺めながら感心したように言う。

「防御力が高いと戦場のど真ん中で戦況を見渡せるからね。判断力は鍛えられるわ。それに大学で講義を受けたからちょっとクレバーになったの。」私は前髪をクリンと持ち上げる。


土煙の中から先ほどとは人相が変わった二人が現れる。

「マグネスはでかいのをお願い。私はガキに大人の力分らせるから。」

「おう!」

私たちが向かって行くと同時に相手も動き出す。路地での二対二の戦いが始まった。



「うおおお!」男が振り下ろした棍棒をマグネスがかわすと返す刀で斬りつける。

「いってぇ!」男は血をぼたぼたと流しながら倒れ込み這って逃げる。

「?」マグネスは相手があまりにも弱く拍子抜けする。

「あぶねえ。回復回復っと。」男は治癒魔法で自身の傷を治す。

「すばらしい精度の回復魔術だ。敵ながら天晴れ。」マグネスは剣を構えつつ賞賛する。

「ありがとよ。俺は軍の魔術衛生兵だったんだ。すごいだろ。」綺麗に治った身体を指さして言う。

「私も昔軍にいた。同業だとしても容赦はせん。」マグネスは威嚇する。

「怖い怖い。」男は笑った。

「名前を聞いておこう。私はマグネスだ。」

「エトだ。よろしくな。短い付き合いになりそうだが。」男は余裕たっぷりに言った。




「はー、最悪。無駄に疲れただけ。」幼女はため息をつくとボロボロになった剣を捨てる。

「剣の使い方が下手なんじゃない?私の使う?」私は煽る。

「はぁ、煽られるとかほんと最悪!こんなやつに…」彼女は怖い顔をする。

「そんな顔して最悪最悪言ってたら友達できないわよ?」

「関係ないでしょ?」彼女はそう言うと近くにいた冒険者を蹴飛ばすと自分の倍の長さの大剣を奪い構える。

「え?嘘?」私は顔を引き攣らせたままぶっ飛ばされた。


「へえ、すごい力…」私はクッションになった屋台から這い出る。

「ちょっと!」店主が怒鳴る。

「大丈夫。捕まえて弁償させるから。」私はゆっくりと立ち上がる。


「しつこいな。ほんと最悪。」少女はため息をつく。

「ふん、ガキが、ナメてると潰すぞ?」私の煽りに彼女はピクリとする。

その隙を私は見逃さない。屋台からくすねたトマトを彼女の顔に投げつける。

「うわっ!何!」顔についたトマトに気を取られた彼女の手首を掴んで硬化させる。

「?!」幼女は動揺する。

「言ったでしょ?潰すって。」私はそういうと彼女の鼻っ柱に硬化させた拳で一撃叩き込んだ。



しこたま殴られた相手はぐったりとする。

「最悪…」彼女は弱々しく呟く。

「あまり年長者を舐めないことね。」私はとどめに顎を狙うが腕で止められる。

「子供子供ってウッセーよ!」彼女はそう言うと私に掴まれた腕の親指に噛み付く。

「え?」私は思わぬ行動に驚愕する。

彼女は呻き声を上げながら自身の親指を食いちぎる。

「ええ?!」私はドン引きして反応が遅れる。

そのまま親指分細くなった腕で私の拘束を振り解き距離を取られる。


「最悪。」私は呟いた。


「あああ痛い!エト!」彼女は相棒の大男を呼ぶ。

「ほいほい。回復っと。」男の回復魔術でそのまま親指を治す。

彼女は元通りになった親指を動かして頷く。

「なあニーハ?俺の魔力だって無限じゃないんだぞ?慎重にな?」男は釘を指す。

「わかってるよ!本当最悪!」ニーハと呼ばれた幼女は悪態をつく。

「最悪の安売りでもやってるの?ニーハちゃん?」私は煽る。

「だあ!もう、名前覚えられたじゃん。本当最悪!」ニーハは舌打ちをする。


「エト!責任とってもうちょっとちょうだい!」ニーハは怒鳴る。

「はいはい。しょうがねえな。」そう言うと男は魔術を発動させる。

途端にニーハの魔力が数倍に強化される。

「バフかな?」私は私は尋ねる。

「ああ、すごいだろ。」エトはドヤ顔で言う。

「貴様がサポート役だったか。体格に似合わず繊細だな。」マグネスが男を睨む。

「人を見た目で判断するのは前時代的だぜ?」エトが反論する。

「あいにく前時代の人間でな。」マグネスがドヤ顔で言う。

「だってさニーハ。」エトは相棒に話を振る。

「反応に困ったからって私に話を振るな!殺すぞ!」ニーハは怒鳴る。

「おー怖。そうだな。さっさと片付けてガキを連れて帰らないと雇い主にどやされる。さっさと片付けろ。俺はサポートに徹する。」エトはそう言うと後ろに下がる。

「はぁ、1対2とか最悪。」ニーハはそう言うと剣を構え飛びかかってくる。さっきより格段にスピードが増している。

「一撃目は私が受ける!」私はそう言ってマグネスの前に立ち構える。

ニーハが振りかぶった剣が肩に食い込みそのまま私は地面に胸まで打ち込まれる。

埋められた。動けない。

「あっ、これやば…」そこまで言った所でもう一撃踏まれ完全に地面に埋まった。

「嗚呼イリーナ…」マグネスは悲しむ。

「マグネス受けちゃダメだからね!」地面から警告の声が聞こえる。

「あと一人。」ニーハはマグネスを睨む。

「最悪だな。」マグネスはため息をついた。

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