24.親御さん発見。よかったね。
「ねえレオン、私のハンカチ知らない?」
「さあ、知りませんよ。どんなやつですか?」
「白いやつなんだけど。」
「私のハンカチをあげよう。」マグネスが棺桶に手を突っ込む。
「いらないっ!大丈夫よ。」私はマグネスの手を棺桶から引き出す。
「食い気味に断られた…」マグネスは少しかなしそうにする。
「ギルドすごかったね!」ベルが嬉しそうに言う。
「まだベルはダンジョンには潜れないけど、面白いところだっただろ?あのギルド前に一回壊れてその時にあそこのお姉ちゃんが…」竜太郎がニヤニヤしながら私を指差す。
「コラ!子供に変なこと吹き込むな〜。憎たらしいのが二人になるとか嫌だからね。」私は釘を指す。
「柱になってたんだ。」竜太郎はくすくす笑いながら言う。
「こら言うなって!」私はため息をつく。
「中の人を守ってたんだね!すごい!」ベルは心の底から感心している。
「も〜可愛いやつだな〜お姉さんが何か好きなもの買ってあげるぞ〜!」私はベルを撫で回す。
「おいおい、ベルが削れるだろ?おろし金みたいな防御力してんだから。」
「誰がおろし金だ!」
「楽しそうなところ失礼!待ってくれないか?」後ろから野太い声がする。
「楽しそうなところに水差さないでくれる?」私は脊髄反射で言い返す。
「失礼。ちょっと君たちに用があるんだ。」後ろには赤髪の幼女を連れた黒い肌の大柄な男が立っていた。上背ならマグネス並の上に横幅はマグネス以上だ。
「子連れが何か用?」私が尋ねながらマグネスに目配せする。
「いや、その男の子を返してほしい。俺たちその子の家族なんだ。」男は言う。特に嘘をついている顔ではない。
「この子の家族?でも父親には見えないわね。」
「そいつの兄さ。腹違いだけどな。で、こいつが妹。」男は赤毛の少女を指差す。
「ベル?この人たち知ってる?」私はベルに尋ねるがベルは覚えていないと言う。
「魔王の孫って名乗ってるだろ?口癖なんだ。そういう年頃でな?」男は平然と言う。
「ふーん。なら嘘ではなさそうね。」私はそう言うとベル肩に手を添えて二人の前に連れてくる。
「いつはぐれたの?」私は尋ねる。
「ほんの一週間前だ。本当に探し回ってたんだ。気づいたらいなくなっててな。」男は安堵したように言う。
「そう。”旧王都”の近くで見つけたんだけど、ってことは観光?」
「そうそう。宮殿を見に行ってな。そしたらいなくなっててもう大焦りよ。なんとか手掛かりを掴んでここまで来たんだ。」男は興奮気味に言う。
「旧王都の宮殿ね。本当に綺麗だったわ。」私は懐かしそうに返事をする。
「だろ?あんたも芸術がわかるタイプか。嬉しいね。」男は言う。
「家族が見つかってよかったわね。」私は不安そうなベルの頬をつつく。竜太郎は少し不服そうだ。
「おねえちゃんたちありがとう。リュウもまたね。」ベルは私たちに手を振る。
竜太郎は若干悲痛な面持ちで手を振りかえす。
「さあ、お兄ちゃんだぞ。」男は手を広げる。
「さあ、ベル行きなさい。」私はベルの背中を優しく押す。
「と言うとでも思った?」私はベルの方を掴むと後ろに隠す。
「は?」男は意外な展開に困惑する。
「あんたたち、この子の家族じゃないでしょ?何者?」私は睨む。
「は?お前なに言い出してんだ?頭でも狂ったか?」男は困ったような顔をする。
「心配ありがとう。でも大丈夫よ?」私はベルを竜太郎に預ける。
「どう言うことだ?」竜太郎は困惑しつつも迅速にベルを保護する。
「私はこの子を旧王都で拾ったって言ったけど、本当は王都の近くで拾ったの。場所としては正反対の場所よ?こんな子供の足で旧王都から王都まで踏破できるの?とんだ健脚ね?」私は面白いほどに相手が上手く罠にかかったので少しテンションが上がる。
「…」男は眉をひくつかせながら黙り込む。
「要はあなたたちが旧王都ではぐれたのは嘘。もう一度聞くけどあなたたち何者?」私は重ねて問う。
「カマかけたの?キッモい!」幼女が反吐を撒き散らすような顔で怒鳴る。
「はぁ、厄介なのに拾われたな。」男は先ほどとは態度を変える。
「まあいいや。平和的にいきたかったが、こうなったら仕方ねえな。」男はため息をつく。
男が大きく息を吸ったのを見て私はマグネスに合図を送る。
マグネスは剣を抜くと地面に叩きつける。辺り一体が土煙に包まれ突然の騒動に通行人も右往左往する。
「ああくそ!初対面から怪しまれてたのか?」男はむせながらぼやく。
「もう最悪。」赤毛の幼女はそう言うと近くにいた冒険者から剣をひったくり土煙の中に消えて行く。
「無理すんなよ〜。」男は咳き込みながら応援した。