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お題シリーズ5

弱者 価値

作者: リィズ・ブランディシュカ



 俺は進化生命体だ。


 ほかの人間どもより体が屈強で、魔法なども使える。


 進化生命体はここ数年で劇的に増えてきた。


 その数は全人口の二十パーセントにせまる勢いだ。


 次の時代の主役となるのは、まぎれもなく俺達だろう。


 そして、ただの人間は姿を消していくのだ。


 俺たちより弱いのだからそれは、当然のこと。


 なのに、俺たちの考え方に反発するものは少なくなかった。






 ただの人間などという生き物。

 弱者に、どれだけの価値があるというのだろう。


 人の役に立つどころか、満足に自分のこともできないのに。


 弱者は人の足を引っ張る存在だ。


 だから俺は、そんなものを連れて歩かないと決めている。


 けれど弱者というものは、あるとあらゆる場所にいて、みんなで仲良しこよしで群れている。


 不快な存在なのによく目につくから、煩わしい。


 中には進化生命体でありながら、弱者といる変わり者もいた。


「妹の病気を直すために」


「おやじの借金を返すために」


「落ち込んでるあいつをはげますために」


 世界にいるお人よし連中は、そんな弱者に足を引っ張られることを嫌うどころか、すすんで関わりに行くことがある。


 なぜ、弱者なんてもののために、そこまでできる?


 理解できないそれらは、同じ進化生命体などではないように思える。もはや俺とは違う別の生き物に見えてきた。


 ――弱者。


 みかけるたびに煩わしくなるそれを排除しようと思ったのは、人から老人と呼ばれるようになった頃。


 自分で自分の面倒も見ていられない、邪魔な弱者や、そんなものと仲良く寄り添うもの――


 やつらは社会からいなくなって当然の人間だ。


 俺はゴミのようなそれらを、ひたすら葬り去っていく。


 すると、正義の肩書を背負った者たちが俺の前に立ちはだかり始めた。


 弱者を守るための正義の人間。


 やつらは不思議なほど奇妙な執念を破棄して、証拠に残らずこなしていった俺のごみ掃除から、少しづつ手掛かりを見つけ始める。

 

 その技術が、時間が、情熱が弱者などのために振るわれず、自分のために使われれば、もっと様々なことができたはずなのに。


 こいつらはどうしてそんな事をする?


 何か月、何年もかかって、俺を追い詰めてきたそいつらは、ベッドの上にいる俺を見つめている。


 放っておいてももう病で死ぬ体だったというのに。


 死ぬ前に罪を償わせるのが大事だとかいう考えで、俺を追い詰めてきた。


「どうしてこの犯罪者はあんな考えができるんだ。理解できない」


「我々が進化したのは、きっと弱き者たちを助けるためだというのに」


 そいつらは俺を見下ろしながら、そんな事を言っている。


 理解できない点だけは同じ気持ちだった。


 考えの理解できないこいつらは、やはり俺とは違う生き物なのだろう。



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