第九十八話
御伽学園戦闘病
第九十八話「力isパワー」
拳が乱入し戦況がひっくり返った、拳は早速殴り掛かってくる。フラッグは避けるが宮殿の床に穴が開いた、だがその床は数秒で再生した。エンマが破壊は気にしなくていいと言っていたのはこの事かと気づいた拳はお構いなしに滅茶苦茶できると再確認し初動で100%を出すことにした。
「おらぁ!」
拳は殴り掛かるがフラッグは歪みを利用したりして回避し続ける、このままでは拳がバテて終わっていしまうとフェアツが助け舟を出す。フラッグが避けた瞬間強固な髪で絡め取り身動きを封じた、拳は「サンキュー」と言いながら思いきりを溜めて腹部にぶち込もうとする。だがフラッグはこれをくらったらまずいと分かっていたので歪みを発生させて拘束から逃れギリギリのところで回避した。だが額が切れてしまったようで血が流れてきた。
「私は全力サポートするから頑張って!」
「おうよ!」
拳は万全の状態でサポートを受け本領を発揮するタイプだ。これは拳の頭が悪すぎてとりあえず特攻するせいで誰かが助言をしながら戦闘しないとすぐに反撃を貰いそのまま押し切られしまうからだ。
拳はサポートしてくれるだろうと信じて攻撃を仕掛ける、フェアツはしっかりとサポートを行う。フラッグの足を掬った、フラッグは転びそうになる。そこを拳が殴った。
今度こそはぶち込むことができ鈍い音を立てながら吹っ飛んでいった。
「一発ぅ!」
拳はまるでゲーム感覚で楽しみながら戦闘している、一方フラッグはこれに負けたら地獄行きだろうと思い詰めながら戦闘をしている。
気軽に本気を出している奴か重圧に潰されそうになっている奴の戦闘なんてどちらが優位に立てるかは明白だ。
拳は押し続ける、フラッグはフェアツからのサポートを避けながら拳の攻撃を回避するのがやっとだ。
ただもう一人を全く警戒していなかったせいでフラッグは窮地に立たされる事となった。
「緩急、やっぱ大事ね」
そう聞こえた直後フラッグは未知の恐怖に苛まれる。それは今まで受けてきた恐怖の中で孤独の次に人を狂わせる『視線』だ、だがフラッグは少し焦っている様に見受けられはするもののそこまで戦闘に影響が出ているようには見えない。
だが視線は透明のフェアツがいる現状では非常に有効なのだ、次第に影響が出てくるはずだと信じ戦闘は二人に任せて真澄は緩急をつけ続け出来るだけ早く成果を出せるよう奮闘している。
「さんきゅー姉ちゃん!」
少しだけでも動きが変わり楽になった拳は本当に勝ってしまうのではないかと思うほどの猛攻を見せつける、だがフラッグもこのままでは負けてしまうと思ったのか賭けに出た。
拳の攻撃を回避せず一発受けた、拳が驚いている所に反撃をする。歪みで拳の右腕を数メートル先に移動させ吹き飛ばした。
「そういう事も出来んのかよ!」
拳は腕が吹っ飛んだことを何とも思っていない、寧ろやっと反撃してきたと喜んですらいる。拳は殴り掛かる、フラッグは回避はなしない。どうせ動けなくなるんだ、だったら最初から動かなければいいんだ。
フラッグと拳は殴り合う。だがただの肉弾戦では拳に軍配が上がるはずなのだが形勢が逆転して拳が押されている。
「なんだ急に!?」
「私も多数の命を背負い政権を乗っ取った、こんなところで負けていてはいけないんだ」
フラッグは雰囲気が変わった。ただ拳は押し切ろうと攻撃をした、その瞬間フラッグは能力を後方に使用して回避を行った。そこにフラッグはいないのに誰かを殴った感触があった。その感触は本物だ、殴られたのはフェアツだった。歪みによって引き寄せられたのだ。フェアツは吹っ飛んで壁に打ち付けられそのまま気絶した。
こんな卑怯な手段で戦ったフラッグに激昂する。
「俺はバカだ、驚く程バカだ、死ぬほどバカだ、だけど俺はクソみてえな方法で勝つ奴はもっとバカって分かるんだよ!!!」
拳はとんでもないオーラを放ちながら殴り掛かった。その攻撃は外れはしたが少し遠くの壁が全て吹き飛んだ、そして自動回復にも時間がかかってしまっている。フラッグはこれをもろにくらったら待つのは死だと確信し終わらせる為最後の反撃を仕掛ける。
拳が殴り掛かってきた所で全てのエネルギーを跳ね返した、そんな事が出来るとは知らない拳は反撃をくらい口から血を吐きうなだれる。だがすぐに立ち上がり殴ろうとしたが再び跳ね返され今度は真澄が吹っ飛ばされた。
「お前ぇ!!!」
拳は今までで感じたことのない怒りを受け本気で殴り掛かった。だがフラッグは淡々と能力を発動し跳ね返した。そして拳は限界が来て数秒フラフラとしてから気絶した。
「危なかった」
フラッグはそう言いながら全員を邪魔にならない位置に移動させ次の生徒が来るのを待った。
「ありがとな。チーム組んでくれて」
『Ⅷ』の康太がルーズとカルムにそう言った。二人は何故そんなことを言い出したのか聞いてみると康太はエンマに言われたことを復唱してから
「僕はそれがどういう意味なのか知りたい。そして強くなる、その為には人に頼ってちゃいけない。だからサポートが得意な二人と組んだんだ」
「まぁそれは知ってるますけど…何故俺を?」
「ルーズは僕が万全の状態で戦えるよう囮になってほしい。そのうちにタルベが回復させる、こうやってゾンビ戦法でもいいから実戦でヒントを掴む」
二人はエンマが教えようとしている事と康太がやろうとしていることが別の事のように感じたが今は本人が模索するターンだ。自分たちが口を出していいのはもっとあとなのだと言い聞かせ康太を全力でサポートする形で戦闘をする。
「それで今は花園にいるわけですが…そろそろ宮殿まで行ってもいいのでは?」
タルベがそう訊ねるが康太は「もっと後だ」と言って聞かない。具体的にどのタイミングで行くのか聞くと礁蔽率いる『Ⅰ』の戦闘が始まったらだと言う、何故そのタイミングなのか聞くとエスケープの力を見たいらしい。あのチームは生徒会に続くチームだ。しかも素戔嗚が反旗を翻した今でもその強さは健在、化け物チームだ。
「まぁあいつらは強いですから、ですけど康太先輩はラックの事が嫌いなんじゃありませんでした?」
「あぁ嫌いだ。僕は何一つてして勝てないからな」
「まぁ相手は何年か長く生きているんですし当然なのでは...」
「違う。あいつには何か、何か僕らとは違う大きな壁を感じるんだ」
その事にはカルムも頷いた。言葉に表すことの出来ない壁のようなものを感じてやまないのだ。当然歳の差というものはあるだろうが何か、そう種の壁のようなものを感じるのだ。
「種の壁?」
「そう。エンマみたいに明らかに人間をこえている奴、來花とかの死んでいる奴からも感じられる謎の雰囲気。ルーズには分からないのか?」
「うーん…申し訳ないんですが分からないですね。そもそもラックとは関わりが薄くてその後死亡してしまったので僕自身がその変な雰囲気を出してしまっていると思うので気づけていないと思うんですよね」
確かにルーズは死んでいるのでその謎の雰囲気は自分が発していて気づくことは出来ないだろう。康太が悩んでいると後方から声をかけられる。振り向いてみると会長や刀迦が立っていた。会長が何故ここで止まっているのか聞いてくるので康太が説明した。
会長はそこまでピンと来ていないようだが刀迦は何かに納得したような顔をしてから花を摘み始めた。
「何してるんだ刀迦」
ルーズがそう聞くと「みんなにあげるの」と言って三本ほど摘んでからルーズに言霊で花瓶を出すよう言う。ルーズはいつもの事のように花瓶を出した、その手慣れている行動を疑問に思い水葉が追求するとルーズは落ち着くよう言ってから説明する。
「まず僕が黄泉の国に来た時はまだ政権は乗っ取られていませんでした。刀迦はその時宮殿で生活していて僕もエンマに宮殿に住むよう命じられたので宮殿で生活を送っていたので知り合いだったわけです。それで僕が言霊使いと知ると毎日のように何か作ったり何か出したりする様ねだってくるもんですから慣れているってわけです」
「そういうことか。というか刀迦は流の首チョンパするまで何してたの」
「宮殿でスパイ」
「刀迦が宮殿の情報を色々教えてくれたおかげでフェリアさんと僕でエンマを牢屋から救出できたんですよね」
「やっぱあのエンマとかいうやつ無能では…」
香奈美がそう呟くと毎日見ているであろうルーズと刀迦は否定しなかった。その後宮殿の様子を少しだけ聞いた会長達は「それじゃあ」と言って花園を抜ける方向へ歩いて行った。
康太はエンマが普段どんな生活をしているのかが気になったので上手く引き出すように三人で雑談をするのだった。
第九十八話「力isパワー」




