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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第九十五話

御伽学園戦闘病

第九十五話「始まりの合図」


灼率いる『VII』は堂々と宮殿に入ろうと門まで向かう、内通者のおかげで門番は難なく突破する事ができた。ただあくまで灼と胡桃の二人で来たと言って入った、フェアツは服を速攻で脱ぎ髪と目も透明にして灼達の近くを歩くことにしているのだ。

灼はメイドに引き連れられて宮殿を案内される、その間にも何度かアイコンタクトを取り作戦パターンを変えていた。

既に三人は水面下の中行動を始めている、行動内容はフェアツの体の一部を透明で透けて霊力を遮断する部位に変更して朱雀を包み込んでいた。だがこれはいつバレてしまってもおかしくはないので、三人とも慎重に動いている。

三十分程度かけて一通り案内や見学最後の王座の間の扉が開く、部屋の中はとても綺麗でフェリアの写真が沢山飾ってある。疑ってはいるわけではないがやはりここはエンマがいた場所だろう。

そして玉座には白髪長髪、白ブチ眼鏡の奥に輝く赤に近しい橙の瞳、少し赤みがかっているスーツを着た三十代前半程の男[フラッグ・フェリエンツ]が座っている。ひとまず二人は挨拶をする、フラッグは挨拶を無視して優しくもなく冷たくもない声でメイドに言う


「出て行ってくれ、次の奴らからも案内はいらない。安全な場所にでも居てくれ」


メイドは頭を下げて出て行った。扉が閉められた直後フラッグは立ち上がり灼達の方を見ながら言い放つ


「分かっている。そんな変装はしなくていい」


三人はすぐにでも戦闘できる体勢に入る。だが今は相手の動向を伺うのが吉だ、だがフラッグはすぐに行動に移す。何か異様な霊力を放っている白い布手袋をはめた、三人は何か来るかもしれないと思いながらも話し合っていた行動をそのまま実行する。

その行動というのはフェアツが朱雀を囲っている部分を元に戻すまで絶対に攻撃しないというものだ、もしかしたら和解できるかもしれない。だがフラッグにそんな気は一切なかった、少しだけある階段を一気に飛び降り距離を詰めてくる、すぐにフェアツが体の部位を元に戻し朱雀を現わした。


「朱雀が出たら、戦闘開始だよね」


灼はニヤッと笑い目に少しばかしの火花を散らす、そして突入する『半擬似覚醒状態』に。フラッグは驚きはするものの止まりはせずそのまま殴りかかる、灼は恐らく『身体強化』だろうと思い普通に攻撃を試みた。朱雀がフラッグに突撃した、だがその攻撃はフラッグに当たらずダメージが朱雀に向かった。

その行動で一定まで絞り込む事が出来た。一つ目が複数持ちで『身体強化』とさっきの跳ね返し?の能力、二つ目が『身体強化』はなく反射らしき能力しかない、この二つだ。


「それなら!」


フェアツが腕を透明な刃物に変更して音を殺しながら近寄る、そして突き刺した瞬間フェアツの腹部に激痛が走る。何故姿も見えていないフラッグが場所を特定できたのか、考えているとフラッグが自ら説明する。朱雀は明らかに召喚された感じでは無かった、ならば透明の何者かが理解不能な手段で隠していたと考えるのが妥当、そしてフェアツの体は風を通さないので僅かな風の変化に気付き反撃したと言う。それが本当なら能力だけではなくフラッグ自身のセンスもそれなりのものという事になる、益々気分がノってくる。

灼は次の攻撃を行った、だがその攻撃は朱雀ではなく灼に跳ね返ってきた。凄まじいパワーを感じ扉まで吹っ飛ぶ、何かおかしいと感じる。ただの反射なら朱雀にダメージが向かうはずだ、だが主の灼に他先が向かった。この時点でただの反射ではなく胡桃の様な特殊な状況下の場合に発生する反射なのだろう。


「これなら勝てる!胡桃頼むよ!」


胡桃は言われると同時に能力を発動した。胡桃の能力下ならどんなに強い能力でも無意味だ、灼は堂々と思いっきし最大火力の攻撃をぶち込んだ。フラッグは動じずに能力を発動させる、するとその攻撃は胡桃の能力下を通り抜け灼にヒットした。流石に訳が分からず再び吹っ飛ぶ、ただこの反撃のおかげで胡桃は能力を特定する事が出来た。


「分かった…能力」


「ほんと〜?」


灼は額を切った様で血を流しながらフラフラして聞く、胡桃は恐らくだが前置きをしてから話す


「私の能力は霊力的な力も筋肉とかの力も全て跳ね返す、だけど唯一効かなかったことがあった。絵梨花先生と訓練をしていた時空間内を無理矢理破裂させて時空を少しだけ歪めたの、それでフラッグは街を消し去った事もあった。こいつの能力は『時空を捻じ曲げる』だ」


胡桃の推理は完璧だ。フラッグは抑揚の無い声で正解だと伝える、だが正解した所で勝利への道が見えてくるわけではない。せめて後のメンバーに備えて少しでもダメージを入れておきたい、そう思いどう行動するか悩む。

フラッグは丁寧に待ってくれている、確実に勝つ自信があるのだろう。どう考えても勝つ方法が無い、詰みに近しい。そもそも時空を歪めることが出来るならこの世から抹消出来る可能性だってある、いや街でそれをやったのだから出来るだろう。となると無闇矢鱈に近付く事は出来ない、もうヤケクソでやってやろうかと思い行動しようとしたその時三人、そして移動しているメンバーの頭の中に声が響く。



やっほー模擬戦中は手を出すなって言われてつまらなかったけどー今回は覚醒させていいって言われたからー早速やるねー



そう仮想のマモリビトだ。模擬戦中は本人だけの実力を測るため覚醒に導く事は駄目だと釘を刺されていたのだ、だがもうその約束は無い。灼達三人はまだ勝機があるかも知れないと希望を持つ、その希望を持った三人はフラッグに攻撃を始めた。フラッグは全て跳ね返すが半擬似というのもあって灼は少しだけ軌道が分かってくる、そしてほんの少し形勢を傾ける事が出来た。今押しまくれば巻き返せるかも知れない、そんな淡い期待を寄せて攻撃を続ける。だがフラッグはそんな甘い戦闘を好まない、もう十分だろうと呟いてからピタリと動きを止めた。灼は構わず朱雀に攻撃を任せた、フラッグは朱雀が目の前に来た所で能力を発動した。そして手を円を描く様に動かす、その瞬間朱雀の両羽が消失した。勿論朱雀は墜落して苦しそうにしている、そしてフラッグは朱雀の心臓部を強く強打した。すると灼は共鳴する様に痛みを訴える。フラッグは止まらず何度も何度も傷つける、灼は限界が来て視界が悪くなっていく。狭間の中フラッグはこう言う


「私は現世では複数持ちだった、一つ目が『歪み』そして二つ目が『降霊術・神話霊・朱雀』だ」


灼は四方神にのみある特徴を知っていた。それは霊が一定の痛みを受けると共鳴して主も攻撃を受けると言うものだ。だが今ならどうにかなるかもしれないと体を無理矢理立て直す、フラッグはさっさと終わらせようともう一発殴ろうとする。だがフェアツがフラッグを蹴ってそれを阻止した、ただその蹴りはフラッグではなく気絶寸前の灼に向かった。灼は急に蹴られた感覚を感じたせいで限界だったのも相待ってそのまま気絶した。


「もう少し考えて行動したらどうだい、まぁ考えた所で無駄だが」


フラッグは煽り混じりにそう言う。フェアツは言い返そうとするが胡桃が遮る、その眼は燃え上がらずとも火種で眼帯を焼き尽くし現れた可憐な朱色の瞳を輝かせながら言う。


「そうだね、まだ扱いが難しいかも知れない。だから何も考えずに霊力全開で戦うよ」



頑張ってねー



仮想のマモリビトが覚醒へと導いた、彼女はまだ覚醒状態だと言うことに気づいていないが何か力が使えそうな事を確信する。フラッグは焦ってすぐに決着を付けようとする、そんなフラッグを見て胡桃は今自分が覚醒して異様な状態なのだろうと理解して笑いが込み上げてくる。


「これが覚醒か!私には出来ないと思ってたけどなってみると楽しいね!あぁ駄目だ早く試したい、私の『覚醒能力』!」


胡桃はそう言いながら覚醒能力を発動させた、その瞬間宮殿全体が異様な霊力に包まれる。そしてその中にいる全員の霊力がどんどん抜けて行く、それは胡桃も例外では無い。全員の霊力が完全に抜け切った所でその霊力が形を帯び鋭利な棘の様なものに変化していく、そして胡桃が合図を出すと同時にその棘達は一斉に襲いかかった。フラッグは霊力がないので歪めて回避する事が出来ない、確実に勝ったと思ったその時棘が全て消えた。何故消えたのか困惑していると全員に霊力が戻る、そしてフラッグはすぐに胡桃の状態を察してうなじを殴り気絶させた。


「完璧じゃ無かったか…首の皮一枚繋がったな。だが次からは真剣に…」


言いかけた瞬間ガラスが破れる、そちらを見ると拳と真澄がガラスを突き破って侵入してきたのだ。フラッグは顔色一つ変えず呟く


「第一ラウンドも終わっていないのに…まぁいいでしょう。来なさい、君じゃ勝てないと教えてあげよう」


「バカみてえな事言ってんじゃねぇよ!フェアツと姉ちゃんがいる状態で俺に勝てる訳ねぇだろバーカ!」


「そんな口を叩けるのも今だけだ」


拳とフラッグが睨み合う。『IV』が乱入した事は移動中のメンバーも気付いていた、皆それを感じて自分も早く戦いたいと胸を躍らせ宮殿へと急ぐ。ただエスケープチームこと『I』と菊、叉儺、フェリアの『V』は出遅れに焦りながらもしょうがなく未だ港に滞在していた。



第九十五話「始まりの合図」

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