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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第九十一話

御伽学園戦闘病

第九十一話「説明」


流の首がはねられてから五秒も経たない内に莉子がタルベと兵助を連れてきた。この刀には霊力がこもっていなかったので物理特化のタルベが回復させると幸いなことに首はくっつき傷は治った。ただ流はまだ目を覚まさないので家の中の医務室に運ぶことになる。

ルーズが連れて行こうとするが怪我が酷いので治療を優先されてしまう、ならばとラックが流を連れて行った。そこで何人かが外に出てくる、佐須魔と來花、そして紫苑だ。他のメンバーには部屋の中で待機するようエンマが命じた。

佐須魔は早速少女に話しかける


「おつかれ~」


「うん。頑張った」


「そんじゃあここからは一緒に行動だ」


「分かった、よろしく」


少女は結構大人しめの子だ。必要最低限の事しか喋らず言葉の高揚もあまりないので感情を読み取るのが少しばかし難しい、返答も基本的に頷くか首を横に振るかの二つで会話を成立させている。


「久しぶりだな刀迦」


「急にいなくなったからびっくりしたけど呼び起されただけなら安心した」


ただ來花と話す時だけは高揚があり笑ったりもしている。

二人で楽しそうに話していると紫苑が割り込んできた。


「なぁお前って…」


「誰」


「あれだよ、刀迦が初めて刀を使った時の任務の時にいた子だ」


「初めて…あぁあのチビね」


紫苑は一回り以上小さい子にチビと言われ少しイラっと来たがある疑問をぶつける


「ここにいるってことはお前死んだのか?」


「そうだよ。約四年前ぐらいに來花が暴れた時に生贄となって止めたの」


紫苑は少し違和感を感じる。その違和感がなんなのか探ってみると約四年前と言っているところだ、確かに來花は一年半前に暴れてTISが壊滅しかけたのは薫やラックから聞いていた。だが四年前だっただろうか、少し考えていると二日前に薫が言っていたことを思い出しエンマに聞いてみる


「なぁエンマ、ここって仮想世界みたいに時の流れが三倍なのか?」


「そうだ。まぁ正確に言うと君たちが住んでる現世の時の流れ方が遅いんだけどね」


「ふーん…そうか」


エンマに聞いたおかげでこの疑問は解消した。紫苑が聞いた事で刀迦も時の流れが速いことを思い出し現世ではまだその程度しか経っていないことを実感する。

そして紫苑は刀迦がTISの重要幹部である事は見当が付いていたがどれほどの実力者かは知らなかった、なので聞いてみると佐須魔が返答する


「No.1だ、元だけどね」


「えぇ!?というかなんで元なんだ」


「現世にいないと活躍できないから外したんだ」


「じゃあ今のNo.1は?」


「素戔嗚…と言いたいところだが実際は違う。まぁ秘密だ」


紫苑は面白くなさそうな顔をしてからある事を思い出し素戔嗚の方に近づいて行く、素戔嗚は何故近づいてくるのかよく分からず止まっていたが紫苑はすぐそこまで近づいてから思いっきり素戔嗚の顎を蹴り上げた。


「ちょっと!今私が治したばかりなんですが!」


紫苑はタルベを無視して素戔嗚に語り掛ける。ただ流とは違いいつも通りの仲間に対する態度で話す


「俺は正直お前を許せない、お前が勝手に抜けただけなら事情があるんだろうって事で許せた。ただニアに手を出したのは許せない、実の兄がいる前でこう言うのは何だがニアは二年以上一緒に暮らしてきた家族みたいなもんだ。そんなニアに手を出したのは許せない…だが結局は過去の事だ俺はお前が元気戦闘してくれてればそれでいいよ。そんじゃあな」


紫苑はそう言い残して家の中に入っていった。素戔嗚は少し複雑な顔をしてうつむく、そんな素戔嗚に刀迦が近づいて行く。刀を抜きゆっくりと、そしてすぐそこで刀を振った。素戔嗚は気づかずそのまま斬られそうになったが刀迦は寸前でピタリと止める。止めた所でようやく気づいた素戔嗚は顔を上げる。刀迦はいつもの冷たい目で


「特訓、しよっか」


「冗談でしょう…?師匠…」


「確かにあの子の霊力は凄まじいしいろんな背景からも本能的に怯えてしまうのは分かる。だけどそんなんが重要幹部No.1、私の席にのうのうと座っているのが許せない。だから今から徹底的に鍛えてあげる」


刀迦は家の中に訓練場はあるか聞きエンマが案内するといってこまねく、刀迦は素戔嗚の腕を掴み無理やり連れて行く。

外にいるのは兵助、タルベ、ルーズ、佐須魔、來花、フェリアのみとなった。ただフェリアは父に着いていき場を離れる、五人は数秒の間沈黙し兵助が話を切り出す。


「見舞いには行ってるのか」


「あぁ勿論だとも。凄くお世話になったからね君の祖母[沙汰方(サタカタ) 小夜子(サヨコ)]にはね」


「ばあちゃんは気まぐれだからたまに僕達の所に会いに来てくれてたけど数年前の大会の時から急に姿を消した、とタルベに聞いた。やっぱりお前が殺してたんだな佐須魔」


「あぁだが悪いことをしてしまったと思っているよ」


「話にならない」


兵助は家に入っていく、タルベも佐須魔を睨みながら家に入っていった。佐須魔と來花はある事を話してから家に入っていった。一人になったルーズは少し考える、兵助とタルベが同じ師匠の下同じ時に回復術の訓練を行っていたことは学園内でも有名な話なので知っている。ただその師匠が佐須魔に殺されたという話は聞いていなかった、そもそもその師匠は有名な能力者で島の外で暮らしているにも関わらず一部の人からの助けで生活していたという異例の人物だからだ。回復術は物理も霊力もどちらも最高峰で兵助とタルベでもかなわないほどの回復らしい。一説によると死んだ者さえも生き返らせてしまうとの事だ。

そんな人が死んでいて佐須魔がそれを知っているということは佐須魔が吸収している可能性が高い、となると更に学園側の勝利が遠ざかってしまうではないか。そう焦っているとエンマがドアの付近から話しかける


「おーいルーズ!ご飯作ってよー」


「あ!はい!今行きます!」


時刻は午前十一時、そろそろ作り始めなくては昼食が遅くなってしまう。午後には大切な話があるのだ、ルーズは急いで家の中に入りキッチンへと向かっていった。

そしてそのまま一時間半が経ち食堂で蜂と戯れていたフェリアに皆を連れてくるようお願いして料理をテーブルに出す。

五分ほどして全員が集まった、素戔嗚は凄くぐったりして疲れている。そして流は姿を現さなかった、その事を聞いてみると呼びに行った時には既に姿を消していたとラックが説明した。

とりあえず飯を食う、食べている最中に礁蔽が生徒会に佐須魔の事を訊ねる


「生徒会の連中は佐須魔の能力知ってるんか?」


「知っているぞ、薫先生から聞いたんだ」


会長がそう言うと他のメンバーも頷く、礁蔽は面白くなさそうな顔をして食事に戻る。礁蔽は次に刀迦の事を言及する、すると來花が食い気味に答える。


「名前は[神兎(カミト) 刀迦(トウカ)]、TIS結成後一番に加入した。そこら辺をふらついているところを私が拾ったところ才能が凄かったのでそのままTISが預かっている、ここに来る前は重要幹部No.1でTISに沢山いる刀や剣の師匠はすべて刀迦だ。素戔嗚でも勝てないぞ」


「はえーそんな強い奴なんか。にしてはチビッこいなぁ、何歳なんや」


「十三」


「ガチでちびっこやんか…」


「でも年齢は十六だし」


「わいより年上やないか…」


話を聞いていた紫苑が佐須魔に年齢を聞く、見た目は中学生ぐらいだがさすがに中学生ではないだろうと思い聞いたようだ。佐須魔は淡々と答える


「二十歳だ、ただ中等部の美琴に年齢が止まる呪いかけられちゃってね。かけられた当時の十四歳の見た目ってわけだ」


「ってことは崎田とかラックと同年代なのか」


「妾も二十歳じゃぞ」


「まじか二十四とかだと思ってた」


「ぶっ殺すぞガキが」


そんな会話を聞いてスプーンを落とした者がいた。それは菊だ、菊は佐須魔と叉儺のほうを向いて掠れて生気のない声で呟く


「私より…年下」


一年生は何人か笑っていたが三年生自分たちもとができなかった、何故ならもうすぐ自分たちも菊側に回るからだ。その異様な空気間のまま食事は終わった、食べ終わるとエンマは三十分後に玄関から階段を下りてすぐの部屋に集合するよう伝えて部屋を出て行った。

TISメンバーは三十分だが訓練をしようととっくんべやまで向かう、生徒会やエスケープはそれぞれ自由行動を始めた。

エスケープは数日ぶりに五人で雑談をする、ただ流がいないと何かしっくりこなく結局流を心配する話になってしまった。

生徒会は数人を除いてなんでもない雑談をする、そして話していない数人は水葉、康太、英次郎だ。その三人はTISがどう戦っているかをとっくんべやで観戦していた。

そんなことをしているとあっという間に三十分など経ってしまう、全員部屋を出て玄関のほうへ向かう、そして言われた通り階段に一番近い部屋の扉を開ける。

部屋の中はこの世界の地図とアルデンテ王国の地図がある部屋だった、全員席に着きエンマの説明を聞く。エンマは全員聞ける体勢になるといつもとは違うしっかりとした声で今後の戦略を話し始める。

まずこの世界の国の説明を始めた。


「この世界は三つの国しかない、一つ目が僕の国[アルデンテ王国]、能力者を広く受け入れる国だ。そして[シーカス王国]、海産物が特徴の国で今回は関係ない国だ。能力者はあまりいいと思っていないがそんな迫害をするほどではない。そして今回の敵[ホスピタル王国]能力者をこれでもかと嫌い遂には僕たちの王国に攻撃をしてきた、この国は軍事力が強いが君たちがいれば関係ないだろう。

こんな感じで国の説明は終わるよ」


そしてエンマは理解できているか聞き全員が頷くと次に今の目標政権奪還の事を話す


「政権を握っているのは[フラッグ・フェリエンツ]だ」


そういうと一瞬ざわつくがすぐに収まる、初めて聞いたルーズはこれでもかと大きいため息をつき頭を抱える。ただエンマは話をつづけた


「そしてフラッグは能力の関係で倒すのが僕には難しい、だから逃げ出して君たちを呼んだんだ。王宮にいくルートは無数にある、そして今回はルートを自由に行ってもらっていい。そして獲物は早い者勝ちだ、フラッグは相当強いから楽しめると思うよ」


そういうと全員のやる気が漲る


「そして僕は適当にどこかのチームについてい。単独行動をするもよし、チームでまとまって動くもよしだ。作戦始動時間は明日の早朝五時からだ、何か質問はある者はいるか」


そう聞くと拳が手を上げ宮殿はどれほど壊していいか聞く。エンマは気にしなくていいと返答した、すると制限がなくなった拳は遠足の前日並みにワクワクし始めた。


「さて今日はもう自由だ、明日の五時まで自由にするといい」


エンマがそう言った瞬間TISと水葉、康太、英次郎がダッシュでとっくんべやへと向かった。この胸のワクワクを溢れないよう鎮めるため模擬戦をしに行ったのだ。

それを知ると折角エンマとの戦闘は終わったのにルーズ以外の全員とっくんべやへ向かう、エンマは楽しそうでなによりだと言いながらフェリアと戯れることにした。ルーズは皿を洗ってからとっくんべやに向かうことにして急いでキッチンに戻る、そしてさっさと皿を洗いとっくんべやに行くと凄いことになっていた。

水葉と刀迦が刀剣だけで戦っている、あまりのスピードに何人かは目が追い付ていない。だが音を聞くだけでも心地よいものだ。

色々なマッチを行っていると二十一時になっていた、みんな疲れていたせいで黙って風呂に入り部屋に戻って何事もなく眠りにつく。

一方流は眠る気がなかった、ずっと起きていて空を眺めるだけだった。次第に素戔嗚の件で苛立ちが増してくる、我慢できずに適当な場所を殴り続ける。すると後方からフェリアの声がする。


「明日の早朝五時から出発です。宮殿に着いたもの勝ちで戦闘開始です。一人でもいいですしチームでもいいです、乱入もありです…それでどうしたんですかその『眼』」


そう流の眼は碧く燃えがっている、フェリアは近づかないほうがいい事は理解しているので抑えるよう言ってから家に戻っていった。

流はそんなことを言われなくても抑えようとするが何故か抑えることができない、ものすごい勢いで霊力が減っていくのが分かる。そして十分後には霊力の欠如で気絶してしまった、だがこの気絶がなくては最悪の事態を引き起こすことになっていたのでこれでよかったのだ。

その最悪の事態とは体の崩壊だ、流の体はとうに限界を迎えているのだ。無茶や守護霊の影響、様々な物が重なり流は精神的にも肉体的にも破壊寸前なのだ、だが何故ここまで無茶をするのだろうか?それは簡単戦闘のためだ。昔の流はもういない、流は記憶を取り戻したことをきっかけに皆とかけ離れた最強(せいぎ)への道を歩み続けるのだ。



第九十一話「説明」

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