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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第八十六話

御伽学園戦闘病

第八十六話「第七陣」


全員午前三時には就寝していた、ただ流は眠れる環境ではなかったのでずっと起きていた。夜の匂いが嫌でも入ってきて少し心がモヤモヤする、流石に眠くなってきたので寝ても痛くなさそうな場所を見つけ寝ようとした時誰かが近づいてくる音が聞こえる。


「スペラ!」


すぐにスペラが飛び出す、流も戦闘体勢に入ったがすぐに解く事になる。草を踏み近づいてきているのは菊だった、見つけることは気にしないが何故来たのかだけは聞いてみると菊はタバコを一本取り出して火をつけながら流にある物を差し出した。

それは容器に入っている作り置きの料理だった、どうやら流を心配したルーズが常温でも数日なら持つものを作ってくれたらしい。流は特に何も言わず受け取った。


「渡しといてくれとは言われてたんだけど忘れてて今禁断症状が出て吸いに外に出る時に気づいて渡しに来た」


「ありがとう」


「おそらく明日には模擬戦が終わり少なくとも三日後までには出発すると思う、それまでには帰ってこいよ」


流は黙り込む、菊は特に顔色を変えず流の隣に座る。そして吸いおわり火を消したところで話しかけてくる


「まぁ単独行動自体は私もよくやるから咎めないが礁蔽は起こってないしむしろ戻ってきて欲しいと思ってるらしい、折角いい仲間持って優しくしてくれる奴がいるんだから捻くれてないでそのまま優しさを受け取れよ」


「いっつも素っ気ない態度とってるあんたに言われても説得力ないよ」


「自分で言うのもなんだが私は凄い説得力があると思うぞ。私は能力の特性上あまり人と関わらない方がいいんだ、だが優しさに甘えることもあるし突き放すこともある。片方しか感じたことのなかったやつの言葉と両方を絶え間なく経験しているやつの言葉だったら後者の方が説得力があるだろう?」


「まぁ…そうだけど」


菊は夜空を見上げながら二本目のタバコを吸い始めた、流はスペラを愛でる。菊がふと視線を落とすとスペラが目に入る。すると菊はスペラに話しかけた、スペラは菊の手の上に止まる。今度は菊が愛でる。

数分すると流が欠伸をした。


「おねむか」


「うん」


「あやしてやろうか」


冗談まじりにそう言う菊に流は真面目なトーンで「ガキじゃない」と拒否した。菊は冗談が通じない流に少し呆れながらも三本目の火をつける、そしてスペラを触りながら最後にと流を安心させるため言葉を贈る


「まぁ私はお前より五歳上だ、一応大人なんで何かあったら頼ってくれよ」


少しカッコつけながら流を見てみると既に寝落ちていた。「人がカッコつけてる時に寝るか?普通」と言って三本目の火を消した、そしてスペラに戻るよう言ってから流を草の上に寝かせる。そして立ち去ろうとしたが振り返りブレザーを脱ぎ流の掛け布団にしてから家の中に入り眠りについた。



翌朝全員昨日と同じルーズのフライパンとお玉をガンガンやる音で目を覚ます。そして食堂で朝食をとっている時にエンマが今日のスケジュールを説明する。


「午前中は昨日と同じく模擬戦だが午後は今後のことを話す。どういったルートで移動するのか、どういったことをするのか、支給品の説明とか諸々やるからその事把握よろしく」


「了解や!ところで七戦目は誰が戦うんや?」


「…別に言ってもいいかな。第七陣は[松葉 菊][ラック・ツルユ][木ノ傘 英二郎]の三人だ」


その編成にTISのメンバーと一定の生徒会メンバーが反応を示す。何かあるのかと聞いてみると一年半前來花が一年の失踪がなかったかのような力でTISを襲った時に漁夫の利のような形でTIS本拠地に突撃した三人らしい、TISのメンバーは懐かしそうにその当時の事を語っている。一方ラックは体を慣らしてくると部屋を出ていった、続いて英二郎も部屋を出ていく。菊は特に何もするわけでもなく座って話を聞いていた。

ルーズが皿を下げ皆が部屋に帰ったところで二人が転送される、ラックは既に来ていたので英二郎と菊の二人が転送される形となった


「さ〜てやろうか」


「俺はいつでも出来る」


ラックは溢れる力を押さえ込みながら戦闘体勢に入ってそう言った。

英二郎は黙って剣を抜き両手で握り無言の圧で準備はできていることを伝える。

菊は目を閉じある者を何も唱えず召喚する、現れたのは小さな黒い狐だ。ラックと初対面した時に持っていた額に水色の紋様が刻まれている、そして菊は準備オッケーだと言った。

そしてエンマが触手や角を生やした瞬間戦闘が始まった。

初動はラックが突っ込む、エンマは触手で対応しようとするがラックは全て見切って交わし懐まで潜り込んだ。早速チャンスが来たと確実に当たるように狙いを定めて拳を突き出す、エンマは今までと違って逃げずに攻撃してくる、エンマも絶対外さない位置に拳を突き出した。結果両者が一発ずつもらう形になった、ラックは少しだけ後ろに下がる。そして迫ってきている英二郎に攻撃を任せた。

英二郎は凄まじいスピードで剣を振る、だがその攻撃は全て触手二本で防がれてしまった。だが続けて剣をふる、エンマは他の触手で攻撃を試みる。だがその触手は全てラックに叩き音される、初動はラック達が優勢だ。そこで菊も銭湯に参加する


『降霊術・唱・黒九尾』


祝詞が終わるとさっきまでは小さく霊力も微量しか放出していなかった狐が豹変し鋭い目、人の二倍はある図体、毛がなびく九本の尻尾、まるで別の生命体だ。そして霊力は段違いに増し圧も相当のものだ。そしてその黒九尾は人語を喋り菊に指示を求める


「私はどうすればいいのでしょうか、姫」


「あいつをぶっ殺す勢いで戦え」


「承知」


狐はエンマに向かって何かを唱え出す、エンマは最初は適当に防ごうと思っていたがある一節を耳にした瞬間全速力で触手を使って逃走する。その聞いた一説とは『我の力を信じよ 女神(にょじん)の血を引く姫名(きめい)の下に 異形の咆哮を(おろ)したまえ』だ。これはある血筋に古くから伝わる術の一つ、その効果は口から霊力の密度が200%超えの光線を放つといったものだ。

そして黒九尾は唱え終わると口から光線を発射した、その光線は一体の生気を吸いとり緑を消し去った。何故緑が消えたのかというと元々草の霊力はゼロに等しいものでただの霊力がこもった攻撃では消えたりはしないことが多い、だが霊力の性質の一つでこの光線のように霊力密度が高すぎる物体は霊力を放出して100%かそれ以下に調整すると言う特徴がある。なので本来なら霊力をほぼ無限に貯めることが出来るエンマに捻じ込んで無理やり攻撃を通すはずだったが避けられてしまったので他の物体、草や木に霊力が流れ本来の抱えることができる霊力量を遥かに超え身体が限界を迎え消滅したのだ。

その攻撃を見た佐須間は黄泉の国に来てから一番の笑いを見せ部屋を飛び出していった、皆映像に気を取られ止めることができなかった。


「大丈夫かお前ら!」


「あぁ!全部エクスカリバーに横流ししたから英二郎も戦えるし無傷だ!」


その言葉を聞くと菊は一旦攻撃の手を止め作戦を考える、そのうちに二人が離れているエンマに攻撃を仕掛ける。ラックは触手を対応して本調子のエクスカリバーを持つ英二郎はエンマ本体に切り掛かる、エンマは初めて焦った様子で変形する。空気に成り変わったエンマは全速力で逃げる、だが莫大すぎる霊力を頼りに二人は追いかける。

エンマは追いかけられている事を察知し逃げるのをやめ攻撃を仕掛ける、エンマは少し本気を出すことにした。広域化を発動した後唱える


『|肆式-弐条.両盡耿(よんしき-にじょう.りゃんさんこう)』


その瞬間避けられない範囲に光が満ちてゆく、二人はどうにか避ける方法はないかと頭の中を探るが見つからない。ラックは自らを犠牲にして英二郎を残すか二人ともリタイアするかを天秤にかけ一瞬で前者を選んだ。そして光がギリギリまで迫ったところでラックはすぐに英二郎を蹴り飛ばした、英二郎はラックに感謝しながら両盡耿を回避に成功した。

光が消えるとラックは傷だらけになりながら倒れている、英二郎はすぐさま特攻をする。エンマは触手だけでなんとかなるだろうと油断していた。英二郎の本当の狙いは自分で攻撃することじゃない、そう黒九尾の術だ。菊も察しており祝詞を唱えるよう命令する。


女神(にょじん)に仕えし霊が一匹黒九尾 我が名は黑焦狐(ゴクショウコ) 姫君の名は松葉菊 其方(そなた)の記を辿り()無しとあれば力を頂戴致したい 欲するは死 与えるは霊魂 力戴く女神(にょじん)の名こそ雅羅挐姫(がらなひめ) 我の力を信じよ 女神(にょじん)の血を引く姫名(きめい)の下に 死出(しいずる)霧を卸したまえ』


唱え終わった瞬間黒九尾の頭上に何者かが降りてきているような気配がする、そして何者かがいる一から真っ白な煙がモクモクと出現する。エンマはすぐにやばいと言うことに気づけたが空気になったところで逃げ道はない、だがただ遠くに行くにも英二郎が着いてくるので不可能だ。となれば方法は一つ、本気を出すしかない。エンマがリミッターを外そうとしたその瞬間フェリアの声が鳴り響く


「ストップッ!!」


全員が手を止める、そして英二郎は剣を下ろす。エンマも戦闘体勢をやめた、ただ菊は「途中でやめたら機嫌を損ねてしまうかもしれない!」と言って手を止めれない。どうするべきかとあたふたしているといつの間にか出てきていた佐須間が一つ唱える


『|弐式-弐条.封包翠嵌(にしき-にじょう.ほうほうすいがん)』


すると佐須間の後方から小さなカワセミが飛んできた、そしてそのカワセミは霧を見てから佐須間の方を見て了承を得る。了承を得た途端カワセミは大きくクチバシをあけ一気に霧を吸い込み始める、そして数秒で霧を全て飲み込んでしまった、そして佐須間のてに止まる。佐須間が感謝の言葉と頭を軽く撫でると満足したようで真上を向いて急上昇していった。


「これで大丈夫だ」


「あんがと。クロもいいぞ」


「承知致した、またお呼びください姫」


黒九尾はそう言うと菊の中に還っていくのではなくそのまま姿を消した、そして莉子が転送させて回復を行った。エンマはフェリアに説教をくらっている、フェリアの可愛らしい説教の声に呑まれながら三部屋全ての空気感が異様なものになっていた。それは重いわけではない、逆に軽すぎるのだ、あの黒九尾の術を見た半数の口角が少し上がっていた。菊は本能という呪いの火縄に全ての原因となる火種を撒いてしまったのだ。



第八十六話「第七陣」

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