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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第八十五話

御伽学園戦闘病

第八十五話「一日目終了」


四人が服を着て脱衣所を出ると付近にあるマッサージチェアをTISの四人が気持ち良さそうに使用している。素戔嗚が空いている残り一つのチェアに腰掛ける、礁蔽がズルイぞと言うと來花がおもむろに立ち上がり「ここが空いているぞ」と指差した。礁蔽は「ラッキー」と言って腰掛けた、そこで佐須間が話しかける。


「何かあったのかい?少し嬉しそうじゃないか」


そちら見ずとも素戔嗚の事を言っているのだろうと感じる言い草だ。素戔嗚は黙って何も反応しない、礁蔽は何故そんな事が分かったのか聞いてみると佐須間は能力の内の一つだと説明する。レアリー程ではないが軽い心情ぐらいなら察する事が出来るそうだ、礁蔽は便利な能力に感心すると共にある疑問が浮かぶ


「お前複数持ちにしては持ちすぎやろ」


すると佐須間は間抜けな顔をして能力を知らないのか聞き返す、礁蔽は知ってるわけないやろと答えると佐須間はため息をつきながら素戔嗚に説明されていないか訊ねる。素戔嗚は頷く、ならばと佐須間は自慢気に能力を発表する


「俺の能力は『能力を吸収する』能力だ。エンマと同じように見えるが似て非なるものだ。あくまで能力を移動させれるだけだ」


「ちゅーことは今までやってきた滅茶苦茶な事件とかで能力を奪ってきたんか?」


「いいやそんな事ない、俺は全て自分から能力を与えてくれた者の能力しか吸っていない。まぁその数は莫大で数万人の能力を吸ってきたよ」


「数万人やと!?」


「そうだ。だから最初から君達に勝ち筋なんて無いんだよ」


礁蔽はアホらしと一蹴してマッサージチェアを存分に楽しんだ。そして嫌になってきたので席を立つ、すると兵助が礁蔽が座っている場所に座る。

礁蔽は素戔嗚を連れていく、自販機がある場所まで連れていくと約束通りコーヒー牛乳を一本買わせた。素戔嗚は不服そうに礁蔽と自分ので一本ずつ購入した。


「お?もう一本くれるんか?」


「俺のだ」


「なんやつまらんな」


礁蔽は早速フタを開け飲み始める、滅茶苦茶美味そうに飲むので素戔嗚も飲んでみると現世にある物とは比べ物にならない程絶品だ。後味も堪能していると礁蔽がいつもより小さな声で話しかける


「お前がニアを刺したせいでわいら仮想世界に行ったんや、そこで戦闘をした。すげー濃い一日になったけどあの一日で流は変わっちまった。元々お前が居なくなった頃から予兆はあったんやが気にする程のものじゃなかった、ただ妹に会って過去の事を思い出してから別人みたいになっちまった。表では前と同じだが明らかに顔を作っている。

あと中等部の宗太郎は流に負けて逆恨みで強くなるために仮想世界に残った」


「そうか…俺は謝れば良いのか無視をすればいいのかよく分からない。薫達にも生徒会にも中等部にも勿論お前らにも多大な被害と迷惑をかけたのは分かっているがそれは昔から決めていた事だ、正直罪悪感というものはとうの昔に無くなっている」


「そおかいな。それよりお前を呼んだ理由はそんなんやない」


「は?」


「流は昔の事をある程度は話してくれる、ただ頑張って引き出しても何一つ情報を出さない面があったんや」


素戔嗚が何か聞くと礁蔽は残っているコーヒー牛乳を飲み干してから今までよりも低い声で呟くようにこう言う


「親の事や」


すると素戔嗚は少し反応を見せる、すぐに問い詰めるが素戔嗚は「言えることは無い」と言って聞かない。礁蔽はこれ以上聞いても無駄だろうと考え戻る事にした、素戔嗚は追加で五本購入してからチェアがある場所に戻る。そして叉儺、來花、佐須間に一本ずつ渡す、ただ兵助には二本渡した。何故二本なのか聞くと蒿里に渡してくれと言う


「自分で渡せばいいじゃん」


「いいから兵助が渡してくれ」


兵助は意図がよく分からないかったが了承し先に蒿里に渡しに行く事にした。兵助が立った席には礁蔽が座り素戔嗚が座っていた席には來花が座って再び満席となる。


「ありがと〜」


「十七歳のなけなしの金で買ったって事も加味して味わってくださいね」


「そんな嫌味みたいに言われてもね〜」


「十七にもなって月に三千円しか渡されないお小遣い制ってのが悪いでしょう」


礁蔽は素戔嗚がお小遣い制で月に三千円しか貰っていないことを知り大爆笑する。

佐須間は愚痴を溢すように呆れ返りながら反論する


「原はまだ専業主婦として見えるけど重要幹部と三獄で働いてるやつ居ないじゃん。全部上と下の奴らにまかせてんじゃん」


素戔嗚、叉儺、來花は見事に目を背ける。その事を知るや否や礁蔽は更に笑いを加速させた、そして一通り笑い終わると何故働かないのか聞く。來花がその質問に答える。重要幹部や三獄で顔や能力が割れていないのは最近昇級した奴か一人二人の完全に任務に出ないやつしかいないらしい、そして顔がバレているのに堂々とバイトや仕事が出来るはずもなく資金は上や下のメンバーに頭を下げて幾らか頂いているのだ。


「そう言うことか、てっきり戦闘がしたいから〜とか仕事したくないから〜とか言うと思っとったわ」


「いやまぁ仕事はしたくないけどね〜」


礁蔽は鼻で笑った、佐須間は気にせずマッサージチェアを楽しむ。礁蔽がTISの三人が何故そんなにマッサージをするのか聞くと佐須間は少し小馬鹿にしながら答える


「こんだけ霊を所有していると乗っかってくる子もいて肩が凝るんだよね〜まぁ君には分からないだろうけど」


礁蔽は少しイラッとしたが今ここで何か行動に移した所でどうにもならないので怒りを鎮め來花に聞く


「三十七、歳なんだ」


「結構歳行っとるな」


「前にも言ったが君たちと同世代の子がいる、なら三十後半でもまだ若い方だ」


「そんなもんなんか…じゃあ叉儺はなんでや」


聞かれると叉儺は咳払いをしコーヒー牛乳を飲んで喉を潤してから自慢気にデカい胸を指差しながらドヤ顔で


「胸がデカいからじゃ」


と言う。礁蔽はなんとも言えない反応をする、ただ佐須間だけは突っ込む


「なら狐に代償として捧げてやれば良いじゃん、脂肪だけ渡すこと出来るはずだよ。どこかの動物テイマー様がやってた」


そう言った瞬間佐須間の体が浮く、見てみると風呂上がりの菊が佐須間を掴んでいる。顔はいつも通りだがすごいオーラを放っている。佐須間はなだめようとフォローするがそれが嫌味のような内容になってしまっているせいで更にキレている、だが菊は飽きたのか佐須間を離し叉儺に話しかける


「ムカつくが確かになんで吸収させないんだ」


「なんで?…そりゃあこの胸が妾のアイデンティティの一つだからじゃ!」


「クッソしょうもねえ理由だな!!!」


菊が大きな声で即返す。そしてタバコを取り出し吸い出す、それを見た來花がタバコを一本くれないかとねだる。菊は学生のたかるアラフォーってやばいなと呟きながら一本渡し火をつけた。

ただ叉儺はある事を思い出す、來花は子供が産まれた際に禁煙をしていたのだ。しかも吸っていた頃もほぼ吸っていなかったような物だったので吸い方を忘れていないか、と言う事だ。指摘しようとした瞬間盛大にむせ出す。その場にいる全員が笑いを堪えプルプルしている。


「すま…ない…何十年ぶりかに吸ったもので…」


「大のおっさんがタバコでむせてやがる!」


菊は遂に笑いが堪えられず吹き出してしまった。來花は少し恥ずかしそうにしながら少し遠くへ行ってしまう、そして自販機でコーヒー牛乳を買って菊に差し出した。菊は金を払うと言うが來花は拒否し奢りだと譲らない、敵に貸しを作るのは面倒臭いが菊は折れて受け取った。


「でもなんでコーヒー牛乳?タバコの礼ならいらねぇのに」


「美味しかったからだ。楽しかった事や嬉しかった事は子供達に共有していきたいからな」


「私は子供じゃねぇ二十一歳だ」


「君は子供に見えるがね」


「そうかい」


フタを開け一口飲んでみると菊は目を輝かせながら美味しいと珍しく女の子らしい反応を見せた。礁蔽はその事を世界が終わるかのように大袈裟に言う、菊は静かに礁蔽のスネを蹴った。礁蔽は絶叫しながら転がりまわる。

その声を聞いたからかラックがやってくる


「うるさいと思ったらどんな面子で話してんだ…」


「お、ラックだ」


菊がラックの方をみるとラックはメガネを光らせながらスタスタと近付き無理矢理手を掴んで通路に戻っていく。ラックは髪の手入れがなってないと少しキレている、菊は「いまだになれねぇんだよな」などと言いラックはだったら髪を切れと反論する、菊はそれは嫌だと文句ばっかり言っている。聞こえなくなるまでずっと喧嘩をしていた


「仲良いね〜」


「まぁラックは先に生徒会入ってその中でも一番最初に仲良くなったのが菊らしいしな」


「そう言えばシャンプラーが言ってたなぁ」


「というか何故生徒会を抜けてわざわざ問題児集団のエスケープなんかに入ったのじゃ?」


「なんか本人曰く生徒会がつまらなかったらしいで、まぁあいつが入ってくれたから紫苑にニアと芋づる式で良い仲間が付いて来てくれたんやけどな」


「生徒会がつまらない?…やっぱあいつ…まぁいいか。さて!俺は部屋に帰るよ」


佐須間はそう言いながら立ち上がり部屋に戻っていってしまった、來花も続くように部屋に帰っていく。残ったのは素戔嗚、兵助、礁蔽、叉儺となった。四人は無言ながら互いにリラックスしていた、だが側から見ると妙な空気感の中静かに敵対組織の隣で座っている人だ。


「な…なにあれ」


「放っておけ水葉」


などとヤバい人扱いされたり通りかかった紫苑や康太に軽くツボって笑われたり漆に結構本気目に心配されたりしてさまざまな人に見られた。そして全員の満足感がある程度満たされたところで礁蔽がどれほどここにいたか聞くといつの間にか空いているチェアに座っていたエンマが一時間と答えた。すると何故だか短く感じてまた黙って席に着く


「まだいるしなんか増えてる」


「放っておけ水葉」


それからまた時間が経過して合計して三時間そこにいた、流石に疲れてきた五人は部屋に帰ることにする。それぞれの部屋に入っていくと同時に敷いてある布団にダイブして眠りについた。

一方とっくんべやでは拳と英二郎が模擬戦を行っていた。両者物理でしか攻撃しかしない縛りを設け審判をタルべに任せて一心不乱に攻撃を繰り返した。

日を越したタイミングでお開きという事になる、終わると拳は満足気に笑う。そして笑い終わった後思い出したように英二郎にある事を聞く


「なんかお前嫌な感じがする」


「嫌な感じ?」


「なんというか焦ってるっていうの?攻撃の手数が増えて質が落ちたなと思ってよ」


「そう…かな…」


拳は馬鹿だがそういう些細な変化には結構敏感だ、そのため何か違和感を感じたら拳と模擬戦をして何がおかしいかを教えてもらう者もいる。それほどまでに信用できる情報を教えてもらった英二郎だが気にはしていなかった、なぜなら彼の目に映るのはただ一人だからだ。それは敗北した來花でもない、最強と謳われる薫や佐須間でもない、自分をここまで導いてくれた教師[幸徹 絵梨花]ただ一人なのだ



第八十五話「一日目終了」

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