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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第八十四話

御伽学園戦闘病

第八十四話「拒否」


エンマは着いてくるよう言ってから今までに通ったことのない通路を進む、須野昌は次第に心臓の鼓動が速くなってくる。そしてエンマは汚らしい字で[とっくんべや]と書かれた部屋の前で立ち止まる、そして引き戸を開ける。

部屋の中は道場のようで妙に霊力の割合が高い、エンマは須野昌を連れて部屋の中央に向かう。部屋の中央には謎の魔法陣のようなものがある。


「そこに座るんだ」


須野昌は言われた通り中央に座る。エンマは部屋の鍵を閉めると須野昌の側まで近づき力を解放する、その霊力は凄まじくあの時の來花より何段も強い霊力だ。喉元に嘔吐物が迫り上がってくる、だが何故か吐くことはできない。エンマはニコッと笑ってから須野昌の心臓部分を強打する、すると視界が真っ暗になり意識が飛んだ。

一方エンマはマモリビトの特権『白い世界』へと訪れていた。そこにいるのは喰われたはずの[諏磨 香澄]と[フルシェ・レアリー・コンピット・ブラアント]が立っている、エンマは香澄に話しかける



やぁこんにちわ


「こんにちわ」


やっぱ話せるか、そんで本題なんだけど…


「レアリーだけ連れて行ってください」


君は行かないのかい?


「…行きません」


そうかい、僕に強制する権利はないから置いていくよ。ただ須野昌君は苦しむよ


「いいんです。さっさと行ってください」


分かった。じゃあ行こうか、レアリーちゃん



そう言ってレアリーに手を差し伸べる、レアリーはしっかりと手を握り頷く。エンマはいつでも良いと言う合図だと思い現世へと連れ戻す、視界には満天の光。眩しすぎて目を瞑ってしまう、そして目を開くとそこは訓練場だった。

須野昌は香澄もいるはずだと辺りを見渡す、だがどこにも香澄の姿はない。何故いないのかを強い口調で言及する


「彼は抜け出すのを否定した、君が思っていた結果とは違う形になってしまったね」


「は…?なん…で?だって…昔から…ずっと一緒にいたんだ…それで助け合おうって…襲撃の時も絶対に…助けてやるって…」


「僕はこの子を連れていく、君は心の整理がついてからでいいからしっかり戻ってくるんだよ」


エンマはレアリーにことの顛末(てんまつ)を説明しながら中立陣部屋まで移動した。扉を開けるとレアリーがいる事に驚き近寄ってくる、本物のレアリーだと確認するため何個か質問をしたが完全にレアリーだ。

タルべは学園陣に、兵助はTIS陣にその事を伝えに行った。数十秒して何人かが集まる、そして物珍しそうに眺めてから様々な話を繰り広げる。

ただ佐須間だけはどうやってレアリーを引きずり出したのかをエンマに訊ねていた、二人はよく分からない単語を使いながら話している。そして何か納得したように部屋を出て行った。

一時間ほど経ったところで香奈美がある質問をする


「レアリーはどっちに来るんだ」


「私は中立陣に行きます」


「まぁいいが…」


レアリーの所属が決まると同時にフェリアが晩飯だと呼びに来る、全員食堂に向かった。既に流と須野昌以外は到着している。二人の事を聞くとフェリアが「須野昌さんを連れてきます」ととっくんべやに向かう、そして流はどこに行ったのか聞くと礁蔽が全てを話した。すると今まで大人しくしていた拳立ち上がり声を荒げる


「はぁ!?なんで流を否定すんだよ!事実じゃねぇか!」


「拳、落ち着きなさい」


真澄が止めようとするが拳は止まらず次々と言いたい事を言う、するとムキになった叉儺が反論したりするせいで場は破茶滅茶だ。

そこで一人の男が皆を止める


『静かにしてくれ』


ルーズが言霊で黙らせた。そして喧嘩している奴らをなだめてから飯を食おうと提案する、喧嘩していた奴らも馬鹿らしくなったのか普通に飯を食い始めた。

数分すると須野昌とフェリアがやってくる。須野昌はいつも以上にチャラく最早ウザいと言えるレベルだ、だが会長は須野昌がチャラくなる時の条件を知っている。


「何かあったのか」


須野昌はピタリと動きを止める。そして香澄が拒否した事を話した、皆その話に驚きはしたもののそれより短時間であの頑固な狐と契約を結んだ事に驚いている。來花が心配しないのかと聞くが全員「そのうち帰ってくる」と言って適当に流す、現に須野昌もその考えで今は好きにさせてやると決めたらしい。

飯を食い終わったものから順に部屋に戻っていく、そして今日は自由にして明日に備える。大抵の人は風呂に入っている、礁蔽は兵助を呼んで少し話をする


「流が何処かにいっちまったのはわいのせいかもしれんしあいつの気まぐれかもしれへん、けどあいつはあんな口調であんな顔をするような奴やなかった。流は記憶を取り戻してから別人みたいになっちまった…もしかしたらエスケープを抜けるなんちゅー事も言い出すかもしれへん。せやけどそれを止める必要はない、流の好きにさせたってくれや」


「あぁそうだね、何か嫌なことがあったとしても絶対に成し遂げたいことがある以上僕らの元に帰ってくるはずだしね」


「分かった。あくまで流の自由なんだな」


「せや頼むで…でこの話は終わりや!本題なんやけど…風呂行こうや」


「え?そんな事?」


「せやで?」


二人は呆れつつも礁蔽と共に風呂場へ向かう、着替えを確認して男湯と書かれているのを確認してからワクワクで服を脱ぐ。それもそのはずここの風呂は天然の温泉だからだ、島には温泉なんてないので兵助以外は初めてなのだ。だが兵助も久々の温泉だとはしゃいでいる、そして扉を開けるとそこには叉儺が髪を洗っていた。

数秒固まってからすぐに扉を閉める、そして再び扉を開けるとやはりそこには叉儺がいる。ただその三人の頭の中では何故男湯にいるのか等気にならない程大きな事が反響していた


「「「でっけぇ…」」」


三人の視線に気付いたのか叉儺は礁蔽たちの方を見て何故こちらにいるのじゃとアホな質問をしてくる、すぐにここが男湯だと言うと叉儺は立ち上がり女湯に移って行った。


「あいつ羞恥心ちゅーもんはないんか…にしてもデカかったな」


「ほんっとに…これだからTISはダメだね…デカかったね」


「あいつあんな頭悪かったのか…デカいな」


三人が邪な考えを口に出すと湯船の方でクスッと笑い声がした、誰かいるのかと見てみると素戔嗚が風呂に浸かっていた。礁蔽は素戔嗚が笑ったことなんて置いておき言いたい事をぶち撒ける


「居たんならあいつに言えや!!!」


だが素戔嗚は黙って無視する、礁蔽は「まーええわ」と言って体と頭を洗い始めた。紫苑と兵助も洗う、その間は沈黙だったが洗い終わり三人が湯船に浸かると素戔嗚が一言発する


「何故隣に来る」


礁蔽と兵助は素戔嗚の隣、紫苑は正面に座った。そして他愛もない会話をベラベラと続ける、素戔嗚は全て無視して湯船に浸かるだけだ。十分ほどすると紫苑と兵助は先に上がってるよと言って出て行った、礁蔽と素戔嗚の二人きりになる。礁蔽はいつもより少し優しい声色で話を切り出す


「わいはお前が裏切った事をなんとも思っとんらん。でも流にとってはそれがきっかけで嫌な事を思い出したし変な風になっちまった、けど妹と仲直りできたらしいんや。だからお前の裏切りも全てが全て悪い結果に向かった訳やないんや、そう重く受け取る必要もない」


「敵を元気づける理由が分からん。やはりお前は馬鹿だ」


「別にええんや、わいは馬鹿でもいいからまたメンバー八人で集まれる日が来ればそれでええ。だからわいはお前をずっっっと待ってるで!」


素戔嗚はザバッと立ち上がり無言で上がっていく、礁蔽は追いかけるように立ち上がり共に風呂を出た。

礁蔽はコーヒー牛乳を奢ってくれないか懇願する、素戔嗚はため息を吐きながら一本だけだと釘を刺してから約束した。その様子は前と全く変わっていない、やはり仲間と言う縁は離れても切れないのだと礁蔽はその時強く実感したのだった。



第八十四話「拒否」

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