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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第八十二話

御伽学園戦闘病

第八十二話「第六陣」


「正直勝てる気がしないけど頑張ろうか」


「タンク二枚に扱いがムズいサポート一枚か…まぁやるしかねぇな!」


「がんばろ〜」


康太は相棒を出して戦闘体勢に入る。胡桃は能力をいつでも発動できるように準備してから二人より後ろに引いてエンマを見逃さないように唯一使える左目を凝らす。灼は深呼吸をしてから朱雀を呼び出す


『降霊術・神話霊・朱雀』


(あか)く煌めく朱雀が召喚された。その姿は前までとは少しだけ違い一回り大きくなり色も赤からオレンジに似た色に変化している、TIS部屋で佐須魔がこの事を訊ねると影が「灼は半擬似覚醒状態を常に保ち続ける事に成功したんです」と説明する。佐須魔は驚いてからニヤッと笑う。意味の分からなかった叉儺が『半擬似覚醒状態』とは何か聞く、すると佐須魔はこう答える


「まず擬似覚醒状態は分かるな?」


「あれじゃろ?覚醒で起こる変化能力が完璧じゃなかったり力が最大限まで引き出せない状態の事じゃろ?」


「そうだ。そして半擬似覚醒状態はその擬似覚醒状態の半分、正式な覚醒状態の四分の一しか力を出せない状態だ。一見弱そうに見えるが覚醒だと霊力の消費が激しいし擬似だと能力が変わったりする場合中途半端に変わるせいで扱いが難しい。でも半擬似なら適度なパワーアップだから余程下手な能力者じゃなければ扱えるし霊力の消費も少ないんだ。まぁ何が凄いってそれを自分で発生させて常に保てる事だけどね、もしかしたらあのアホっぽいのが功を奏したのかな」


「どう言う事じゃ?」


「もしかしたらあの子は半擬似状態をただ霊が成長しただけと考えているのかもしれない。だから変に意識せず保てている…まぁこの説が当たっているならあの子の霊力は凄まじい事になるけどね…ラックが作った機械で測って大体480はあるんじゃないかな」


その場にいる全員が驚愕する。TIS側では数値がほぼカンストに近い霊力の降霊術士が朱雀を持っていると言う本来なら今にでも始末したいレベルの強さだからだ。そして学園側は500オーバーでカンストしている薫を除いた霊力指数一位の[大井 崎田]でさえ霊力指数は400なのに灼は480と言われたのだ。よく考えると灼は一度も測ったことがない、一年に一度身体測定と同じ時に霊力も測るのだが灼はいつのまにか何処かに行っているので測ったことがなかったのだ。


「そ…それなら勝てるのでは!?」


影が期待を寄せながら佐須魔に問いかける、だが佐須魔は口に人差し指を当てテレビの方を見る。画面の中では丁度戦闘が始まりを告げた。

先手を取ったのは灼だ、朱雀を飛行させ突撃させた。やはり半擬似覚醒状態というのも合間ってかスピードが今までとは段違いでエンマでさえも一瞬見失うほどだった、だがすぐに霊力の動きで場所を察知し触手を木に絡めて引っ張って回避に成功した。


「追撃よろ〜」


そう指示を出しながら自分もエンマに近づく、康太も灼と歩幅を合わせ走る。朱雀はすぐに羽をクロスさせる、そして一気に羽を開き凄まじい熱風を発生させた。流石のエンマもこれはヤバいと思ったのかゲートを発生させてその中に転がり込んだ。康太はどこに行ったかキョロキョロと探しているが灼はすぐに察知して動き出し横の家の屋根に飛び乗った。するとタイミングよくゲートが発生してエンマが飛び出てきたのでそこを蹴り上げた、あまりの判断力に驚く。


「おい灼!お前いつどこでそんな強くなったんだよ?」


「ん〜?授業抜け出して理事長先生に教えてもらってた〜」


「話してて大丈夫なのかな?」


康太の真後ろでエンマの声がする。だが康太は動じずに歩いてエンマの後方まで回る、だがエンマは何故かそちらを向こうという気にならない。そう、エンマの視界には康太の相棒が映っている。康太の霊の能力は『視界から外せない』だ。康太は灼に指示を出そうとしたが灼は既にやっている、朱雀と共にエンマに攻撃を仕掛けた。

その攻撃方法は灼は朱雀の口の中に潜み朱雀が突撃する、そして一度突撃して避けられたり反撃されそうになったら灼が飛び出し確実に攻撃をあうるというものだ。

そんなこと知らないエンマは普通に触手で反撃しようとする、なので灼が飛び出そうとした瞬間


「灼!」


と胡桃が叫んだ。すぐに何をしたいかを理解してすっこんで離れるよう命じる、朱雀は指示に従って上を向き飛び上がる。そして胡桃は今しかないと能力を発動させた、その瞬間エンマの触手や角などは全て消失し全てが霊力の弾に変化した。そしてある一定の箇所を壁として跳ね回る、だがエンマは対策を知っていた。

すぐに胡桃の元まで近寄る、それはまだ流が誘拐されて連れ戻されてから少ししか経っていない頃の山で流が行った行為だ。


「こうすれば自爆が怖くて反射位置を変えれないんだろう?」


そう言いながら再び触手や角を生やす、だが胡桃は思っていたのと違う反応をする。口角を上げながら反射位置を胡桃自身を中心になるように移動させたのだ。エンマは我が子でもないのに成長に喜ぶ、だがここで負けてはマモリビトとしてやっていけない。能力が使えなくてもエンマは強いのだ。


「悪いね」


エンマは胡桃を殴ろうとした、だが当たりはしたが手応えが全くないし音も無い。とその時ある事を思い出す、そういえば能力を使わない物理攻撃でも反射する弾に変換されてしまうのだった。そして場にはエンマの八割程度の力が籠ったエネルギー弾が生成された、だが胡桃自体には攻撃力は無いしここで乱入してくる馬鹿もいないだろうと思って弾だけを目で追っていたその時上空から物凄い勢いで風を切り裂きながら朱雀が落下してくる。そのクチバシの中には灼がいて


「いっけ〜」


等といつものムカつく顔で言っている。すぐに対応した瞬間視界がグワンと揺れた後固定される、その目に映るのは康太の相棒だ。今までは康太が解除していたが今発動する事によって不意を突くことが出来る。横にはエネルギー弾、上は朱雀、そして視線は前方に固定。遂に決着がつくかと思いきやエンマは笑い出す。


「惜しいなぁ…詰めが甘いよ子供達」


意味が分からず困惑している胡桃の脊髄をエネルギー弾が貫く、胡桃は一瞬で気絶した。となればエンマの能力は使い放題、すぐに触手で康太を掴む。

まだ間に合うと朱雀は突っ込む、だがエンマは頭上に康太を連れてきた。流石に模擬戦といえど味方を傷つける事など純真無垢な灼に出来る行為ではない、その隙を突かれ触手で掴まれ引き摺り出されてしまった。二人は勢いをつけて頭と頭をぶつけられる、当然の如く脳震盪(のうしんとう)を起こし気絶した。


「お父様の勝利です」


その声が聞こえると定例通り莉子が迎えにきて兵助達がいる部屋へ送られる。三人は治療を受ける、その内にエンマが部屋にいるメンバーにテレビ越しで伝える


「今日はこれで終わりだ。後は好きに過ごしてもらっていい、明日も同じような感じで明後日からはお楽しみだ」


そう言うと同時にテレビは消えた。エンマはフェリアと共にゲートで中立部屋に行き治療を受ける、そして治療中に康太がある事を聞いてくる


「どうしたら俺は覚醒できるんですか」


「どうしたんだい急に」


「俺はもっと強くなりたいんです。生徒会の中では最弱レベルだし…下手したら生徒会じゃ無いやつにも負けてしまうかもしれない…だから覚醒すれば…」


エンマは今までの雰囲気とは打って変わってしっかりとした大人といった印象を持たせる声色と顔をして康太に聞き返す


「君は何故覚醒して強くなりたいんだい」


「そりゃあみんなに追いついて一緒に戦いたからです」


「そうか…じゃあ君は一生覚醒できないよ。いや覚醒させないよ」


「…え?」


「覚醒は『愛』で出来ているんだ。だからその誰かの為という思考を捨てろ、そうしなきゃ覚醒どころか今後の戦闘で御荷物扱いされるだけだぞ」


治療が終わったエンマはいつも通りに戻りつまみ食いをすると言ってルーズが昼食の準備をしているキッチンまで走って向かってしまった。

その言葉は康太に重く降りかかる、康太の中では引っかかっている事があった。まず『愛』とはよく分からないだが誰かの為という思考、これが理解できない。何故なら自分は誰かのために頑張っているのではなく自分が生徒会としていられる努力をしている筈なのだ、深く考え込もうとした所で灼が


「帰らないの〜?」


と呼びかけてきたきた。ハッとした康太はすぐに立ち上がり三人で部屋に戻って行く、部屋の扉を開けると灼と胡桃の分の水は飛んできたが康太の分だけ飛んでこない。佐須魔の方を向くとニヤニヤしながら話しかけてくる


「あいつに何を言われたか分からないけどそんな深く考え込まなくても大丈夫だ、あいつは無理難題を押し付けてこない。確実に上れる壁にしか案内しない筈だ」


「そうかな…」


「そうですよ。お父様も言いたく無いですがあなたの成長の為とあんな口調で語ったのです」


康太の後ろには昼食ができたと報告しにきたフェリアが立っていた。この二人の励ましによって康太はある程度気持ちを立て直す事が出来た、そして部屋の中の全員で食堂に向かうと既に学園陣と中立陣は席に着いていた。

TIS陣が席に着くとエンマが合掌をしてから食べ始める、それに続いて皆礼儀良く合掌をしてから食べ始めた。すると叉儺が隣にいる素戔嗚に問いかける


「あの朱雀坊が理事長とやらに稽古をつけてもらったと言っておったがその理事長は強いのか?」


「薫や兆波、絵梨花を育てたらしい…それより何故あいつはずっと俺の事を睨んでいるんだ」


素戔嗚は殺気を出しながら飯を食う流を指差す。叉儺は爆笑する、佐須魔も俯いて体を震わせる。

変な空気感で昼食を終え三チーム全員が部屋に戻った。ただ流だけは部屋に戻らず皿を洗っているルーズの元へ向かった、ルーズは流に何かあったのか聞く。流は少し話がしたいと言う、ルーズは「じゃあ皿洗うの手伝ってくれ」と条件を付ける。流は了承して腕を捲り一緒に大量の皿を洗い始めた。そして洗いながら口を開く


「ニアの事なんだけどさ」


そう言ったところでルーズが言霊を発する。


『黙れ』


流は喋れなくなる、困惑しているとルーズが「これが終わったら話そう」と今までより早く皿を洗いさっさと洗い終わった。そしてルーズは着いてこいと部屋を出る、そして廊下を渡り階段を上って外へと出る。そしてエンマが座っていた崖まで歩いたところで風にさらされながらルーズは言う


「さぁ話そうか」



第八十二話「第六陣」

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