第八十一話
御伽学園戦闘病
第八十一話「第五陣」
第五陣は光輝が主に攻撃しようと取り決めてから戦闘体勢に入る。エンマは早速攻撃を仕掛ける、今回は触手ではなく自分で攻撃しようと懐まで潜り込む。光輝もすぐに反応してガードする、だが八割以上能力を発揮していたのにも関わらず痛みが強かった。それほどまでにエンマの力は強いのだ。少し不安になる光輝だったが二人も前に出て行くので自分が先陣を切らなくてはと動く。
「いくよ!」
フェアツは姿は完全に眩まし霊力も抑えどこにいるかは誰にも分からない状態となる。半田はどうにかして触れてやろうと手を伸ばす。
そして光輝はフルパワーで殴りかかった。それに合わせてフェアツも髪を鋭くして一気に延ばす、エンマは光輝の攻撃はくらったがフェアツの髪は空気を切り裂く音で位置を特定し完璧に避けた。そしてその音で大まかな場所を特定したので触手を向かわせる、避けるのには音が出るので一回でも音を聞ければ何度も音を頼りに追い、回避して音を出すを繰り返すことで永久に追尾することが可能だ。
「ざーんねん」
その声はエンマの背後から聞こえる、振り向いても姿はない。捜索しようとした所で肩を掴まれる、そちらを向くと光輝が笑いながら「こっち見ろよ」と言いながら殴りかかっている。すぐに身体強化で対応しようとしたが何故か使えない。そのまま殴られ少し後方に吹っ飛ぶ、何が起こったのかは大体理解できる。半田の触られていたのだろう、だがそうにも姿が見えない。
「ここだよ」
その声は後ろから聞こえる、だが振り返っても誰もいない。まさか貼り付いているのはと思ったエンマは触手で背中を攻撃する、予想通り右手が取れている半田が尻餅をつく。すぐに追撃をしようとした所で空気を切り裂く音が聞こえ回避行動を取る、その攻撃はやはりフェアツの髪だ。
「さんきゅ!」
回避行動を取っているうちに光輝の元まで駆け寄る、エンマは触手で攻撃しようとするが何故か触手が出てこない。先程まで使えていたのに自分の能力が使用不可になっている。まさかと思いため息を吐くと半田が嬉々として口を開く
「俺の能力は俺の体の一部が触れていればいい、腕が千切れててもそれは俺の体の一部だからな!しかも腕を取り除いても髪の毛を数本忍ばせておいたからお前は能力が使えないぞ!」
エンマは「そっかー」と言ってから一瞬で半田の元まで移動して蹴ろうとする、その蹴りは光輝が代わりに受けたが能力を発動していない状態の蹴りとは思えない威力だ。その事を言及してもエンマはフィジカルの差だとしか答えず攻略の糸口は見えてこない。
そんな光輝に対してエンマは戦闘を仕掛ける。光輝も引き受け上手く交わしたり受け流したりして抵抗する。その動作は凄まじく早くて目に捉えられるのは動体視力が人間離れなラックや佐須魔、水葉ぐらいだった。
その状態でどんどん移動していた所で光輝がガードを解き殴り飛ばされる、何故急に解除したか疑問に思っていたエンマだがすぐに理解する事になる。体に無数の穴が発生する、それはフェアツの髪が突き刺さり出来た穴だった。
「誘き寄せられていたってことか」
「そう言うことだ」
エンマは面倒臭そうに笑ってから髪の毛が刺さっているにも関わらず歩き出す、何か変な雰囲気を感じた光輝は少しだけ距離を取ろうとしたが何故か宙を舞っている。そして地面にぶつかり転がっていく、顔を上げると滅茶苦茶なオーラを放つエンマが殴りかかってくる。だが流石にヤバいとフェアツが攻撃して止めようとする、その瞬間フェアツは気を失った。なんと一瞬の霊力の動きで位置を特定し気絶するまでの攻撃を叩き込んだのだ。
「逆に誘き寄せてやったぜ」
光輝はすぐに立ち上がって攻撃しようとするが腹部に強烈な痛みが走る、確実に骨を粉砕された。だがこれぐらいなら動けると立ち上がったがエンマが追撃を入れるため近づいてきている、そこである事を思いついた。逆に攻撃をくらって一発大きなのをぶちかまそうと。
そう決めたので吹っ飛ばされないよう力を入れる、エンマは光輝の頭部を蹴った。だが強靭な意志と力でその場に留まり今までの中でも五本指に入るような力のパンチを腹部にくらわせた、エンマは少し咽せたがすぐにいつも通りに戻り光輝に止めの蹴りをかました。
「くそ…が…」
光輝はそう呟きながら倒れて行った、最後の一人は半田だ。エンマはちゃちゃっと終わらせようと近付き蹴りを行う、だが以外にも半田はそれを避けた。ならばと先程の二倍近いスピードのパンチを行うが半田はどれも避けてしまう。
何かおかしいなと思いながらも攻撃を続けるが半田は全て避けてしまう。まさかと思い目を見てみると少しだけ火花が見える、エンマは驚愕する。こんな近い世代に何人も自分だけで覚醒を行える素質がある者がいるなんて始めてだ。
今後の活躍が楽しみになりながらほんのコンマ数秒の隙を突き腹を殴り悶えている所でうなじに手刀を打ち込んだ。
最後の半田も気絶した所でフェリアが勝敗を伝えると莉子が三人を送り回復を行った。三人は完治したが半田の心の中には未だ少しだけ高揚感が留まり続けている。
部屋に帰るとさっきの三人と同じように水を差し出してくる、そこで半田がさっきのはなんだったのか佐須魔に聞いてみる
「覚醒だ、不完全だがけどね。覚醒を起こすと身体能力が向上したり能力が変化したりする。そして覚醒は二種類あって君や紫苑が起こした自主的覚醒、そしてマモリビトの誘導によって起こるただの覚醒。自主的覚醒は目に変化が現れるぐらいだけどただの覚醒はトリガーが必要になる、それは人によって様々で不用物だったり逆に有用物はたまた全く関係のないものかもしれない。ただ身につけているものじゃないと駄目ってのはあるけどね。
そんで覚醒時は両者とも高い高揚感に襲われる、僕が笑っているのもそれのせいだ。だから面白かっただろう?今回の戦いが」
半田は頷く、そして覚醒と言う新しい性質を知った半田はまだまだ成長できるのかもしれないと心に自分への期待を背負わす。
「覚醒ってすげぇよな。俺この紫野郎に勝ったもん」
紫苑はそう言って素戔嗚を指差す。佐須魔は覚醒は素晴らしいものだと紫苑に言うが何故か紫苑は微妙な反応をする、叉儺がなんでそんな反応をしているのかと聞くと紫苑は少し悩んでから言語化する事に成功して説明する
「勿論高揚感も感じたし楽しかった、だけどあの時『何か大切なもの』を忘れる感覚があったんだよ」
「それは妾も感じるし佐須魔も感じるといっておったぞ。覚醒の副作用的なやつなのじゃろう」
「そんなもんなのか…というか俺が昔あったおっさんってどうなったんだ」
佐須魔が今は上の上位帯まで上り詰め楽しくやっているよと言う。紫苑は会いたいなーと呟くと叉儺がTISに入らないかと勧誘してくる、紫苑は鼻で笑って断った。
紫苑はおっさんと一緒に来ていたあの紫髪で全身兎を纏った女の子はどうなったのか聞く、佐須魔はニヤニヤしながら「もう少し後で会えるさ」と言って紫苑の方を向く。紫苑は少し嬉しそうにするので叉儺は「ああいう女が好きなのか」と聞いてきた、紫苑は即答する。
「刀迦には手を出さないでくれよ」
今まで黙っていた來花が口を開いた、紫苑はがっかりしテレビの方を向く。すると今日最後の第六陣が既に転送されていた。
第六陣のメンバーはTIS陣部屋で素戔嗚を覗き戦っていなかった[麻布 康太][拓蓮 灼][真田 胡桃]の三人だ。
第八十一話「第五陣」




