表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
76/556

第七十六話

御伽学園戦闘病

第七十六話「分裂」


エンマは立ち上がり先頭にいる香奈美に近付き匂いを嗅ぎ出す、そしてある事に気付く。


「霊変えた?」


その場にいる全員が驚く、香奈美は数ヶ月前自分の霊を鳥神に喰われているのだ。エンマはすぐにその事に気付いたのだ、それより何故前の霊の事を知っているのだろうか。その事を追求しようとした最中皆の背後から聞き覚えのある声がする。


「おーいエンマさん飯出来ましたよ…あ!」


全員振り向く、その場には行方不明となっていた筈の青年がいる。赤眼で白髪、そして黒い学生服を着ているその男の名はそう


「ルーズ!」


ニアがずっと探し求めていたルーズがそこに立っているのだ。会長が駆け寄る、そして何があったのか聞くがルーズは「ちょっと待っててください」と言い全員をくぐり抜けエンマの元まで向かう。そしてエンマと少し会話を行い何かが決定したようだ。

ルーズはエンマを無理矢理連れて行く、あの質素な家に入って行く。数十秒してから二人が出てくる。エンマが紹介したい奴がいると後ろの方を指差す。

次の瞬間全員青ざめる、なぜなら途轍もない霊力を感じるのだ。それも何回か感じた事のある霊力だ

家の方から出てきたのはTISの最上位帯三獄が一人佐須魔だ。


「なんでお前がおるんや…」


「なんでっていわれてもね〜エンマに来いっていわれちゃったから〜」


礁蔽は説明を求める、エンマはこれでもかというほど笑い転げる。一区切り着くとフェリアが咳払いをする、エンマはすぐに立ち上がり事の説明を始めた。


「君達に集まってもらった理由は強化合宿でもないし観光でもない、駒になってもらうためだ。今僕の国の政治が乗っ取られちゃってねぇ、どうにか乗っ取った奴を倒したいんだけど僕もフェリアもルーズでさえも歯が立たないんだ。だから君達を呼んだ、そしてあいつを倒すだけなら佐須魔一人でいい、なのに他の重要幹部や君達を呼んだ理由はただ一つ戦争に参加してもらう」


戦争という物騒な言葉が出てきた事に少し恐怖を覚えるが精鋭を集めたのだから問題ないだろう、そう思い込む事にする。流がある事に突っ込む


「重要幹部も来てるのか?」


「あぁ四人来ている。そして三獄は二人だ」


急なカミングアウトに驚くが今まで正体を表してこなかったボスがこんなところで姿を現すわけがないだろう、ならば来るのは來花で確定だ。そう思うだけで心は落ち着く


「なら素戔嗚は!」


エンマはニヤッと笑い流の肩に手を置く、そして少しだけ顔を近付け小さな声で言う


「来ているさ」


流の顔が変わる、いつも通りの緩い顔から最近見せるようになった殺意を持った顔だ。

ただエンマは気まぐれでお腹が空いたと家の中に入ってしまう、ルーズは生徒会とエスケープに着いてくるよういい家に入って行く。ただどう見てもそんな大人数入れるような家ではない、どうするのだろうと不思議に思っているがその疑問は即解消された。

この家は地下に広がっているのだ、そして一番大きな部屋では重要幹部達がルーズの作った飯をバクバクと食べている。

座っているのは四人。一人目は[フィッシオ・ラッセル]、二人目は[桐生 叉儺]、三人目は[翔馬 來花]、そして四人目は[杉田 素戔嗚]。何人かは見覚えのある顔に反応するがTIS側は無視して飯を食い続ける、ルーズは説明するから食えと席に座るよう促す。

全員椅子に座り少しづつご飯を食べ始める、みんなの緊張がある程度解けた所でルーズが口を開く。


「まず俺はそこの紫野郎に殺された」


そう言って素戔嗚の方を指差す。流は物凄い形相で素戔嗚の方を睨む、ルーズは流の頭に手を置き怒りを沈めてから話を続ける。


「そんで殺されてそのまま黄泉の国に来たわけだ、それでエンマに能力を買われ準備が整うまでここで暮らしてるってわけだ」


「というかその乗っ取ったって奴は誰なんだ」


半田がエンマの方を向いて聞くがエンマは濁して答えない。だが何か嫌な感じがする。

それはそうと飯を食い終わったところでエンマは泊まる部屋を紹介すると立ち上がる、全員立ち上がり部屋を後にする。そして部屋の前まで来た所で流が声を発する


「なぁ聞きたい事があるんだが」


「どうしたんだい?」


「僕はこいつらと共闘しなくちゃいけないのか?」


「あぁその為に君達を呼んだんだからね」


流はエンマの胸ぐらを掴みながら学園側とTISの関係性がどうなっているかぐらい把握しているだろうと強く叱責する。だがエンマはのらりくらりと交わし答えようとしない、そんなエンマに痺れを切らした流は自分勝手な行動をする


「僕はこいつらと一緒に戦わない!一人で戦う!」


その発言を責める者は誰もいない、それどころか称賛し同じ行動を取る者も現れる。


「俺も流と行く。共闘した方が合理的なのは山々だがこいつらとやるのなんて真っ平ごめんなんでな」


ラックは流の方に着いていく。ラックを皮切りに半分近くのメンバーが流に着く、エンマはとやかく言わずそれを受け入れチームが二つに割れた。ただ喧嘩だけはしないようにと釘を刺してからそれぞれのチームに部屋を割り当てた。


『学園陣』

[櫻 流]

[ラック・ツルユ]

[姫乃 香奈美]

[姫乃 水葉]

[高田 漆]

[木ノ傘 英二郎]

[松葉 菊]

[葛城 須野昌]

[驚砕 真澄]

[驚砕 拳]

[浜北 美久]

[目雲 蓮]

[和也 蒼]


『TIS陣』

[佐須魔]

[翔馬 來花]

[杉田 素戔嗚]

[フィッシオ・ラッセル]

[桐生 叉儺]

[—— ——]

[空十字 紫苑]

[菅凪 礁蔽]

[樹枝 蒿里]

[拓士 影]

[クルト・フェアツ]

[真田 胡桃]

[拓蓮 灼]

[葉月 半田]

[穂鍋 光輝]

[麻布 康太]


『中立陣』

[フロッタ・アルデンテ(エンマ)]

[フェリア・アルデンテ]

[ルーズ・フェリエンツ]

[中谷 莉子]

[タルベ・カルム]

[沙汰方 兵助]


学園陣とTIS陣、そして中立陣にそれぞれ部屋を渡し自由に交流するよう命じ全員部屋に捻じ込もうとする。流は部屋に入る直前思い出したかようにTISの奴らに声をかける


「僕はお前らのおかげで戦闘の楽しさに気づけたよ、感謝の言葉を送る『ありがとう』」


流の顔は誰かに似ている、ニヤァっと口角を上げ気持ちの悪い笑いをしている。TISの奴らは全員攻撃手段に手をかける、佐須魔はそれを止め流に「楽しみにしてるよ」と言葉を残し部屋に入って行った。そして流も部屋に入っていく、その部屋はまるで修学旅行の時に泊まる大部屋のようだ。


「何話してたの流」


「何でもないよ水葉さん」


「それなら良いけどね。それより私二時間しか寝てないから眠いんだけど」


水葉が欠伸すると香奈美が押し入れに入っている布団を引き出しサッと布団をひく。水葉は速攻で布団に潜り眠りにつく、掛け布団を全てかけ息が苦しいはずなのにすぐ寝てしまう。

ラックはあれだと死ぬぞと注意するが香奈美は「あれがデフォルトだ。触れない方がいい」と言い張る。ラックが流石に危ないと布団をずらした瞬間眠っている水葉がラックを吹っ飛ばした。


「だから触れないほうがいいと…水葉は寝相が悪いというレベルを超えるほど寝相が悪いんだ」


「そ…そうか」


その惨状を見て笑う者もいればまだ睡眠時間が短かったので眠る者もいる。結局起きているのは流とラック、会長、菊だけになった。四人は今後どうなるのか話し合うが異世界のようなここで予想通り行く事なんてほぼないだろう、なのでラックとファルの出会いや学園に編入してきた当時の事をおちょくるように話す。


楽しげな話をしているなかTIS陣では数年ぶりの再会が起こっていた。

TIS陣の部屋はあまり会話はなかった、協力関係とはいえTISに因縁があるやつも多いのだ。そんな中紫苑が叉儺に近寄る、叉儺は待っていたと言わんばかりに紫苑の方を向いてニヤニヤとする。


「久しぶりだな」


叉儺は当たり障りのない挨拶に少しムッとしながらもいつもの口調で返す


「数年ぶりじゃな、妾を覚えているとはいがいじゃのう」


「あ?そりゃ覚えてるだろあの日のことは一言一句覚えてる」


「そうかそうか。にしても大きくなったの…妾より…でかい…!」


叉儺は立ち上がり紫苑の方が背が高い事にショックを受けている、それもそのはず叉儺の中の紫苑はまだ数年前の小さなガキなのだから。その話に佐須魔が乱入し滅茶苦茶な会話を繰り広げる、紫苑もなんだかんだ楽しそうだ。

ある程度話すと睡眠不足からか学園側の子供は全員眠気に勝てず睡眠を取る、残ったTIS陣は先の流の話が話題に上がる。


「あれは何だったのじゃ?佐須魔と似ておったが」


「いいやあれは俺の顔じゃない、限界まで楽しんでいる顔だ」


そう言って佐須魔はニタァと笑う、完全に一致する。あの時の流の顔は笑っている佐須魔とそっくりだ。

ならばあいつは佐須魔と同じ程の力を秘めているのではないか、唸るように悩むが結局は流次第だと片付いた。そして來花がある人物の事を佐須魔に訊ねる


刀迦(トウカ)はいつ来るんだ」


「刀迦には他のことをしてもらってるから後々合流するよ、気にしてるの?」


「いやそりゃ…私だけ現世に連れ戻されたから何か変な事をしていなか…」


「來花は自分の子を心配したらどうだい」


「…そう…だな」


TISは今アルデンテ王国で何が起こっているのか分かっている事を佐須魔が話しはじめた。


中立部屋ではルーズは飯の片付けをする為部屋を出て行った所でエンマが口を開く。今アルデンテ王国で起こっている事を説明する、アルデンテ王国は能力者を受け入れる国だ。他の二つの国は現世と同じく能力者を迫害している、だからアルデンテ王国は現世で言う学園がある島と同じ立ち位置らしい。

そしてアルデンテは今戦争中らしい、なんと戦争中にエンマは政治を乗っ取られたと言う。そこにいる全員があまりのポンコツぶりに驚く。兵助は誰が乗っ取ったのかを聞くとエンマはルーズには言わないでくれと釘を刺してから乗っ取った人物の名を言う


[フラッグ・フェリエンツ]


全員顔をしかめる、フラッグは現世でもやらかした人物で悪い意味で有名なのだ。こっちの世界でもあいつがやらかしたのかと呆れる。

だが兵助は疑問に思う事がある、それは能力者一人ぐらいさっさと倒してしまえる力はあるだろう。エンマはこう答える


「倒すことは簡単だ、だが不安定な戦況を持ち直すには君達みたいな実力者が必要なんだ」


タルベが反論する、戦況をひっくり返すぐらいTISだけで出来る。わざわざ学園側の人間を呼んだ意図が分からない、と。エンマは少し真剣な面持ちで回答する


「僕は強化合宿ではないと言ったが実質的には強化合宿みたいなものだ。そもそも君たちはTISを壊そうとしているんだろ?だったらTISの実力は知っておいた方がいい、あの子達は君らが思っている以上に強い…というわけで明日は君たちに技量の差を痛感してもらいます」


「技量の…差?」


「詳しくは明日説明するから今日は寝ようか」


エンマが布団を出そうとするとフェリアがテキパキと全員分の布団を敷き「寝ましょう」とニコニコ笑う。エンマはフェリアの頭を撫でお礼をしてから眠りにつく、学園側のメンバーは明日起こる事が思っている以上にやばい事なのではと不安でいっぱいになりながらも眠かったので睡眠を取る事にした。

明日行うことはそう、模擬戦だ



第七十六話「分裂」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ