第七十四話
御伽学園戦闘病
第七十四話「流し櫻」
流が距離を詰め攻撃して咲は傘で受け流し距離を取ってから炎を出す。その状態が続き二人とも決定打を打てないでいた、だが咲の炎は霊力を消費して発動している流は見抜いていた。そして何十発も打ち明らかに自分より霊力が少なくなったところで心の中で『死ね』と強く思いながら叫ぶ
『インストキラー』
流の念は咲に届く。だが咲は能力が二つある複数持ちだ、一つが特殊な傘、そしてもう一つが『危機分散』。これは自分や周囲で起こった痛みや感情を周りの人に分散させる事が出来る能力だ。
咲はこれを発動して流と痛み分けをした。咲は右手が飛び流は右側の脇腹と内臓が全て吹っ飛んだ、何が起こったか理解できず消えた脇腹と内臓を見つめる。
止まるなんて攻撃してくださいと言っているようなもの、咲は当然左手で傘を突き立てながら突っ込む。流は突っ込んできていることに気付かず避けなかった。咲は既に抉れている脇腹に傘を叩き込んだ。
流は痛みのあまり涙を流すがすぐに事の重大さを知り後ろに逃げる。咲は追いかけ追撃を入れようとする、流は脇腹を抑えながらも全て避けてたまに反撃を入れる。
この状況でも流が優勢だ。
「ならばこれで」
咲は距離を取り傘に力を込める、そして火柱を発生させる。あまりに速すぎる行動に流は対応できず火に巻かれる、だが今回はしっかりと耐えた。そして痛みを紛らわせるためか戯言を呟く
「まぁ止血されたって思えば…チャラみたいなもんかな」
「内臓が燃えたのにそれはないでしょう」
呆れるように微笑みながら再び傘に力を込める、流はすぐにそれを察知しいつでも火を避けれる体勢で咲に突っ込む。咲は読まれていた事を理解してすぐに力を込めるのをやめて傘で流の攻撃を受け流す。だが受け流すだけでは勝ち筋は一向に見えてこない、咲は一発もらう覚悟で流に傘を振るう。
攻撃中だったのと急に攻撃して来たのが相まって流は完璧にくらう。だが内臓を突かれた時の痛みよりは幾分かマシだと割り切る。そして左腕を使い隙だらけの顔面に蹴りをかます。
咲は少しフラフラとした後距離を取る。流も訓練の成果か基礎的な能力が上がっている、咄嗟に出した攻撃も前より何倍と強くなっている。
明らかに聞いていた話より強くなっている流に少し焦りを感じたのかトンチンカンな行動をとってしまう、咲は傘を開かずただ構える。何か意図があるのかもしれないと少し様子を見た流だったがただの奇行だと言うことに勘づき一気に決めることにする。
『降霊術・唱・鳥』
スペラを召喚して流自身が編み出した中で最強の技を放つ。
まずスペラが身震いをする、そして流の肩から離れて流の顔の高さぐらいに高度を保ち飛ぶ。そして流がスペラの後ろ部分を覆うように力を込める、そして紙飛行機を飛ばすかのようにしてスペラを離す。スペラは勢いよく飛んでいき途中で何本も羽毛を落とした、その羽毛はヒラヒラと真下に落ちるのではなく咲の方に向かっていく。
スペラは速攻でUターンして流の手に戻ってくる、流は羽毛が咲の近くに来たところでスペラに今出せる霊力を全て注ぎ込んだ。その瞬間羽毛達は霊力を帯び刃のようになり咲を襲った。
そして霊力を込めた時に流はこう言った
『流し櫻』
流し櫻は霊力の性質を活用した術だ。霊には自身の体から離れた自身の一部でも霊力を流し込み自由自在に動かす事ができる個体が頻繁にいる、スペラはこれに該当する霊なのだ。なので何本も羽毛を落としてから霊力を流し込むことで不意打ちのように攻撃できるのだ。
ヒラヒラと舞い相手に近づいて行く様が正に川に流れている桜の花だったので流はこう名付けたのだ。
そしてこの術の威力は凄まじい、何故ならスペラの霊力と流の霊力を全て数本の羽毛に込めたので濃度がすごいことになっている。
この羽毛を一本たりとも避けずに受けてしまった咲はひとたまりもなく血を吹き出しながら倒れる、流はもう立ち上がれない事を確認してから咲に近づく。
「大丈夫?」
答えが無い、そして咲の状態を確認しようと触れた瞬間咲は消える。そしてドーム上空からあの女の声が聞こえてくる
『お見事!最終戦は君の勝ちだ、じゃあヒントを教えるね。ヒントは[と]だよ!』
「今最後って言ったか!?」
『うん。そうだよ?君以外の子達が戦闘したおかげで君は大トリを飾れたんだ』
「え?じゃあヒントは[も]と[と]しか分からないの?」
軽く絶望している流を元気づけるようにヒントの件を説明する
『安心して、君のチームが勝ったヒントは全て教えてあげるよ。君たちが得たヒントは九個中七個![も][う][し][と][だ][い][と]この七つだよ』
流はその七つを聞いてすぐに答えが思い浮かぶ、当然『灯台下暗し』だろう。だが答えがわかったところで意味が分からない、何をすれば助言を受けられるのだろうか?このまま助言を受けるなんて事は絶対にないだろう。考え込んだところで女が新たなルールを流に教える
『じゃあ今から君が望む場所に転送しまーす!もうわかっているであろう答えが示す場所を言ってね!正解してなくても転送するけどその場合はどちらのチームにも助言はしないから』
急な重役を任された流は冷や汗が溢れ出してくる、そしてこれを間違えば全てパーになってしまうと思うと頭が真っ白になる。
固まっていると女が十秒のカウントダウンを始める、その声を聞いて流は正気を取り戻し思考を巡らせる。灯台下暗し、思い当たる場所を探る。最初に飛ばされた草原地帯の場所か?いやそれだと人によって答えが変わってしまう、そもそもそんな答えならヒントを集めずとも誰かがたまたま到達する可能性があるので不正解だろう。
ならば現在地か?いやそれも前の理由と同じでありえるわけがない、そう考えているうちにカウントダウンが五秒になる。
焦って今日起こったことを全て掘り返していく、すると一つだけ思い当たる場所がある。最初に説明を受けたところだ。あそこなら女もいるし灯台下暗しの意味も分からなくない、残り二秒。流はもうどうにでもなれと投げ出すように答える
「最初に説明を受けた場所だ!」
女はカウントダウンを止め地図をもらった場所かいと訊ねる。流は頷く、次の瞬間視界がぐらりと揺れた直後変動する。目の間には女がいてクラッカーを鳴らした、その部屋は説明を受けた時とは一変してまるで誰かの誕生日を祝うかのような装飾になっている
「せいかーい。最後は賭けたようだけど重要なのは結果だ、君は正解したんだ。おめでとう」
そう褒める女の後ろには大きな机で原が作る料理をムシャムシャと食べている中等部とエスケープチームのメンバーがいる。流は意味がわからず困惑して硬直している、すると礁蔽が近づいてきて流を褒め称える。そして飯がうまいから食えと椅子に連れていく、流は促されるままご飯を食べながら状況を説明してもらう。
「わいら負けたらここに転送されて飯食ったりしながら観戦してたんや、いやー原が作る飯が美味くてなー手が止まらないんや」
「そうでしょう、僕は來花さんが忙しくてご飯を作れない日に変わって作るほど料理がうまいですからね」
なぜ敵同士のはずなのにこんな仲良くしているのかを聞くと今日からある目的を果たすまで理事長と佐須魔が話し合い休戦しているらしい。まぁ今は空いているので食べようと思い口に運ぼうとした時怪我している事を思い出し視線を落とす、なんと傷はなかったことになっている。驚いていると女が「私が治した」と一言、流は感謝の言葉を述べながら飯にがっつく。
結構食べたところで女が口を開く
「じゃあお待ちかねの助言と行こうか」
全員が女の方を見る、だが女はすぐには助言に入らず前置きを置くと違う話を始める。
「まずこの世には三つの世界が存在している。君たちが暮らす[現世]、そしてここ[仮想世界]、最後に死んで行った魂達がたどり着く世界[黄泉の国]。この三つの世界も全て私が作った、でもほったらかしにしてたら魂とかが溢れかえって大変なことになっちゃうでしょ?だから私はある『存在』を作り出した。」
[マモリビト]
「それぞれの世界に一人だけ存在する魂や生物の情報を全て網羅している神とも受け取れる存在、そしてこの世界のマモリビトは私。現世の…いややっぱ秘密。そして黄泉の国のマモリビトは君たちの中にも声ぐらいなら聞いたことがある人がいるであろう男[エンマ]」
そう発した瞬間陽が立ち上がる、マモリビトはそれを鎮めて座らせてから話を続ける
「そして私たちは能力者を覚醒に導く事もできる、現にこの中にもエンマか私の声を聞いた奴がいるでしょう?」
「あー遠征の時に聞こえた声がお前で今日戦闘してる時に聞こえた声がエンマってやつか」
「そういうこと。それじゃあマモリビトの説明はいいかな、この話は言いふらしてもいいけどあまり信用してない人には話さない方がいいからね」
マモリビトの声を聞いたもの以外は話についていけていない、だが女は気にせず助言に戻る。
「それで助言の事だけどとりあえず中等部の子達は聴覚を停止させるね」
マモリビトが指を鳴らすと中等部のメンバーが全員驚き顔を見合わせる、どうやら本当に聞こえていないようだ。マモリビトはエスケープのメンバーしか聞こえなくなったところで口を開く
「君たちは[ニア・フェリエンツ]を起こしたいんだよね?」
当然全員が頷き次の言葉を今か今かと待つ、マモリビトは少し嬉しそうに次の言葉を口にする
「じゃあ助言を授けよう」
黄泉の国に行ってマモリビトに従いなさい、そうすれば上手くいく
それは耳から伝わってくるのではなく脳内に直接伝わってきた言葉だった。そして伝え終わると同時に中等部の子達の聴力が元に戻る。
「助言は口に出せない仕様にしてあるから安心してね。そんであいつには話を通しとくから」
助言を受けていない中等部メンバーは頭に?を浮かべている、だが今になって自分達ではニアを救う事はできないのだと確信し悔しさが込み上げてくる。
そしてマモリビトは好きに飯を食べろと言う、皆嫌な事や悔しさを忘れて楽しく食事をした。そして料理を完全に食べ終わったところでマモリビトは立ち上がる
「さて、やることも終わったしみんな帰ろうか」
そう言って佐須魔がよくやっているゲートを作り出す、ゲートはそれぞれが変えるべき場所に繋がっているらしくこれで安全に帰れるとの事だ。だが学園の生徒達は佐須魔が使っていたのを知っているので少し躊躇う、その不安を打ち消すために原が一番にゲートに入ることにした。
原はそれじゃあまたねと手を振りながらゲートに入って行く。すると何故だか安心して皆ゲートに対する恐怖感がなくなった。
まずエスケープのメンバーがマモリビトに別れの言葉を言い渡して入っていった。続いて中等部メンバーが入ろうとする、だが一人が動こうとしない。梓が声をかける
「どうしたの宗太郎。怖いの?」
「いや違う」
「じゃあ早く行こうよ」
「行かない」
梓はまた戯言を抜かしているのだと腕を掴み引っ張ろうとする、だが宗太郎は引き剥がしここに残ると自分の意思を表明する
「僕はここに残ってこのマモリビトってやつに訓練を受けてあいつを殺す」
梓が考え直せと言いかけたところで咲が梓を止め話し出す
「あいつと言うのは兄さんでしょう?別に残るのに文句は言いませんが兄さんには勝てないと思いますよ」
宗太郎がかっとなり胸ぐらを掴もうとするとマモリビトが止める。そして残っても問題はないから宗太郎を置いて帰りなさいと説得する、中等部メンバーはいつでも帰ってきてもいいと言いながらゲートに入って行った。全員が入って行くとゲートは消滅する。そしてマモリビトは紹介したいやつがいると言って宗太郎と共に歩き始めた。
流達エスケープと中等部は同じ場所に繋がっていた、そこは職員室だ。すぐに兆波と薫が駆け寄り話を聞く。そして十八時間近く帰ってこなかったと安心したように胸を撫で下ろす、だがおかしい流達はあっちの世界には六時間しか滞在していないのだ。そのことを聞くと薫が説明する
「俺もエンマから聞いた話なんだが仮想世界と黄泉の国は現世より時間の進みが三倍らしい」
そのことを聞いたエスケープのメンバーは黄泉の国に行くことが確定していたのでその事を頭に入れておかなくてはと思う。
そんな事さておき皆に何がったか話を聞くことにして休憩室に連れて行こうと廊下を歩いていると天井から一通の便箋が落下してくる。薫がその中身を見るとこう書いてあった
『明日迎えにいくから生徒会メンバーとエスケープの子達を朝七時までに学園に集めておいて!頼んだよ薫!』
薫はすぐにエンマからの物だと気付き兆波に生徒会の奴らを至急起こして事情を説明させるよう命じる。兆波は全速力で寮へ走り出した。
兆波を除いた人たちで休憩室に向かい何を行ったか一から夜通し説明することになった。
原はゲートを潜ると王座がある部屋に飛ばされた。そいて王座には佐須魔が座っている、そして自分の隣には金の長髪で体に色々な生物の頭や部位が着いている男が立ちながら佐須魔と会話していた。
佐須魔は会話をやめ原に話しかける
「どうだった」
「面白かったですよ、流君が記憶を取り戻しましたし。あとみんな料理をたくさん食べてくれて嬉しかったです」
「遅いと思ったら何をしてるんだか…まぁそれより流が記憶を取り戻したか。こりゃ明日から面白いことになりそうだな」
クスクスと気持ちの高揚を隠しきれないようだ、そしてある程度収まったところで佐須魔は金髪の男について触れる。
「そいつは客人だ。明日から世話になるから挨拶しておけ」
「はーい。[原 信次]です、よろしく
原が名乗ったので応えるように男も自己紹介をする
「僕は黄泉の国のマモリビト。こう呼んでくれ、[エンマ]と」
第七十四話「流し櫻」
被害
[軽傷,重傷者]完治
[死者]
[行方不明者]
第四章「別世界へと」 続く




