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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第四章「別世界へと」
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第七十三話

御伽学園戦闘病

第七十三話「力を示す時」


先手を取ったのは咲だ。速攻で近付き傘で突く、流はこれぐらいならと思っていたが想像を超える痛みが腹部に襲いかかる。なんと咲は一発で胃を傷つけたのだ。流は確信する、本気を出さないと九割九分負けると。

だがそれを口実に引いていては僅かな希望さえも逃してしまう、流は負けじとスペラを召喚する


『降霊術・唱・鳥』


そして二人で練習した技を見せる


妖術・旋甲(ようじゅつ・せんかん)


スペラは高速で咲をつついてから通り越し、そしてUターンをしてもう一回つつく。これを繰り返す、咲は避けようとするもののスペラの速度についてこれずされるがままだ。

そして痺れを切らした咲はスペラを無視して流本体に攻撃しようとする、だがスペラと流が見逃すわけもなく二つ目の技を放つ


妖術・ヶヶ(ようじゅつ・がが)


スペラは流の目の前に移動して体を大きく開き真上を向いて飛び立つ。咲はそのうちに流に傘を突き立て再び腹部に突こうとする、だが流は兆波や薫と日々行って来た訓練の成果こと凄まじい反射神経でその攻撃を交わした。

そして真上に飛んでいたスペラはピタリと止まり下を向いて急降下を始めた。

この攻撃は流が礁蔽達と合い初めて遭遇した霊、生徒会長の(カラス)がポチに行った攻撃を参考にして編み出した技だ。ただ違う点がある、それは霊力を最大限クチバシに込めるといったものだ。

咲はスペラが近づいて来ている事を知り冷静に傘を開きそのまま傘を差す。だがスペラならその程度貫く事が出来る、流は突っ込めと命じた。もう少しで突き破れそうになった瞬間咲の傘から炎の渦が巻き起こった。

スペラは当然火の車だ。


「戻れスペラ!」


スペラは従いすぐに流の体の中に還った。そしてスペラを急遽回復させる。

咲は傘を閉じず流に傘を向け力を込める、すると流に向かって火柱が発生する。流は一歩行動が遅れ避ける事が出来なかった。炎に巻かれ体が燃えていく、そして火柱が消える。

流は至る所に怪我をして服もボロボロになっているが立っている。そして反撃を行うため咲に向かって走り出した、咲はもう一度傘に力を込め火柱を発生させる。だが流は二度も同じ手はくらわない、横に避ける。咲は傘の向きを変え流にあてようとするが流は確実に近付きながらも全て華麗に交わし咲の目の前まで来た。


「私だってそれぐらい対応できますよ」


咲は傘を閉じる。流は咲に蹴りをくらわせようと足を動かす、だが咲は傘で足を受け止めた。流は間髪入れず追撃を行うが咲は全て受け流す、そして流は追撃の手を緩めるという一瞬の判断ミスを見逃さず咲は流の胸部を突いた。

突いた箇所は心臓、急激に圧迫された事により呼吸が乱れ心拍数も加速する。

息を整えさあ行こうと顔を上げた瞬間流は炎の渦に包まれる。声を上げなんとか耐えようとするが不可能だった。火が消えると同時に流は倒れる。


「こんなものですか」


思っていたより簡単に倒せてしまった流を見ていると二つの感情が込み上げてくる。今まで積み上げて来たものが一気に崩れる驚き、そして最後の家族だった兄さえも突き放してしまった悲しみ。だがその事を気にしている暇はない、さっさとヒントを得てニアを助ける為の助言を貰わなければ。



聞き覚えのある声だ。咲が求めて来ていた者、その人物の声が聞こえた。すぐにそちらを向くともの凄い霊力を放ち息を荒くして立ち上がっている流がいた、そしてその背後には守護霊がいる。咲は理解した、何故今まで求めて来た者が見つからなかったのか、それは当然だずっと流のそばにいたのだから。


「母…さん」


そう呟いた直後守護霊の気配は消える。流は己の顔面を殴り始めた、そして守護霊に言って聞かせる


「お前にも関係があった事かもしれない!こいつと関わりたいかもしれない!だけど今は僕とこいつの問題だ、終わった後ならいくらでも会わせてやる!だから、だから今だけは邪魔をするな!これは今まで僕が培って来た力を…妹に示す時なんだ!」


咲はずっと勝手に思い込んでいた事があった。それは佐須魔に殺されかけたにも関わらず優先して助けてくれた、なのに顔も合わせずそれどころか突き放した自分の事を兄は家族ではないと思っているのではないか。ずっとそう思い込んでいた、本当は自分だって流と話したかったし生活したかった、だが一年という短く長い期間離れ離れになってしまったが故どんな反応をされるのか怖くて会いにいく事が出来なかった。そして島に来て数日後兄が行方不明になりやっと最近見つかったのにまた会えなかった、もう流は自分の事を家族だなんて…だが流は違かった。消えていた記憶を取り戻して尚咲を家族として、妹として受け入れたんだ。


「咲…なんで…泣いてるんだ」


咲は涙を流していた。だが兄の質問は答えずこちら側から質問する


「やっぱ…兄さんって…呼んでも良い?」


流は目を見開き驚く、あれ程まで冷たい態度を取っていた咲が泣きながら兄と見ていいかと聞いてきたのだ。流は数秒固まった後答えを導き出す


「嫌だ」


「そう…だよ…」


「今は嫌だ」


「え?」


「だって仕方のない戦闘と言っても妹は傷つけたなくないだろ?咲」


そう言うことかと少し微笑み涙を拭う。そして再び力を込め二人は戦闘体制に入る、咲の行きますよと言う声と同時に戦闘は再開された。

この戦闘は兄妹での戦いではない。だが終わったら今までの話をじっくりと聞こう、二人はそう決めながら動き出した。



第七十三話「力を示す時」

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