第六十五話
2024 4/10 改変
2024 4/10 台詞名前消去
御伽学園戦闘病
第六十五話「作戦」
真浪は紫苑に向けて掌を見せる。紫苑が少し警戒しながら見てみると、掌に霊力が集中しているのが分かる。
ヤバいやつだと確信して横に逸れた、その直後寸前紫苑がいた位置に途轍もない量の霊力で構成されたビーム光線が放たれた。あまりの威力に青ざめ、攻撃を忘れて逃げる事に徹する。
真浪は蚊を潰す程度の感情で紫苑を追いかけた。だがリアトリスの力を借りたり、ご自慢の体術で避けたりと中々当たりそうに無い。
このままだと自信の霊力が無くなるのが先だと痺れを切らした真浪はビームを撃つのをやめ、紫苑との距離を詰める事にしが。紫苑は近付ければ何とかなると思っていたので嬉々として接近戦を受け入れた。
すぐに真浪が拳を振り上げる、紫苑は何か小細工がある場合を考慮し、使えなくなってもそこまで問題が無い左手で殴る。拳と拳がぶつかり合った瞬間紫苑の左手の骨はぐちゃぐちゃになった。そして仮説は骨と共に粉砕される
「まじか・・・てっきりビームを出すだけかと思ってたけどよ・・・」
「いいえ、私の能力は『機械化』です。首から下は全て霊力を帯びている機械、サイボーグみたいなものです」
「あー・・・こりゃ終わったかもしれねぇな・・・・・・まぁでも流と合流しようって言っちまったからからやるしかねえな!行くぞリアトリス!」
リアトリスが勢いよく飛び出す、即座に真浪へ蹴りをかました。だが機械の体故か微動だにしない。それどころか紫苑に向かって反撃の蹴り行った。
反撃が来るとは思ってもみなかったので回避できず、そのまま吹っ飛んで木にぶつかった。
衝撃で口を切り、血が少し垂れてきている。ひとまず息を整え血を拭き、前を向くとビームが飛んで来た。終わったかと思った寸前、リアトリスが引っ張り避けさせた。
おかげでかすった程度で済んだが、そのかすったところは肉が抉れている。この威力を直でくらったら確実に即死するだろう。
ただ紫苑は機動力では勝っているので、あししげく木が立ち並ぶ雨林地帯を活用すればどうにかなるかもしれないと思い付いた。
だがリアトリスの攻撃も無駄、物理戦では惨敗となると勝機が見当たらない。最悪の場合チョコを全て食べ霊力を数倍に膨れ上がらせて無理矢理突破するのも手だ。
だが現在何人、誰が生存しているのか、残り何回戦闘しなくてはいけないのかが分からない状態で切り札を使用するのはあまりにもリスキーなのだ。
そう考えている内に真浪が狙いを定め、ビームを撃ってくる。とりあえず作戦を考えつつ逃げることにした。
ビームは紫苑を追ういながら木を薙ぎ倒している、ただ走っているだけでは次第に限界が来るだろう。益々追い込まれている。
「いい事思いついた!」
紫苑がそう叫ぶと真浪は一瞬攻撃の手を止めた。ただ状況から推察してもろくな作戦は浮かばないだろうと結論が出た。何故なら木はたまたま残った数本、隠れられるような段差もない、上空にも何もない、霊の攻撃は効かない上に紫苑本体の攻撃も効かない、どう考えても八方塞がり、詰みなのだ。
構わずビームを撃とうと構えた。すると紫苑は避ける予備動作を見せず、それどころかリアトリスに攻撃するよう指示を出した。本当に作戦があるのかと驚きながらも策に嵌ってはまずいと思い、攻撃をやめて距離を取った。
「本当に作戦があるんですね」
「勿論だ。この勝負はもらった」
半信半疑だがもし本当に有効な作戦があった場合、不利になるのは自分だ。なので一旦『勝ち』を狙うのではなく『負けない』戦い方にチェンジした。具体的には大胆な攻撃はせず相手の隙を突いて地道に体力を削っていく。だがこの選択が戦況を狂わせるとは真浪は考えもしなかった。
紫苑は真浪が方向をシフトしたのを察し、攻めに攻める体勢を取った。即効で走り出しリアトリスに先に攻撃するよう命じる。
リアトリスは物凄いスピードで真浪との距離を詰め殴りかかった。だが真浪は霊力が籠っている機械の体でその攻撃を受けた。
ただ次の紫苑の攻撃まではかわせず、綺麗に機械ではない顔面に蹴りをくらった。弱点を突かれ、吹っ飛んでしまう。受け身を取る事は容易い。
蹴った本人である紫苑は何か違和感を感じた。訊ねる。
「一応本気で蹴ったのになんで血すら出てねえんだ」
「血が流れていませんからね。私の能力は機械化するだけではなく、特別な仕様を付与できます。ビームもその一つですね。
その能力を使用して心臓に血が回らなくとも生きれるように、脳が働けるようにするという仕様を与えたまでです」
「チートもいいところだな」
そう半分けなしながら、おだてる。だが動きは止めず、近付きながら追撃を入れた。リアトリスと協力してどんどん真浪を追い込んでいく。
何故急激に状況が逆転したのか理解できずされるがままである。そしてこのままでは負けるだけだと思い立ち『勝ち』を掴み取りに行く事にした。
蹴りで吹っ飛ばされた直後に紫苑に掌を向けながらビームを溜める、ただ先程と同じく突っ張ってくる予想とは裏腹に、全速力で逃げていく。
混乱する、策には何か条件でもあるのだろうか?と。となれば今は作戦が通用しない状態ということだ、ならばこの状態は手放さず相手が何を考えているかを特定するため再び『負けない』にシフトチェンジを行った。
その瞬間紫苑が大声で笑いながら、煽るような言葉を投げかける。
「勝ちを掴まず負けないを徹底するような奴に『勝利』は訪れない!結局は負けるんだ!俺の作戦に嵌って!一勝も出来ず!お荷物と化すんだ!」
今までの行動はブラフ、本当は作戦なんてなく啖呵を切っているだけだった。だが真浪はその事に気付けず、突拍子も無い謎行動に意識を引かれ、しっかりと思考を回す事ができなかった。
紫苑は唯一の勝ち筋、“賭け”に打ち勝って『勝利』を掴みに行ったのだ。
第六十五話「作戦」




