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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第一章「始まり」
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第六話

御伽学園戦闘病

第六話「深淵」


「蒿里さんが影に飲まれた!?」


「来たのは(カゲ)か」


「ひとまず落ち着いて集まろうではないか」


その言葉に従い四人が背中を合わせるように固まった。ラックは相手の体力が切れるのを待つしかないと、ニアは引き込まれそうになったら引きずり出すしかないですねと言って覚悟を決めた。とりあえず影の中に引き込まれたら終わり、街灯があるところまで移動するぞとゆっくりジリジリと歩き始める。流は皆と同じように背中を合わせ歩く。街灯まで辿り着くと少しだけ安心する。そして素戔嗚がラックに聞く


「ラックの能力でどこから来るのか分からないのか?」


「今回は持久戦になる可能性もある、流石に体力の消費が激しすぎて無理だ」


そう答え追撃が来ないかと警戒を強める、だが二分経っても追撃は来なかった。ラックはもしかしたら蒿里だけ持っていき地道に戦力を削ぎ落としていく気かも知れないと唇を噛みながら呟いた。素戔嗚はその可能性もあると言った後流に忠告を行う


「それだったら最悪だな…流は降霊術を使うなよ!まだ慣れていないうちは実践で使うと逆効果だ!」


だがその声への返答はなかった。まさかと思い流がいるはずの場所を見るとそこには誰もいなく流が立っていた地面は光すらも吸い込んでしまう程の真っ黒な影だった。

その様子を見たラックは舌打ちをしながら眼鏡を外して辺りを見渡す。だが異常はなかったらしく唸るだけだ


「影の中の血の流れは見えないのか…」


息を切らし始めたラックは眼鏡を再び装着した。素戔嗚は焦りながらラックに作戦を訊ねた、その瞬間ラックが声を上げる。ラックの方を見ると影に沈んでいる。なんとか引きずり出そうとしたが間に合わない、だがラックは何かに気付いたのか沈んでいく時に一つだけ言葉を残してくれた。


「逃げ場はない!灯台下暗しだ!」


そしてラックも引きずりこまれた。その言葉を聞いたニアと素戔嗚は考え始める。灯台下暗しとはどう言う意図で言ったのか、考えに考えた。だが答えは出てこない、ただニアの頭の中には一つの疑問が浮かんだ。


「皆さん何の影に沈んでいったんですか?」


「うぅむ分からん」


「ですよね」


「だが自分の影がない場所に行っても他の物の影があるだろうから我々に逃げ場は…」


その瞬間素戔嗚はラックの言葉を理解した。


「灯台下暗し…我ら個々の影から引き摺り込んでいると言う意味なのか…」


「逃げ場はないと言うのも私たちの影が存在する限りそこから引きずり込まれるから逃げ場はない、という意味かも!」


正に灯台下暗し、答えは身近すぎる場所にあったのだ。そして素戔嗚は勝利する方法を思い立つ、だがその作戦は賭けにも近いものだと前置きをしてからニアに敗北する覚悟はあるかと訊ねる。ニアは勿論ですと決意を固め頑張ってください絶対に負けないでくださいねと期待に塗れた応援をした。

素戔嗚は行って来ると言って刀を抜き自分の影に向かって突き刺した、するとやはりというべきか素戔嗚は影に引きずり込まれていく。ニアに待っていろと言葉を残し影の世界へ突入していった。



[蒿里視点]


下山し住宅街に差し掛かった瞬間視点が一気に落ちる。何が起こったと戸惑いながら視線を落とすと自分の影に体が沈んでおる。声を出そう としたが一足遅くもう口が影に包まれていた、音が出ない。飲み込まれた部分はもう体として機能していないようだ、次第に体全体が引きずり込まれ何も感じなくなった。

何秒経ったのかも分からない、目が見えない、暗闇の中で動くこともできない。まるでコンクリートの中に詰められているみたいだ。

次期に体が動くようになる、それだけではなく五感も取り戻した。周囲を見渡すとそこは何があるかも分からない真っ黒に染まった深淵だった。だが一つだけ色がある。それは紛れもない、人だ


「やっぱお前か!」


「そうです。安全に一人一人始末させてもらいますよ」


「あんたは始末される側よ!」


蒿里はその男に殴りかかろうとするがそいつは真っ黒な影に一瞬にして沈んでしまった。どこから出て来るのか最大限警戒しながら戦闘体勢に入ったがそれは無意味だった。

足を掴まれた感覚がしたので下を向いた瞬間後ろから「まず一人」と言う声と共にうなじに大きな衝撃が加わる。そして次第にまぶたが重くなりその場に倒れ込んだ。



[流視点]


背中合わせで街灯まできたは良いもののどうすれば勝てるのだろうか、影を無くすことなんてできないし勝てる気がしない。蒿里が引きずり込まれてしまった、もういっその事こいつらを殺して差し出せば僕だけは許されるんじゃないか、そんなことを考えた瞬間ひどい頭痛に襲われた。頭を抱え、目を閉じる。

すると痛みも、感覚も、何も感じなくなった。治ったのかと目を開けても視界はまっくらなままだった。それどころか動く事も出来ない。ルーズの時とは違う、筋肉の動きが完全に停止したように動かないのだ。

そのまま数秒経って体が動くようになったし目も見えるようになった。目を擦り前方を見てみるとそこには男とその横に倒れている蒿里がいた


「お前!蒿里に何をした!」


「何をしたって、気絶させただけですよ」


「気絶させただけって…!なんでこんな事を!」


「逃げ出したあなた達が悪い、あなた達のせいで会長の体はボロボロだ。本来ならお前らの事は後回しにするが兵助さんを見つけなくてはいけない、その為には君達が持っている情報が必要だ。だから襲っている、と言えば理解できるかな」


「待て!それなら…」


「油断していると死にますよ」


男は一瞬にして影に吸い込まれる。流はそれに対抗するように降霊術を唱える


『降霊術・面・鳥』


初陣で索敵とはこれいかに、と言った感じだが仕方がない事だろう。流は男の位置を特定するように指示を出。スズメは周囲を軽く飛びながら鳴く、流はなんとなくだが言葉を理解する事ができた。そして教えてくれた場所にパンチをする、その闇には感触はなかった、そう思うのも束の間腕が引きずり込まれていく。これはヤバいと思いスズメに還って来るよう言うとスズメは事を察して速攻で流の体に戻ってきた。


「そんなことをやったって無駄ですよ。」


そう言った男に苛立ち悪あがきでインストキラーを撃ってやろうと心の中で『死ね』と思いながら


『インストキラー』


と口に出すが何も起こらなかった。なぜ何も起こらないのだろうか、何か条件があるのだろうか。

いや今はそんなこと考えている場合では無い、どうにか抜け出そうとした時には既に手遅れ。体全体が徐々に影に飲まれる、飲まれてしまった部分は動かなくなる、そして完全に飲まれると目が眩み意識が朦朧になって即座に気を失った。



[ラック視点]


蒿里と流が連れ込まれ能力を使って体力も限界だ。どうにかして倒す方法を考えなくては、そう思った矢先体全体の筋肉の活動が停止した。迂闊だった、戦った事があるのに何故油断をしていたのだろう、いや戦って勝った事があるから油断していたのだ。次からは気を付けなくてはと思った直後に後ろから音がする。凄まじい反射能力でしゃがんで避けると頭上には長い足が飛び出てきていた。


「避けましたか」


息を切らしただ動こうとする、だが疲労と霊力の低下のせいで体が思うように動かない。(カゲ)は何も言わずに沈んだ。深く考えるつもりはない、ただ出てきたところを避けて反撃するだけだ。

数秒待つと右側の暗闇から足が出て来る。どうにか交わし反撃をしようとしたが足は一瞬にして暗闇へと沈んでいった。


「めんどくさいですね。もうシンプルに殴ります」


そう言って飛び出て殴り込んでくる。これは無理だ、避けられないと腹を括ったその時だった。(カゲ)の頭上から刀が現れそのまま(カゲ)の肩を突き刺した。(カゲ)はラックを置いてそちらを優先することにしたらしい。あいつがどうやら気付いた様だ、後はあいつに任せて体力を回復しよう



[素戔嗚視点]


予想は当たった。どんどんと影に引きずり込まれる、どれ程の力を使って引きずり込んでいるかは分からないが結構疲れているはずだ。なんせ三人と戦っている、そうして抵抗せず完全に影の中に引きずり込まれた。

感覚はない、動くこともできない、そして数秒して感覚が戻ると目の前には(カゲ)がいた。生徒会にいたやつだ、ただ弱点は知らない。奥には蒿里と流が倒れている、そしてその近くには立ったまま動かないラックもいる


「正解だな、ラックがやられる前に来れてよかったよ」


「何故そこまで…そろそろ諦めて身を引き渡したらどうですか」


男は影に沈んでいった。素戔嗚は黙って刀を構え出て来るのを待つ、数十秒沈黙が続いた、その刹那(カゲ)が後方から飛び出す。素戔嗚は長い髪をたなびかせながら振り向き言った。


「我々はお前らに縛られずに生きる。どうか理解してくれると嬉しいのだがな」


そう言って(カゲ)の首をかっ切ろうとしたがそれを制止する声が響き渡る。その方向を見てみると流が立ち上がりこちらに近付いてきた、何故殺してはいけないのかを聞いてみても「駄目だ!」としか言わず理由が分からなかった。


「こんなやつ殺せばいいだろう」


その言葉は異様な殺気に満ち溢れていた。流はその殺気に負けない程の声で「駄目だ!」と言う、最終的に素戔嗚は折れ刀を(さや)に納めた。次に素戔嗚は慣れた手つきで(カゲ)頸動脈(けいどうみゃく)を絞め気絶させる。それと同時に暗闇の世界は崩れ(カゲ)を含めた全員が地上へと押し戻される。

唐突に現れたメンバーに困惑しつつも(カゲ)が気絶しているのを見たニアは勝利したのだと確信し激励の言葉を素戔嗚に与えた。

ヘトヘトなラックが今日は林に戻って休もうと提案する、皆その提案に賛同し蒿里を担いで少し後方の林へと戻っていった。


「今日は私が見張りをしますので好きな様に寝てください」


「ありがとう。何かあれば起こしてくれ、我はまだ体力が余っているからな」


「わかりました」


林の最奥、一般人は気付かない場所まで移動したラックは死ぬ様に寝てしまった。続いて流も就寝し蒿里を降ろした素戔嗚はニアに「おやすみ」と言って五秒も立たぬ間に眠りについた。


「おやすみなさい、お疲れ様です」


その声を聞く者は誰一人としていない。ただ木には二羽のカラスが止まりニアの事を凝視していた



九十字(クウジュウジ) 紫苑(シオン)

能力/バックラー

霊を出し攻撃する

強さ/連携すると生徒会中堅程度


第六話「深淵」

2023 4/11 改変

2023 5/23 台詞名前消去

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