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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
551/556

第五百六十話

御伽学園戦闘病

第五百六十話「決着」


月花、それは花月とは全く違う力。内包されており、名前も似ているので大体の人物はそれが何らかの攻撃手段なのだと信じていた。

実際それは間違っていないし、何なら薫が出せる瞬間火力で言えばトップレベルなのだ。ただその全てを差し置く特殊な性能がある。それは距離無制限。

文字通りどこからでも放つ事が出来る。二十四時間以内に対象に触れていれば、だが。そして今日この時、条件は満たされている。充分な火力と不意を突く一撃。


「決まりだな」


ルーズは勝ちを確信しながらも距離を詰め、能力を使う。


『右腕の硬化』


一瞬にして右腕がガッチガチに硬くなった。黄泉の国で積んだ鍛練は非常に単純なもので、沢山の強者と戦うだけのもの。鍛えるべきは単純なフィジカルと霊力量だけ。そして霊力はそもそも呼び戻される時点でそれなりに成長しているし、投入するのが後半なのは大体想像出来ていたのでそこまで問題は無い。

足りないフィジカルを埋めるにはただひたすらに戦闘を繰り返す事だと、エンマが告げたその日から沢山の相手をした。そこで培った大きな力の一つ。


「発動帯の破壊、それは今俺の手によって完遂される」


突き立て、喉に突き刺す。


「良い成長だ、ルーズ。甲斐があったな」


背後からはラックが突き刺す、少しずらして。万が一にでも壊せていなかった場合の保険だ。ただ二本も刺したのでもう完全に壊れたはずだ。

後は一般人を叩き潰すだけ。そう思われた、思われていただけ。


「僕は神だぞ!!」


前方に立っているルーズを殴り飛ばす。流石に対処が間に合わなかったが降りて来た時点で強化していたのでそこまでの問題は無い。それより問題なのは後方のラックだ。

殴った後に回し蹴りを行い、顔面に直撃した。その衝撃で腕が千切れるかと思ったが何とか踏ん張れた。ただし間近で隙を晒した事言になる。


「だけどお前に俺を殺す術は…」


「無かったらこんな事してないだろ!」


『壱式-壱条.筅』


「まだ壊れてっ…」


ラックを取り囲む。避けられない、このままでは。


「悪いけどここで死んだら困るんだよ!こっちもよ!」


紫苑が跳び蹴りをかまして佐須魔からの攻撃を一瞬止める。その間に黒龍がラックの元に突撃する。当然二本の剣で防御する事でダメージは全く無い。ただ筅は置いて行かれ、何も無い場所で回転する。


「助かった!」


すぐに戻り、仕掛ける。


「退いとけよ紫苑!」


掲げる。


「brilliant」


光が満ちる。今の佐須魔には避ける余裕すらないのだ。これは大きなチャンスになる。


「馬鹿だろ、お前ら」


半笑いでそう言った。

攻撃を仕掛けるため近付いたその時、別の三方向からそれぞれ紫苑、蒿里、ルーズが飛び出してきたのだ。brilliantを無効化出来るのは精々ルーズだけ。それなのに躊躇せずに突っ込んで来たその精神力、面白い。

四人の攻撃が炸裂する。佐須魔は紫苑の方だけ防ぐ事にしたが、反体力ではない三人も馬鹿にならない物で、光が抜けると同時に足をついてしまう。

こうなったら立ち上がるのには少し力がいるし、多分立たせてくれない。


「それなら、こうするよ」


『肆式-弐条…』


両盡耿。もうそこまで回復しているのかと驚く間もなく、対処される。


『呪・封』


「させない!!」


蒿里が止めた。防がれていない。今の佐須魔は霊力に関する事が何もできない一般人だ。


「これで!!」


ラックが剣を振り上げた。他の三人も同じ様に攻撃を行おうとしたその時、佐須魔の姿が消える。というよりも一瞬にして移動する。ラックの眼前。

歪んだ笑顔のまま喉元に触れる。


「やばっ…」


間に合わない。

ただ、一人を除いて。


「触らぬ神に祟りなし、とは言うけど…お前の場合は逆だよ、佐須魔」


横から介入するようにして喉に触れる手。兵助の手。

全員の思考が止まった。何故付いて来れたのか、この高速戦闘に。


「壊すよ、タルベ」


それはエスケープ戦の少し前、エリを呼び出して三人で話した時だ。エリに対して聞いたのは突然変異体(アーツ・ガイル)に関して。ならば何故そんな事を訊いたのか、そんなの一つしかないだろう。



「兵助はタルベの魂を取り込んだ。間に合わないと言われたが間に合わせた。大きな代償を払って」


「私だって言わなくても分かるさ」


「…結果として手に入れたのは真反対の力だった。全てが足りなかった。身体能力、経験、精神力。思いもしなかったんだ、あいつが決める何て。俺も、他の誰も」


「だが決めるじゃないか。私達の助けを借りた末に」


「なぁサーニャ、俺はやっぱり、渡すべきだったかな」


「…雑談は後にしよう。最期何だ、見てやれ」


「見たくない…」


「だが…」


「それでも、見なくちゃな…」


こんな事になるなんて分からなかったのだ。だから逃がしてしまった。あの時殺しておけば、こんな物騒な言葉だけが支配する時期もあった。

だがそんな原因もこれで解消される。これで終わる。これでようやく。そう思うと色々な感情を織り交ぜた涙が出てくる。懺悔、後悔、期待、感動、杞憂、歓喜、他様々な感情を交ぜて。



「正解だったよ、寿命売ってさ」


「寿命…」


佐須魔は腑抜けた声で口にした。


「僕の新たな能力。全てを治す力から全てを壊す力。気分はどうだい、堕ちた神」


触れる事によって作動する。破壊。最強の破壊に属する。

どれだけ壊しても回復するのだ、こうするのが最善策且つたった一つの突破口なのだろう。


「ようやくにして終わりか、百二十年の歴史も」


決着は、もう付く。


「やめろ!!」


事の重大さに気付いた佐須魔が抵抗しようとするが誰よりも早く蒿里が動き、背後から腕を回し拘束した。


「もう良いでしょ!これ以上やったって無駄なの!」


「良くない!!良くない!!」


子供のように暴れ回るが無意味。首元が崩壊していき、息をするのも辛くなって来る。


「いい加減、私を自由にしてよ!!」


その言葉を受けた佐須魔は一瞬だけ動きを止めた。

もう終わりだ。喉元は完全破壊され、後は全てを壊すだけ。


「終わりだ」


両手を使って加速させる。痛みは無いのだが、消失感だけが残る。

崩壊していく佐須魔を見て誰もが心を痛めた。眼のせいだ。まるで悪人とは、今までの戦闘病患者とは思えない眼をしていた。だがもう無理だ。


「どうかもう静かに消滅してくれよ。佐須魔」


蒿里も掴む物が無くなり、その場にへたり込んだ。実感が無かった、そこにいる誰もが。

ただもうこの世に華方 佐須魔の霊力は無い。

死んだのだ。神を名乗った一人の能力者は。



第五百六十話「決着」

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