表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
550/556

第五百五十九話

御伽学園戦闘病

第五百五十九話「廻天」


「僕が触れれば僕の勝ち。行くよ、皆」


兵助が動き出す。

佐須魔に向かって突っ込むと同時にラックもbrilliantと菫を手にして走り出した。

言葉通り兵助は触れる事さえ出来れば勝ちだと思っている。そしてそれは三人だけが理解出来ている、薫とエリとラックの三人だ。

蒿里と紫苑も足止めし大きな隙を作る事だけに注力する。


「紫苑合わせて!」


無詠唱で黒龍を出す。龍神に昇華したそいつに変化は無かった、霊力だけが増長し尋常じゃない量となっている事以外。

黒龍は指示を待たずに佐須魔に突撃する。それは正解だ、蒿里が思い描いていた姿だ。


「行くぞお前ら」


ガーベラとケルベロスを連れて黒龍にピッタリくっつく。恐らく佐須魔は何か対処してくるのでそこを突く、出来るはずだ、三人ならば。

だが佐須魔は動かなかった。へたり込んだまま、何とか顔を上げようとするがうな垂れる、その繰り返し。連戦と急激な損傷によって体が思う様に動かない。

それでも一箇所だけなら動かす事は出来る。腕、跳ね除けるようにして振り上げた。その平手打ちは黒龍の顔面にぶつかったが大した威力を持っておらず、止めうる力ではない故に吹っ飛ばされた。


「ばっか野郎!」


突っ込んだ先は兵助の元、触れれば良いと考えていたからだ。だが限度がある、その速度だと兵助もダメージを受ける。なのでラックが前に出て二本の剣を顔の前で構え、防御の姿勢を取った。

甲高い音と共に減速し始める。佐須魔は苦しそうにしながらも何とか復活している。


「バケモンが…!」


あまりに早い回復に呆れて来る。

タイムリミットは精々三分程度、モタモタした時点で負けだ。


「放せ黒龍!」


紫苑の命令によって放す。放り出された佐須魔は紫苑とガーベラの蹴り、ラックの斬撃を向けられた。だが少し浮いているので簡単に避ける事は出来ない。

霊力はあるにはあるが身体強化に全振りしないと耐えられない威力だろう。それは愚考だ、何かミスが発生するか、佐須魔の体に異変が起こる賭けをした方が将来性がある。


「分かるか…流石に……」


三人の体が磁石に引っ張られるように、勝手に移動した。何が起こったか分からずすぐに攻撃をしようとした直後、佐須魔が(ラキエル)を手にする。


「何が起こった?」


「俺も分かんねぇよ……いや、これ…」


足元見て気付く、三人が移動したのではなくそれに接触している物を使って無理矢理移動させたのだ。となれば誰がやったのかはすぐに分かる。

少し遠方、ずっと機を窺っていた犬。


「ポメか」


「きゃん!」


もう隠れるのは無理なので飛び出しラックの頭に乗る。


「…まぁ確かにあの距離感で攻撃してたら(ラキエル)に斬られてたな。一撃じゃ止められない体力だもんな、サンキュー」


出来るのなら今の攻撃で終わらせたかったが回復速度的にそれは不可能。先程の集中砲火よりもボロボロにしないといけないので慎重に重い攻撃を叩き込んでいくべきなのだ。そんな状況で紫苑ラックがいなくなったら一巻の終わり、悪く無い安全思考である。

だが佐須魔に武具が渡ったのも事実。

まだ欠損部位を治す程にはなっていないが故にたた突っ立っているのは厳しそうだが、動き出したら止まらない事ぐらい予想出来る。どこでどう動き出すか、神経をすり減らす戦いだ。


『降霊術・神話霊・アヌビス』


その声に反応する。すぐさま止めるべくして近くの敵をすり抜けようとする。

ケルベロスの反応速度じゃ間に合わない。龍神も駄目だ。無防備。


「そんな馬鹿な行動する訳ないじゃん、私が」


近付いた佐須魔は(ラキエル)をスイングする。だがその攻撃は止められた、両腕を使って全力で。


「悪い!遅れた!」


ルーズ・フェリエンツ。奉霊の処理に少し時間がかかってしまったが問題なくやって来た。しかも遅れるならば最高のタイミングで。

思い切り(ラキエル)を跳ね除け、飛ばす。無防備状態を狙い無防備になってしまった佐須魔の元に二人の影。


「六年だと流石にっ、速すぎるなっ!!」


両者アーリアの能力を使って距離を詰めた。そして仕掛ける。佐須魔は前後どちらもの攻撃を止めなくてはならないのだが、片方しか対処出来ない。そして両方とも止めなくてはいけないレベルの攻撃だ。

出て来たアヌビスと滅茶苦茶に強くなっているルーズ、ラックと紫苑。どちらを選ぶか、出した答えは前方、蒿里とルーズだ。背後からの攻撃は甘んじて受け入れると決めたのだ。


「どっちも不正解だよ、馬鹿が」


ラックは二つの剣を振り下ろす。流石にbrilliantの力を使う訳にはいかないので六年の身体強化を利用した斬撃だ。紫苑は付いてきたガーベラと共に攻撃する。

そう、同時に、重なる様に、同じ様に。そこで気付く、真に防ぐは後方だったと。振り向いたその瞬間、満たされるはケルベロスの口。二人を飛び越す様にして突っ込んで来たそいつを弾く術は無く、防ぐしか出来ない。

巨体にのしかかられて動けない所を二人が攻撃する。


「行くぞガーベラ!」


発生する反体力、そもそも一番最初に放ったのは躑躅とメルシーだ。それならば紫苑とガーベラの二人でも同じ事は出来るはずだ、絶対に。

信用して正解だった。その力は佐須魔に特効を持っており、凄まじい痛みと衝撃を与える事となった。ケルベロスも一旦離れるが必要無かったかもしれない。

口と鼻、目からも血を流しながら今にも倒れそうになっている。始まりかけていた欠損部位の修復も中断され惨めな姿のまま、晒されている。


『導こう』


アヌビスが口を開く。神話霊で喋るのは極極稀、だが誰も動揺しなかった。そんなのどうでも良い。それより目の前にいる宿敵を潰せる時が来たのだと、ただワクワクしているのだ。

そしてアヌビスが力を使うと同時に佐須魔はもっと血を吐く。その小さな体からは考えられない量を吐き出す。だが構わず紫苑は二回目の反体力パンチを叩き込もうとした。

いけなかった。追い込まれているのだ、全てを出すに決まっているだろう。


《助けろ!!!》


飛び出す式神。これで何とかなる、そんな淡い期待は打ち砕かれる。

それは一人の女の遠距離攻撃による物だ。今にも聞こえてきそうな一言。


『解放・紫電』


本人の戦闘及び礁蔽の僅かな攻撃によって溜められた霊電を今、解放する。紫電という最高の形で。

式神は破壊される。どこを攻撃したのか、一箇所しか無いだろう、喉元、発動帯だ。精確な狙いと素晴らしいダメージ、佐須魔の発動帯は再度傷付けられた。

破壊されたのだ、式神術が。最奥に眠り、一番大切にしていた部位が。

まだ残っている、霊力生成は出来る。だが、残っている能力は無いに等しい。保険として移しておいた身体強化一人分、そして術式が数個、それしか残っていない。

そして術式を放つ程の霊力は残っていない。

終わりだ、何もかも。



「佐須魔、ごめんな」


隙を与えず、放つ。


『月花』


紫電に続く遠距離攻撃。完全に破壊するのだ、能力発動帯を。



第五百五十九話「廻天」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ