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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第五百五十三話

御伽学園戦闘病

第五百五十三話「旧、神格」


『おーい、目開けて~』


エンマの声が聞こえる。目を開けるとそこはやはり白い世界だった。

元々これも作戦の内だったので焦らない。流はまだ死んでいないので喋る事は出来ないが脳内で喋れば伝わるので問題は無いはずだ。

早速エンマが話しを始める。


『まぁラックから言われてたから良いんだけど…一体何したいの?』


(母さんだ)


『あ~、守護霊を普通の霊にして欲しい…って願い?』


(そんな所)


『いや~それ僕じゃ出来ないんだよね~。というか出来てるならレイチェルも普通の霊にしてるしね』


(そうか…まぁ無茶ではあるのか……)


『…でもちょっとだけ協力する事は出来るよ』


(ほんと!?)


『うん。具体的には対話させてあげられる。この空間にいる間、精々五分ぐらいだろうけどね。櫻 京香と話せるようにしてあげるよ』


流も乗り気なようなので早速準備しようと心臓の辺りに手を当てた。その瞬間、エンマが弾かれるようにして後退する。当人も驚いているようで理解が追いついていなかった。

どうやら初めての現象らしく、対処法が分からないらしい。だが京香からの拒絶に近しい反応だとは分かるらしく唸っている。


(大丈夫?)


『大丈夫、怪我とかそういうのは一切無いんだけど…静電気っぽい攻撃?みたいなのくらっただけだよ。流石女王様って所だね、僕にも抵抗してくるか』


(無理そう?)


『いや、多分これは僕を拒否してるんじゃなくてマモリビトとしての僕を拒否してるだけだと思うよ。何かしらの理由があるんだろうね。でも干渉出来ない事に違いは無い……』


(どうしよう……母さんと話さなきゃ出来ないのに…)


『何しようとしてるの?』


(大会前に咲が教えてくれたんだ。北海道、あの家がある場所に行ったらしい。それで裏山、あの見えない結界張られてる場所あるでしょ?謎の封印してある祠みたいな場所)


『あったね』


(あれの調査をしてくれたらしいんだ。それで分かった事があって、あれは地獄の扉と似てる物、何故か砕胡と(シン)の霊力が放出されているって)


『まぁ一個目に関しては君が触れた時に僕と初代が干渉出来たからね、分かってただろうけど』


(うん。でも二個目は知らなかっただろ?)


『初耳、そこまで現世の情報追えてないしね』


(それで僕思ったんだ、あれって砕胡と(シン)を繋ぎとめてる物何じゃないかって。確かあの二人って妊娠中の母子みたいな感じで砕胡が摂取した栄養が流れて行くんでしょ?でもそれって普通の状態で出来る事じゃない、何かしらのチューブ的な繋がりが必要だと思ったんだ)


『それで…あれがその仲介役というか、受け渡しを担ってたって言いたいのかい?』


(うん。來花が砕胡をあんな風にした頃はまだ母さんも生きてたし、TISについては何とも思ってなかったはずだから協力してくれててもおかしくはないかなって)


『まぁ、恐らくその予測は間違ってないと思うよ。だけどそれが一体何に繋がるんだい?』


(ちょっとだけ逸れるんだ。正直あの岩に関してはそれ以上の情報が無いから追及しようがないしね。問題はあの結界だよ。シウが作ったものなら生前に教えてくれるだろうから違う。そして來花や今まで生きていた誰かが作った物なら絶対に佐須魔はその技術を知ってる。そしてシウの結界に覆い被さるようにして無効化させる結界ぐらい作るはずだ)


『でもしていない。即ち』


(製作者は死んでいる、又は忘れている)


『そこで君は絞った訳か。自分か、母親か、妹かに』


(良く分かるね。それで咲も知っているなら教えてくれたはずだ、有効活用できるからね。でもそれをしなかったって事は多分…母さんが作ったんだと思う)


『まぁ当時の君達の技術力じゃ無理だろうしね』


(僕思うんだ、結界を知れれば佐須魔を制す事が出来るって)


『うーん…無理じゃない?単純に力の差があり過ぎてさ、結界だけじゃどうしようもない気がする』


(出来るよ。ねぇエンマ、僕の霊力が急激に増えた理由、知ってる?)


流は一度学園から離れ、次顔を出した時には異常なまでに強くなっていた。フィジカルが化物に成長していたので霊力増加に関しては誰も追及しなかった、來花と京香の息子だと判明したのだから尚更。

だが少し冷静になればおかしい。少し前まで総量100もあるか分からない様な奴が500近く溜め込めるはずがない。仮に何かから取り込んだとしても体が限界を迎えて蒼の様にヒビが入るはずだ。


『いや…単純に政治とかパワーバランスの調整とかで忙しくて見てなかったけど……普通に強くなっただけじゃないの?霊力って増えるし』


(違う、確かに霊力は鍛えれば増えるけど年単位で時間を要する、当時の僕は数週間で付いた)


エンマは少し考え、閃く。


『あっ!霊だ』


(正解。完全に姿を眩ませてる期間、僕はずっと探し回ってた。一匹でも協力してくれるかもしれないって思って。生きてるかも分からないのに)


『大体分かった。それなら結界さえあれば何とかなるね、結界さえあれば』


(うん。シウのでも良いけど少し性質が違うからね。使えなくは無いんだろうけど、そっちの方が慣れてるはずだから)


『何とかして情報を引き出せないかな…そうだ、降霊しようよ』


(僕もそれ良い案だと思ったけど…昔みたいに暴走したらどうしようかって思ってさ……潜入の時は何とかなったけど、なんかエンマの事嫌ってるっぽいし)


『僕を誰だと思ってるんだい。ほら、見てみなよ』


少し遠方を指差す。そちらを見ると傷と血だらけで気絶している佐嘉の姿があった。


(…え?何で倒れて…)


『こっちの話さ。でも全力で挑んで来た佐嘉を一瞬でボコボコにするぐらいの力はある。信用してくれよ、僕は黄泉のマモリビトだよ』


(それもそうだね。じゃあ降ろすよ、よろしく)


『うん。どうぞ』


流の雰囲気がガラッと変わる。どうやら降霊したようだ。

だが暴走の気配などは一切無く、潜入時の尖りも見えない。そこまで所作が変わっている訳でも無い。ただ感覚として理解した。今目の前にいるのは櫻 京香だ。


「やぁ」


「全部聞いてた。エンマ的にはどう?」


「教えてあげた方が良いよ。というか何で僕を拒絶するの?」


「この子達が怯えるから…」


そう言いながら首元を撫でた。


「そっか。それなら仕方無いね。それで本題、どうやって結界を作るんだい?」


「作れないよ、"もう"」


「…"もう"?」


「簡単な話。あれはこの子達の力を借りて作った物、だけど今の主は私じゃなくて流。もう作れない。これは本人にあ言わないで上げて欲しいんだけど、妖術の才能無いから。しかも私自作の妖術となるとね…」


「それもそうだよね、強いもん、君。じゃあ何て伝えてあげれば良いと思う?」


「普通に結界は作れないってだけ言ってあげて」


「オッケー」


「後もう一つ頼める?」


「勿論」


「霊力全部使って良いよって」


「うん、了解」


「それじゃあ戻るから。さようなら」


「はい、さようなら」


次の瞬間には元の流の雰囲気に戻っていた。エンマは全て教える、才能が無いという部分だけを端折って。


(覚えられないのか……仕方無いね、仕方無い。それじゃあ僕は行くよ。分かっただけでも充分だし、暴走しないのならそれなりに戦える)


『うん。じゃあ戻すね、行ってらっしゃい』


エンマの笑みを最後に流は目を閉じた。



現世では雨竜とサンタマリアがひたすら砲撃し、ラックがbrilliantで時間を稼いでいた。佐須魔は(ラキエル)や術式を使って対抗しており、見事に拮抗状態だった。

だがラックは少し息が上がっているし、所々重めの怪我貰っている。そこまで支障は無いように思えるがこの為に霊力を惜しみなく使っているのでこれからの戦闘では少し省エネ気味に行くしかないだろう。


「…ごめんラック、もう大丈夫」


立ち上がる。


「あぁ、分かった」


ラックは離れ、体力で最低限の回復を行いながらも状況をまとめ、戦略を練っている。一方流は前に出る。蒿里の助けも借りる気は無いし、紫苑にも手は付けさせない。いや正確には付けられない。これ以上の量で押し切ろうとすると単純に邪魔に成り得るからである。

スペラを出す。


「さぁ、お披露目だ」


降霊術の詠唱、それは当の霊達に伝われば基本問題は無いのだ。なのである一定の信頼や両方の物分かりが良いのならば、まとめて呼び出す事も可能である。

流はそれが出来る。この四匹に関しては。


『降霊術・唱・神格』


たった一人、ずっと同じだった初代ロッドを除く四匹。皆が京香を失ってから減退し、弱くなっていた。だが流の中で感覚を取り戻し、舞い上がった。

大会が始まってすぐの神格五匹は人神、鳥神、犬神、猫神、狐神だった。そこから狐が死に、取って代わって蟲神が生まれる。

そこからは一気に展開が進んだので佐須魔は確認出来ていなかった。空いた犬神と人神の席は所有している霊が座っているとばかり信じ込んでいたのだ。

だが実際にはそうは行かなかった。佐須魔の蟲神と猫神、蒿里の鳥神の地位は変動しなかったが空き枠に捻じ込まれたのはとある二匹である。


「頑張ろう、旧神格」


旧鳥神、旧蟲神、狐神、魚神。

同種族がいない二匹は昇格している。ただ他二匹もそれ相応の力を持っている。


「マジかよ、お前ら」


取り逃がした四匹がこうも邪魔になるとは思いもよらなかった。

四匹とスペラ、そして流による反撃。

佐須魔は出さざるを得なかった。


「来い、お前ら」


蟲神は既に出ている。そして言い草的に二匹以上、そう理解すると同時に二匹の霊が飛び出してくる。

猫神とシヴァ。

流は口角を上げ喜んだ。


「僕の勝ちだ、佐須魔」


最後の綱渡り。ここで式神を出されたら負けだったがそうはならなかった。故に、流の勝ちである。


『降霊』



第五百五十三話「旧、神格」

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