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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第五百二十八話

御伽学園戦闘病

第五百二十八話「亡者の再臨」


「にしてもだな…当時の俺が予想できたかな、同じ様な思想を持つ奴らを殺すなんてな。どう思う?……答えろよ、そこにいる事ぐらい分かってんだぜ?」


次の瞬間足元が崩れる。大きな揺れと同時に地面が割れ、龍の口が姿を現した。当然ラックを喰おうしているのだ。だがそんなの通用しない。


「それぐらい好戦的な方がこっちとしてもありがたい」


冷静に跳び上がり、サイズを測る。目測ではあるが相当な大きさがある、全長50m程はあるだろう。そして口も結構デカいのですぐに飲み込まれてしまいそうだ。ただそこは適当に対処出来る。


『妖術・上反射』


既に人ではないので降霊無しでも妖術が使用可能だ。たった一枚の壁だがラックとなると何か策があると考えざるを得ない。故に攻撃が出来なくなった。

災厄は人の姿に戻って地面に立つ。それに応じるようにしてラックも地に足を着けた。


「よお、まぁ多分お前は俺じゃなく次のマモリビトが殺すべきなんだろうが……ご生憎様次のマモリビトには能力ってもんが無い可能性もあるんでな。ここで俺が殺す。ダブルキルだ」


「舐められたものだね、僕だってそんじゃそこらの雑魚とは一線を画す実力を持った"天才"だ。そう易々と殺されてちゃたまらないよ」


「前回は狐、前々回は鳥、それ以前を遡っても動物だけ。ここに来てニンゲンって言う能力戦で最上位の生物の姿を習得して来たって事は…まぁ、そう言う事なんだろうな」


「そうなんだろうね、僕も自分自身でそう思う。故に判明する、ニンゲンと災厄(ぼく)の格の差が」


「そうだと良いな。んでお前は何が出来んだよ、ニンゲン様にへりくだって、寝首でも掻こうってか?」


馬鹿にするような笑みを浮かべる。


「半分正解。寝首は掻かないけど、首は掻っ切らせてもらう」


一瞬にして距離を詰める。その手には短剣が握られていた。それには見覚えがある。


「ほんっと最悪だな、お前」


厳が人術で作り出した短剣、記憶を封じ込める事が出来る、現代へのボトルメール。それは武具として扱うにはあまりにも貧相で、力が足りない物品だった。

この現代で通用する武具でもない。そもそもがギアルで作られていないのだから。それなのに使う、それ即ち見せつけたいのだろう。災厄(こいつ)が考えたのか、佐須魔の差し金かは分からないがとにかくクソみたいなやり方だ。ただし乗せられることは無い、そこまで感情は動かない。何故なら厳はラックの魂に刻まれている、物理的に。


「言っておくけどな、俺だって別に優しい訳じゃねぇぞ」


すぐさま取り出したのは一本の剣、燦然、brilliantだ。短剣と効果以外は普通の剣、単純に格闘したとしてどちらが勝つかは明白。普通に考えてここは後退し、一旦別のやり口で追い詰めるべきだ。

それなのに災厄は思い切り剣を振り下ろす。物凄い勢いとパワーだ。あまりにも不格好な剣術ではあるがそこはやはり災厄の最高傑作と言うべきだろうか、それなりに戦えている。

だがラックはまだ本気を出していないし、適当にあしらっているだけだ。いつでも大きめの反撃を叩き込めるレベルには未熟だ。


「甘すぎだろ」


それがフェイクではなく、本当の実力なのだと気付いた瞬間斬りかかる。その速度や凄まじく、災厄は認識さえ出来たものの回避も防御も出来ず斬られる。相当な痛みと高揚感を覚える。


「やっぱり、土俵に上がるのは無理だね」


笑いながら言い残し、距離を取る。互いに距離が出来たので次の行動を考える。だが互いに良い案が浮かばない、両者未知数なのだ。正直ぶつかり合いながら何処かで弱点を探り出し、突く。これを繰り返すしか方法は無いよに思える。

ならばと踏み込んだ。当然、同時に。


「突っ込んで来るかよ、バカが」


「どっちもどっち、だろ?」


両者の剣が勢いよく弾き合う。甲高い音を夜空に響かせながらヒートアップしていく。もう一般人では見れない速度にまでぶち上がった。

だがそこまで行くと如実に差が現れる。ラックがドンドン押しており、災厄は後手に回るどころかまともに攻撃すら出来ず防御一色という所だ。

その時点でもう剣での戦いはやめるべきなのだが、災厄はそんな事をしない。何故なら自分は何でも出来る天才だと思い込んでいるから。現実は無残だが。


「いい加減やめたらどうだ、無駄だぜ」


「やめないよ。僕はお前より強いから、これでも勝てる」


「雑なんだよ、全部が。体の動かし方も、力の入れ方も、視線の動かし方も、思考も。何年戦って来てると思ってんだ、雑魚が」


「僕だって最古から記憶を受け継いでいるんだ、普通ならこれぐらい巻き返せる。この剣のリーチが悪いよ」


「そうだな、確かにリーチでは不利だ。だがそれを選んだのはお前だし、そんな姑息なやり方で俺にデバフをかけられると思ってる時点で勝ち目は無いって言いてぇんだよ、ちょっとは頭使えよ」


「意識しなくても勝手に働くよ、それともお前は…」


「それでその程度何だな」


嫌味などではない、単なる感想。それが伝わるからこそ災厄の逆鱗に触れる。

次の瞬間災厄の速度が上がる。怒りでの力が増幅したのか、元々手加減気味だったのかはどうでも良いが問題はその速度にある。先程と二倍近い差があるのだ。

それはどちらの考察でもおかしい。こいつはやはりニンゲンではない何か、全ての基準が違うようだ。ただそれを知れただけで充分過ぎる。


「さぁ、リセットだ」


剣に霊力を籠め、口にする。


「brilliant」


光が満ちる。先代が二度ももろにくらっているので耐性は付いている、それでも多少は痛い。だがほとんど影響は無いぐらいに抑えられている。これなら光がある間に位置を変え、攻撃さえ出来るだろう。

そう思い気色の悪い笑みを浮かべながら移動しようとしたその時だった。背後に殺意を感じた直後、右腕が飛ぶ。


「リセットとは言ったけどよ、別に動くぜ?俺は」


すぐに短剣を投げ付け時間を稼ぐ。この光がある間は何とかなるので逃げ出そうとする。

だが直後光が晴れる。


「両盡耿と違って解除しようと思えば瞬時に出来るんだよ。知らないだろうな、今まで使って来なかったから」


距離を詰め、斬りかかる。武器が無い災厄は生身で対抗するしかない。半端な能力者相手ならそれでも何とかなるだろうが相手はラック・ツルユ。絶対に無理だ。

急遽変形する。龍になって飛び上がった。ラックは追えない事は無いのだが非常に分が悪いし、引きずり降ろす手ぐらいあるから無理はしなくて良いので地面のままだ。


「馬鹿みたいだな、不利になったらすぐ飛んで逃げようとする。災厄って卑怯者の別称だろ、最早。まぁ良い、降りて来いよ、逃がすつもりはないぜ」


『妖術・上風』


本来上風は横方向にしか向けられない。だがそれはあくまでニンゲンでの話、ラック程の知識と練度、才能があれば上から下に向ける事も可能だ。しかもその威力は桁外れ、龍だろうが地面に叩きつけられる。

まるで重力が増加しているようだった。何より一番ヤバいのはその効果範囲にある、ここまで無理矢理効力を上げてしまうと手加減など出来ない。故に範囲を選んでいる余裕もない。結果として丁度ラック中心の半径1kmとなった。

まだ戦っている礁蔽と佐須魔にも影響があるし、まだ待機しているエスケープの皆にも、何なら待機島にも少し影響が出た。


「やっぱ…バケモンだな」


「元ニンゲンの俺と、ニンゲンですら無いお前。どっちが怪物かちゃんと考えてみろよ」


「それもそうだな。なら更に怪物になってあげるよ」


再度人の姿に戻る。だが明らかに雰囲気が違う。容姿や服装に変化があった訳では無い、ただただ霊力の質が変わった。ラックならそれぐらい分かるのだ。


「だけどな災厄、俺は生憎ムカつく敵に余裕を与えるのが好きじゃないんだ」


被せて来たなら被せれば良い。全くと言っていい程本気でないラックだから出来る。


ラック(こっち)だと眼鏡無いと違和感凄いからな、アイト(こっち)でやってやる」


指を鳴らす。

全てが変わった。身長、骨格、質、まるで別人、いや本当に別人だ。

金色の髪を軽く整え、地面に突き刺していた燦然を手にする。


「飛ばすぜ、見落とすなよ」


言葉遣いだけが、あの時と違う。

それ以外は誰もがこう認めるだろう。

こいつはアイト・テレスタシアだ。

と。



「久しぶりの共闘だね、アイト」


フロッタ・アルデンテ改めエンマ。一人で笑った男の名。



第五百二十八話「亡者の再臨」

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