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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第五百二十三話

御伽学園戦闘病

第五百二十三話「新たなる主」


來花も式神はレジェストの三匹と佐須魔の神の模倣しか知らなかったのでこれがどれ程馬鹿な行為なのかは大体理解していた。だが流が意味も無しにこんな事をするはずがない。何らかの理由があるのだろう。そう考えるといきなり怖くなって来る。

そんな事を考えている時だった。


「止めるなよ、動き」


体全体から血が吹き出す。いつの間にか背後にスペラがいる事に気付いた。物凄い速度で移動したらしい。ついでに何らかの方法で攻撃もして来た。威力は凄まじく流の攻撃と違って何度も受けて良い代物ではないのは丸わかりだ。

早急に対処法を編み出す必要がある。


「だから止めるなよ、親切心で言ってあげてるのに」


次の瞬間、再度激痛に見舞われる。


「それもそうだな」


無詠唱で羅針盤を使った。ここ最近はろくに通用していないこの呪だが敵を寄り付かせないために使うと結構強い。破壊されたとしてもそれほどの力があると分かるだけでも使って良かったと思えるだろう。

そして針が回り出した数秒後、破壊される。だがそれは流の一撃によって。式神スペラの単純な力が分からない、流も分からせないつもりなのだ。その方が攻撃しやすいのだから当たり前である。

だが來花にとっては相当なディスアドバンテージ、何とかしなくてはいけない。


「出すか」


仕方が無い。それにここで使わなかったら何処で使うと言うのか。折角残してくれたのだ、正直気乗りはしないがやろう。


『呪詛 俄然豪京(がぜんごうきょう) 導鞭の也(どうべんのなり)


いつかの前大会、そこで天仁 凱が使用した呪詛。これ自体には大した威力などは無い。ただ呼び出すだけ。だが減ってしまった、光輝との戦闘で蟲四匹は死んでしまった。故に残ったのは人型三匹、だがそれでも充分過ぎる程強いのだ。むしろその三匹しかろくな力は持っていないのだから。

大きな門が形成され、開く。そこから出てくる、三匹。怜雄、凍漸、芹の蟲毒王。


「気乗りしないのはこちらも同じですよ」


「すまないな、だが私はどんな手を使ってでも勝つと決めたのだ。私も君達を乱暴に扱うつもりは無い、だから力を貸してくれ」


「私は良いよ~、それにそろそろちゃんと戦いたかったしね」


「俺もだ!珍しく気が合うじゃねぇかバカ女!」


「まぁ、僕も従うつもりだよ。それが主の命ならね」


芹は斧を持ち、凍漸は氷を纏った。だが怜雄は何も持っていない。今まで使っていた燦然や菫が手元に無いし、取り出せない。どうやら使用を禁止されたようだ、現世のマモリビトに。


「困ったな。これじゃあ戦えない」


「これを使え、怜雄。最初から私一人で使うつもりはなかった物だ」


そう言いながら來花は神武を手渡した。


「ありがとう、でも良いのかい?」


「良いさ。君が勝ってくれるのなら」


「…了解だ。だけど戦ってくれ、僕らだけで勝てる相手じゃない」


「当然だ。甘い汁だけ吸うつもりは、一切無い」


蟲毒王をも行使して勝つつもりのようだ。だが依然として流は余裕を持って戦えていた。それは式神スペラの真骨頂を知られていない状況で相手の手札をほとんど開示させる事に成功したからだ。伽藍経典も大体知っているし、呪だって対処出来る。來花がろくに式神を作れていない事も知っている。それに比べて流は未知数、TISに潜入していた時京香に頼んで全てを突き放していたのもこの時のためなのだ。少しでも情報戦で有利を取りたかった。

この日のためにどれだけの苦労を重ねたか分からない、どれだけの物を切り捨ててきたか分からない。もしかしたら咲だって救えたかもしれない。だが後悔は無い。ずっと前から決めていたのだ、後悔はしないようにしようと。

それが偽りの余裕であったとしても、余裕である事に違いはない。


「行くよ、スペラ」


次の瞬間には四人全員に攻撃が行き渡る。だがそこで凍漸が氷の鎧で攻撃を受け、正体を突き止める。一撃で鎧を破壊するレベルの攻撃の正体、それは単純な突撃だった。何十回も行き来する事によって無理矢理威力を底上げし、攻撃として使っていた。

恐らく旋甲を応用したものなのだろう、そこまで一回で仮定出来た。來花では出来なかった事を易々とやってのけた、やはり蟲毒王、何処かおかしい。

だがそれぐらい強くないと通用しない術というのもある。逆手に取るのだ。


「良く分かるな、そこまで。ならこれはどうだ!」


今度の攻撃は通用する、はずだった、凍漸に向けて放ったその一撃は、芹が斧を変化させた盾によって防がれた。単純な突撃なのだが先程とは全く違う性質を持っている。

それは盾に刺さったクチバシを見れば一目瞭然。攻撃性を持った霊力が大量に籠っている。それはシヴァの物とはまた違う、予想ではあるがインストキラーのものなのだろう。流し櫻と同じやり口、凍漸が霊力系の攻撃に弱目の事を知っての行動かは分からないが、とにかく警戒は必要になった。


「物理も霊力もそつなく熟す、強いね」


「お前に言われたくないね」


芹の斧は武器にならどんな形にも変えられる。少し手間はかかるが霊力発動帯に似た器官を作って霊力攻撃をしたり、本人の霊力を流す事だって出来る。そんな便利さが何倍も違う奴にそんな事を言われても挑発にしか聞こえない。


「褒めてるんだ、素直に受け取った方が良いよ」


背後に回った怜雄がそう言いながら斬りかかる。だが流は適当にかわし、反撃で蹴っ飛ばす。その速度と威力はとてもニンゲンとは思えない。どうやら何かありそうだ。

その事をアイコンタクトで仲間に伝え、更に攻撃を仕掛ける。それに合わせて凍漸と芹の二人も突っ込んでいく。勿論來花もサポートはするが単純な肉弾戦では足手まといになるだけなので後方支援だ。

まずは封で一応能力封じを試してみるが意味は無い。ならば他の手段と取るまでだ。まずは剣進で三人のサポートをしながら流にデバフヲかける。

十二回程連続で蚕を使った。流は糸を吐き出したがほとんど意味は無いように思える。だがほんの一瞬の隙でも三人にとっては充分だ。


「俺が行く!!」


当然のように凍漸が出張った。だがいつもの事なので二人は気にせず良い感じに利用する。まず鎧を再度張り、ぶん殴りながら突っ込んだ。


「バカ正直な殴り合いならそりゃ勝ち目は無いよ、お前はバケモンだからね。でも、こうすれば良い」


『妖術・反射』


だがそんな対抗策意味は無い。凍漸は殴らなければ良いし、何なら氷の鎧に対象が吸われるので普通に一回なら殴れる。ただそれは光輝戦でも見せたので知っているはずだ。そう気付いた頃には既に遅かった。

流の背後に飛んでいるスペラが大きく飛び上がる。それと同時に唱えた。


『妖術・上炎(じょうえん)


上風とほとんど同じ性質の炎攻撃。だが向けた対象は、流だ。そう、反射と炎の攻撃を合わせる事によって起こる事。


「下がれ凍漸!」


もう遅い。

反射によって蔓延した炎によって鎧内の空気体積が大きく広がる。それによって氷は破壊された。そこにすかさず殴り込む。


「でも氷が無ければ、僕より弱い」


重苦しい音を立てながら凍漸の顔面をぶん殴った。勢い良く飛んで行った先からは凍漸の霊力が感じられない。やられた。だがいつもこんな風にやられているので問題は無い。それよりも単純な威力がヤバ過ぎる事が判明してしまった。

芹はまだしも怜雄は迂闊に近付けない。完全に勢いを殺されてしまった。何らかの術やらで起点を作らなくては時間が勿体ない。


「……仕方無いか。少し退け、二人共」


來花が退かせる。そしてそれと同時に唱えた。無詠唱でも良いはずの、最後の手札。


『降霊術・神話霊・干支馬』

『降霊術・神話霊・干支虎』


それだけでは収まらない。内喰状態に関わらず降ろす。


『降霊・干支馬』

『降霊・干支虎』


二匹の力を得た來花の動きは速くなる。尋常じゃない程に。だが流でも対応出来るだろう。なら何故こんな事をしたのか、答えは簡単、近付きたかったからだ。


『呪・剣進』


狙うは喉元ただ一つ。文字通り、刺し違えてでも。



第五百二十三話「新たなる主」

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