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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第五百五話

御伽学園戦闘病

第五百五話「改め」


三分紗里奈と会話する事によって作り上げた強覚醒、今本領を発揮すると共に再度発現する。白い炎がもたらす強化、神眼だ。花月と神眼のセット、佐須魔も流石に焦り出す。呪術・封の効果もまだ続いている、能力が使えない状態で限られる空間内を逃げ回る、そんな事が出来るだろうか。いや、しなくてはいけない。

対薫に関しては最強だと思っていた暴露が悪い方向で作用してしまった。こうなったら薫は佐須魔が止めなくては他の奴らが一瞬で殺される。最悪相打ちでも良い、殺す。


「覚醒」


自己覚醒、当然神眼だ。白い炎が二つ、夜の闇を照らす様にして燃えている。その光景はまるで神と神の戦いのようである。恐らくもうここには誰かが近付く事はないだろう、少なくともこの戦闘が終わるまでは。

結界内を物凄い霊力が巡り合う。佐須魔は能力が使えないので覚醒だけで妥協するしかないのだが、それでも充分な身体能力を得れるので回避に専念すれば何とかなるはずだ。


「初めて見せた時に言ったよな、お前のための強覚醒だって」


次の瞬間佐須魔の背後に薫が移動していた。ゲートの痕跡は無いので単純に移動したのだろう。だがその速度が凄まじく、身体強化が無いとはいえども捉えられなかった。

あまりに速い移動だったのでまともに回避や防御も出来ず、普通に斬られる。幸いな事に身をよじったので二つに別れる事はなく、左腕が吹っ飛んだだけで済んだ。

どうせ体力を多めに作ればすぐ回復するのでそこまで問題ではない。それよりも避けられず四肢を一本持って行かれた事が問題なのだ。恐らくボルテージは上がって行く、それなのに最初の攻撃でここまでの痛手を受けるとなると能力が使えるようになっても少々厳しいかもしれない。


「遅ぇんだよ」


瞬きをする間もなく眼前に迫る。途轍もない気迫と殺意、そして放たれる無銘による一撃。何とか避けられたが頬に少し傷が出来てしまう。血が流れているのを見て少し楽しくなって来る。

ここまで本気で殺しにやって来て、尚且つちゃんと強い奴は久しぶりだ。神程一方的な勝負でもないので余地はある、楽しみながら殺そう。


「何で笑ってんだよ…」


一旦攻撃の手を止めた薫は辛そうな顔を向けながらそう呟いた。佐須魔は半笑いのまま返す。


「戦闘病さ。僕はもう自分の意思で完全に操作出来る段階を超えているからね。強い敵を見るとふと笑っちゃうのさ、気にしないでくれよ」


「気にしない訳が無いだろ……」


言葉を詰まらせる。佐須魔はチャンスだと感じ素の気持ちを隠しながら会話で時間を稼ぐ事にした。


「何でだよ、僕らはもう家族でも何でもない。両陣営の最強と最強だ。僕に気をかけている余裕は無いと思うけど」


「そう言う話じゃねぇよ……あんな事聞いたらそりゃ……」


鬱蒼とした顔を地面に向け隠す。言葉になんて出来ないザワザワとした気持ち、笑えて来る程に気持ちが悪い。今更になってこんな事言えるはずも無いのだ。

飲み込み、顔を上げる。ふと重なってしまう、昔の顔が。もう薫が知っている佐須魔は何処にもいない、自分が破壊したのだ。そう思うと刀を握る力も弱くなってくる。

だが皆が繋いでくれた好機なのだ。ここまで何十人もの仲間を犠牲にした。昔から仲良くしてくれていた友人を二人完全死に追い込んだ。そんな馬鹿なのに何の相違も無く繋げてくれた。

駄目だろう、ここで挫けるのは。


「でもやらなくちゃ行けないんだ……やっぱり踏ん切りは付けられないけど……やってやる」


薫の顔付きは変わらなかった。相変わらず少し躊躇いや苦しそうな感情が見て取れる顔をしている。だが、それでもやると決めたのだ。来るだろう、薫はそう言う奴だ。

弱いが強い。何だかんだ最強の名を冠すには申し分無い、強い男だ。


「それが良いよ。僕も手加減や躊躇うつもりなんて甚だ無いし、ここで殺そうとしか思っていないからね。精々楽しもうよ、折角のラストダンスだ」


佐須魔の霊力放出が跳ね上がる。呪術・封の効果が切れたのだ。かけ直しが出来る程隙は無い、なのですぐに斬りかかった。だが佐須魔は身体強化だけで跳ね返す。その腕には大した傷も無く、精々痕らしきものが出来ただけだった。

明らかにフィジカルでは格差が出来た。だがその代わり薫には勝ち筋が出来た。こいつは神であるはずだ、反体力が効くのは正円が証明してくれたし、反体力自体は仮想世界の訓練によって完璧ではないものの使えるようになっている。意表を突いて一撃でも反体力の攻撃をぶち込めれば逆転出来ずはずだ。

それに今は花月を使用している。詳細はまだ佐須魔にバレていないし、心を読まれる事に関しても対策済みだ。そもそもトラップを警戒して読もうとはしていないが。


「まずは一撃、入れさせてもらうよ」


『肆式-弐条.両盡耿』


光が満ちる。その程度問題は無いのだが、恐らく光を煙幕のようにして距離を詰めるか何らかの術を放ってくるのだろう。ならば薫も動くのみ。

まずは基盤を整える。


『降霊術・神話霊・天照大御神』


天照大御神によって完璧な安全地帯を形成する。その後迎え撃つようの霊を呼び出しておく。


『降霊術・神話霊・ラー』

『降霊術・神話霊・ガネーシャ』


太陽神と破壊神、こいつらがいれば充分だろう。崎田が死んでしまったので回復は無理だが片腕ぐらいなら捧げて強めの攻撃を使っても良い。佐須魔への攻撃はあくまでブラフ、だが手を抜くとバレるので代償を払ってでもカモフラージュするのだ。全てに全力を注いで確実な隙を作り出し、叩く。

花月の効果中ならそれだけでも運が良ければ勝てるはずだ。


「どうした薫、そんなに万全の状態にして」


背後からの声。すぐさまガネーシャがその位置に攻撃をしようとしたが佐須魔の頭上に浮かぶ小さな球体が霊力を放つと同時に動きが止まる。


『止まってろ』


権威(オーソリティ)だ。薫は危機を察知し、すぐにでも呪・封で止めようとする。だがそれは叶わない、佐須魔の攻撃が速かった、ただそれだけの理由によって。


「神眼の効果。それは単純な身体能力の向上と、能力の効果を増やすという二つのみだ。だが僕や薫のように沢山の能力を蓄積している奴からすれば、それだけでも大きすぎる恩恵だ。

菫眼がアイト(ラック)テレスタシア(ツルユ)のために作られた覚醒だとしたら神眼は正に僕ら二人のための覚醒なんだよ……聞いてるかい?薫」


天照大御神の首がもげ、両盡耿に当てられる。そのせいでろくに聞こえていないし、何より次にどんな攻撃が飛んで来るのか皆目見当が付かない。故に緊張と焦りが体内に駆け巡る、背筋が冷え、汗が滲む、と同時に放たれる一撃。


『妖術・遠天』


ここえ遠天を使ったのには理由がある。まず一つはその速度で光を掻き分ける事によって少し視界が確保出来る事、次にもう一度天照大御神を召喚していないかどうか確認、最後に狙い撃ちが出来るからだ。遠天は全くブレないし、何よりスピードが凄いので近中距離の狙撃には最適な術である。

そして何処を狙うのか、そんなの一択、能力発動帯だ。だがそれなりに的を絞らなくては薫程の大きさだと一撃では壊せず、むしろ警戒を強めるだけになる可能性もある。

なら何を狙ったのか。候補としては花月封じの紗里奈潰し、単純に凶悪なガネーシャ潰し、昔から使っており熟知しているラー潰し、手数を奪う術式潰し、最後は場所は分からないので現実的ではないが式神潰しの計五択だった。

最後は流石に無理なので除外。折角気軽に潰せるので術式とラーは勿体ない、佐須魔はある程度対処が出来るからだ。ならば前方二つ、紗里奈かガネーシャか。


「少し考えてみたんだ。薫と紗里奈レベルの奴らが相談して作り上げた強覚醒、基本何でも出来るのが強覚醒だ。罠が仕掛けられていないとも限らない」


故に、狙ったのはガネーシャである。霊は呼び出される際発動帯に僅かな反応を起こして出てくる。佐須魔は何回か戦闘を交えて位置を特定していたので狙うのはそう難しくない。

精確な一撃はガネーシャが刻まれているであろう位置を、綺麗に貫いた。これで更に差を広げられたはずだ。そう思った佐須魔を距離を詰めて追撃を行う事にした。

それと同時に光が晴れる、効果時間はもう少しあると言うのに。いや違う、晴れたのではない、破壊された。押しのけられた、破壊神の力によって。

次の瞬間殺したはずのガネーシャの拳によって地面に叩きつけられた。


「なっ…」


そして本当に両盡耿が解ける。少し傷を貰いながらも余裕を持って切り抜けた薫は見下ろしながら話し出す。


「言ったよな、お前専用の強覚醒だって。これぐらい予測出来ないはずないだろ、この俺が」


最早新たな能力で未来を視ているのかとも思う程に正確な予測。見事に的中し、佐須魔は嵌められた。

花月一個目の特殊効果、発動中の能力発動帯を破壊不能にする。

これが上手く働いた。油断した佐須魔を仕留めるのはガネーシャにとっては全く難しい事ではない。だがこれで佐須魔の目標は明確になった、花月を終わらせる。

ただしそれには相当なリソースを割く必要があるだろう。だが薫だってそうして来るだろうと解る程には当たり前の行動だ。これは互いにやりたい事を押し通す戦い、単純な強者の戦闘から一歩踏み出した、神の戦い。


「これからが本気って事か……面白い」


《殺そう》


するとガネーシャの拳が吹っ飛んだ。それは(ラキエル)を持った式神の攻撃だった。ただ再生の神でもあるガネーシャはすぐさま回復し、同じように振りかざした。


「通用するはず無いだろ」


式神は完璧な身のこなしでガネーシャの腕を吹っ飛ばした。これでは埒が明かないだろう、何か手を打つ必要がある。だがそれは佐須魔にチャンスを与える可能性も孕んでいる行動であるのだ。考えるべきなのだ。だが、薫は迷わず使う事にした。


「一々お前の事考えながら見せるのもめんどくせぇ、出してやるよ」


ようやくノって来たようだ。佐須魔は待ってましたと言わんばかりに口角を上げる。


建御雷神(たけみかづち)よ、この手に》


布都御魂(ふつのみたまのつ)(るぎ) (あらため)


刀、それこそが薫の式神である。



第五百五話「改め」

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